第三百三十話「宝石の陰りと、姫殿下が導く『心のジュエルトーン』」
その日の午後、王城の一室は、宝石の持つ冷たい輝きに満ちていた。宝石鑑定士の娘であるフィオナは、自身の美しさに自信を持てず、最も高価なエメラルドのネックレスを身につけながらも、どこか憂鬱な表情をしていた。
彼女は、身につけた宝石の輝きと、自身の内面にある不安との間に、大きな乖離を感じていた。
「この宝石は、完璧に美しい。でも、私自身が、この輝きにふさわしい人間ではない気がする……。私の心が暗いと、宝石までくすんで見えてしまうような気がしてならないわ……」
フィオナは、宝石の物理的な輝きを、自己の存在価値と同一視する、繊細な苦悩に囚われていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、フィオナの隣を通りがかった。彼女の目には、フィオナの心にある「不安の影」が、エメラルドの輝きを、微細に、しかし確実に鈍らせているのが見えていた。
「ねえ、フィオナお姉様。お姉様が暗いと、宝石も泣いちゃうよ。宝石はね、お姉様の心が笑うと、百倍可愛くなるんだよ」
フィオナは、姫殿下の純粋な指摘に、顔を上げた。
「これは姫殿下。しかし、心が笑う、とは? どうすれば、私の心は、この宝石に負けない輝きを持てるのでしょうか……?」
シャルロッテは、フィオナの内面と、宝石の輝きを、愛の哲学で調和させてあげることにした。
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シャルロッテは、フィオナのエメラルドのネックレスに、そっと触れた。そして、光属性と共感魔法を融合させた。
彼女の魔法は、エメラルドの輝度を上げるのではない。その代わり、エメラルドが持つ「緑色の波動」と、フィオナの心にある「自己肯定の渇望」という感情の波動を、完璧に同期させた。
シャルロッテは、フィオナに、鏡の前に立つよう促した。
「ね、お姉様。鏡を見て、『私は、この宝石に、一番愛されている!』って、心の中で唱えてみて!」
フィオナが、鏡の前で、その言葉を心の中で唱えた瞬間、彼女の内面の「自己肯定の渇望」というエネルギーが、エメラルドの輝きと同期し、ネックレスが触れているフィオナの肌のトーンを、エメラルドの補色である「温かいパステルピンク」寄りへと、ごく微細に変化させた。
フィオナ自身の肌が、エメラルドの持つ冷たい輝きと完璧なコントラストをなす、「心のジュエルトーン」を纏ったのだ。
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フィオナは、鏡に映る自分を見て、息を飲んだ。エメラルドの輝きは、以前よりも増していたが、それ以上に、宝石に負けない、フィオナ自身の内面から溢れる美しさが際立っていた。
「まあ……! 私の心が、宝石と一つになったかのようです! 私の輝きは、宝石の重さではなく、私の自己肯定の心だったのですね!」
フィオナは、自分の心こそが、最高の宝石を輝かせる「最高の切子面」であることを悟った。
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、宝石はね、自分の力で光るんじゃなくて、お姉様の可愛い心が、光を分けてあげるんだもん!」
その日の午後、王城の一室は、シャルロッテの愛の哲学によって、「女の子の輝きは、内面の自己肯定の心にある」という、最も温かい真理に満たされたのだった。




