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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第三百話「地下室の合い言葉と、隠された『秘密の献身』」

 その日の午後、王城の給仕係の間で、一つの噂が広まっていた。それは、「城の地下室に、代々続く、莫大な隠し財産が眠っている」というものだ。噂では、その富を得るには、特定の合い言葉が必要だという。


 その噂は、第二王子フリードリヒの耳にも入った。彼は、その財産を国の慈善事業に役立てたいと考え、エマを伴い、秘密の合い言葉の探求を始めた。



 フリードリヒ王子は、財宝の地図と思われる古い羊皮紙を手に、地下の通路を進んでいた。彼が、財宝の部屋の前にたどり着いたとき、壁に、ごく微細な、苔に覆われた文字が刻まれているのを見つけた。


「見つけたぞ、エマ! これが合い言葉だ!」


 合い言葉は、「金色の剣、銀の盾、そして、真実の唇」。


 フリードリヒ王子は、力強くその言葉を唱えたが、扉はびくともしない。



 シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、その探求の一部始終を見ていた。彼女は、フリードリヒ王子の「富を探求する熱意」が、「誰かの愛の秘密を解き明かす」という、真の目的から逸れていることを察した。


「ねえ、兄様。その合い言葉、ちょっと違ってるみたいだよ」


 シャルロッテ姫殿下は、合い言葉に、「愛という新しい論理」を注入した。


「本当の合い言葉はね、『金色の笑顔、銀の優しさ、そして、愛しい秘密』だよ!」



 シャルロッテは、鈴を転がすような軽やかさで、その言葉を唱えた。その瞬間、固く閉ざされていた扉は、音もなく開いた。


 部屋の中には、金銀財宝はなかった。そこに置かれていたのは、古い木箱と、一つの小さな鏡だけだった。


 落胆するフリードリヒ王子と、困惑するエマを前に、シャルロッテ姫殿下は、木箱を開けた。


 箱の中には、何世代にもわたって書き継がれた、ごく小さな、古い手帳の束が入っていた。それは、歴代の専属メイドたちが、「姫殿下の笑顔のために行った、人知れぬ献身の記録」だった。



 これらの手帳は、代々、姫殿下に仕える専属メイドだけが引き継ぐ、極秘の業務日誌であり、その実態は、「姫殿下の笑顔を守るための、非公式な魔法と献身の記録」だった。


 エマはおそるおそるその古びた手帳の一冊をひらいた。


以下、記録の抜粋:

1. 初代のメイド(約500年前・建国直後)の記録


日付不明(幼い姫殿下・初代)


姫殿下は、夜の暗闇を恐れられる。治癒魔法では心の不安は拭えない。よって、夜の巡回時には、床の木の目に、極微量の光属性の魔力を注入。魔力は姫殿下の足音に反応し、「温かい、パチパチという焚き火の音」に変換されるよう設定した。

効能:これで姫殿下は、「音」が魔物ではなく、「温かい炎の友達」だと認識し、安眠された。


2. 二代目のメイド(約450年前)の記録


日付不明(第二代姫殿下)


姫殿下が、夜、庭園の花びらが散るのを悲しまれていた。命の終わりを理解されたようである。これはいけません。

よって我々は、時間魔法を応用し、庭園の特定の木一本だけ、花びらが散る速度を、肉眼では感知できないほど、遅くしました。姫殿下には、「この花だけは、長く咲いている」という、『永遠の愛の約束』を信じていただくのです。

注意:この木は、永遠の愛の美学の場所として、剪定してはなりません。庭師たちにもこれは厳命いたしました。


3. 中期のメイド(約200年前)の記録


日付:光祭りの前夜


姫殿下(第十五代)が、庶民の暮らしに関心を寄せ、「貧しい子供たちに、何かを贈りたい」と仰せになった。しかし姫殿下が直接贈るのは、形式的になってしまう。

よって、姫殿下が不要とされた古いリボンや端切れを秘密裏に集め、夜中に光属性と織物魔法で、「暖かく、決してほつれない」特別な毛布に織り直しました。

奉仕:毛布に、姫殿下の魔力を込め、「温かい祝福」として、城下町の孤児院に匿名で寄付した。姫殿下は、ご自身の優しさが、夜の間に具現化したと信じ、満足されたのです。


4. 先代のメイド(現代・シャルロッテ姫殿下の前任)の記録


日付:三年後の王妃様への誕生日


王妃様が、多忙でピアノの練習ができないことを気にされていましたた。ピアノの調律は完璧ですが……。

よって、防音魔法を応用し、音楽室全体に「外界の音を遮断し、集中力を極限まで高める結界」を、ごく薄く張りました。王妃様が練習できる「五分間」を、外界の騒音から完璧に守るのです。

精神的支援:この結界は、「貴方の時間を誰にも邪魔させない」という、無言の尊重を伝えるためのものであるべきです。



 エマが、手帳を手に取り、涙ぐんだ。


 「これは……これは、私たちが受け継ぐべき、代々の愛の秘密です!」


 財宝の正体は、「誰にも見られない、愛と献身の記録」だったのだ。


 シャルロッテ姫殿下は、鏡を手に取り、にっこり微笑んだ。


 「ね、兄様。この鏡はね、『愛の真実』を映すんだよ! 富は、盗まれるけど、愛の秘密は、誰にも盗まれない、最高の宝物なの!」


 フリードリヒ王子は、妹の純粋な愛の哲学に、深く感動した。


「シャル。君は、私に、真の富とは、愛の連鎖であることを教えてくれた」


 彼女の純粋な愛は、「秘密の富」という大人のロマンを、「人知れぬ愛の献身」という、最も温かい真実で塗り替えたのだった。

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