表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

264/387

第二百六十五話「王城の秘密と、双子の『魔力の断絶』」

 その日の夜、エルデンベルク王城の隠された訓練場は、異様な緊張感に包まれていた。王家に古くから仕える、二人の若き異能者、火のカインと水のアベルが、「秘術の継承」を巡る、避けられない対決に挑んでいた。秘術の教義は、「二つの力は相容れない。勝者のみが真の秘術を得る」と、兄弟の間に冷たい断絶を強制していたのだ。



 訓練場の中央で、火と水の魔力が激しく衝突していた。


 兄カインの体から、猛烈な熱波と、爆発的な火球が放たれる。訓練場の石畳は、熱でひび割れ、空気が焦げ付いた匂いがした。


 弟アベルは、それを冷たい水の壁で受け止める。水は、炎によって一瞬で蒸発し、巨大な、白い、悲劇的な水蒸気となって、空間を満たした。彼らの力は、互いの存在を否定するために使われていた。


「アベル! 力を一つに集約しなければ、私たちは滅びる!」と、兄カインは叫んだ。


「わかっている兄上! 私だって本当はあなたを傷つけたくない!」と、弟アベルは、水の壁の裏で、涙を流しながら抵抗した。



 シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、その戦いの場へ現れた。彼女は、二人の間に渦巻く「愛し合っているのに、殺し合わなければならない」という、激しくも切ない宿命の魔力を感知していた。


 シャルロッテ姫殿下は、二人の間に飛び込もうとしたが、カインの放った火球が、彼女の目の前で爆発した。


 シャルロッテ姫殿下は、爆風からモフモフを守るため、自らの銀色の髪と体で、その炎を受け止めた。炎は、彼女の皮膚を傷つけることはなかったが、彼女の虹色の魔力回路に、激しい負荷をかけ、一瞬、彼女の体が冷たい水と、熱い炎という、二つの激しい痛みに襲われた。


「ひっく……! だめ……! 本当は好きなのに……そんな二人が戦うのは、悲しいよ……!」


 彼女は、激しい痛みに耐えながら、二人に訴えかけた。



 シャルロッテ姫殿下の純粋な痛みと、自己犠牲的な献身は、二人の異能者の心を打った。彼らは、自分たちの「運命的な戦い」が、最も敬愛する姫殿下を傷つけたことに、深い後悔を覚えた。


 シャルロッテは、痛みに耐えながら、水属性と光属性の魔法を融合させた。


 彼女の魔法は、火と水の属性を反発させる法則を否定せず、「反発力」を「愛という名の、引き合う力」へと変換する、新しい論理を創り出した。


 シャルロッテ姫殿下は、兄カインの炎の魔力に、「弟アベルを温める優しさ」という魔力を、弟アベルの水の魔術に、「兄カインの炎を、最も美しい形に磨く共鳴」という魔力を、自らの傷ついた魔力回路を触媒として、流し込んだ。


 その瞬間、二人の異能者の魔力は、衝突することなく、螺旋を描いて、一つの、巨大な「虹色の炎」となって、天空へと昇った。それは、「力は、愛という名の痛みを通して、初めて完全となる」という、究極の協調性の証明だった。



 二人の異能者は、涙を流し、互いを抱きしめた。彼らを縛っていた「勝者と敗者」という冷たい宿命は、妹の愛と献身の痛みによって、「愛と共鳴」という、最も美しい絆へと変わった。


 アルベルト王子は、妹の知恵と痛みに、深く感動した。


「シャルロッテ。君の献身が、彼らの宿命の鎖を断ち切ったんだな。えらいぞ」


 シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。


「えへへ。だって、仲良しなのが、一番可愛いでしょう?」


 姫殿下の純粋な愛と献身は、運命の悲劇を、愛の力で打ち破ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ