第三百三十二話「鏡の中のサインと、シャルロッテの『愛の非対称性』」
その日の午後、王城の誰も使わない古い図書室の一室で、シャルロッテは友人のエリーゼと共に、壁に立てかけられた大きな鏡の前に座っていた。エリーゼは、貴族の嗜みである「優雅な所作」を鏡で確認していたが、自分の左手の動きが、鏡の中では右手に映ることに、ふと違和感を覚えていた。
エリーゼは、鏡に映る自分を指さした。
「シャルロッテ様。鏡は、なぜ私たちの像を、左右逆に映すのでしょうか。この『非対称性』は、世界の法則の、どこか冷たい皮肉のように感じられます」
エリーゼは、物理的な「左右反転」という現象を、「他者との共感の難しさ」という、精神的な不安に重ねていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、鏡の中の自分を見た。彼女の目には、鏡の反転が、世界が持つ「愛の法則」の一部として映っていた。
「ねえ、エリーゼお姉様。鏡はね、意地悪じゃないよ。鏡はね、『他人の気持ちになる練習』を、させてくれているんだよ」
シャルロッテは、エリーゼの持つ「物理現象の冷たい法則」という固定観念を、「愛の法則の温かい教育」という新しい哲学で打ち破ることを決意した。
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シャルロッテは、鏡に向かって、右手で挨拶をした。鏡の中の像は、左手で挨拶を返してきた。
シャルロッテは、光属性と共感魔法を融合させた。
彼女の魔法は、鏡の反転現象に、「感情の波動」を注入した。シャルロッテは、エリーゼに、鏡の中の像の「心」を読み取るよう促した。
シャルロッテは言った。
「鏡の中のわたしはね、『なんで、私の気持ちをわかってくれないの?』って、ちょっと怒っているかもしれないよ。鏡の中のわたしにとって、右と左が逆なのは、お姉様の気持ちが、私にはわからないのと同じことなんだよ」
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エリーゼは、鏡の中の像の「感情」を、シャルロッテの魔法を通して感じ取った。鏡の中の像は、単なる物理的な反射ではなく、確かに「自分とは違う視点」を持つ、もう一人の存在として映っていた。
エリーゼは、初めて鏡の像を「自分自身」ではなく、「理解すべき他者」として見ることができた。彼女は、鏡の前で、左手を差し出し、鏡の中の像と「逆の手」で握手をした(ように感じた)。
鏡の中の像は、エリーゼの左手に対し、右手で応じた。両者の手の動きが、鏡面を挟んで鏡の表面に、虹色の優しい光が満ちた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「ね、エリーゼお姉様。鏡はね、『物理的な違いがあるからこそ、私たちは、愛という努力で、共感し合えるんだよ』って、教えてくれているんだよ」
エリーゼは、その愛の哲学に深く感動した。
「シャルロッテ様。私は、鏡を、ただ自分の所作を測る道具だと考えていました。しかし、鏡は、私たちに、愛とは、視点の反転を理解しようとする、最も高貴な努力だと教えてくれたのですね」
その日の午後、図書室の一室は、シャルロッテの愛の哲学によって、「愛の法則は、物理的な非対称性を超える共感の努力である」という、最も温かい真理に満たされたのだった。




