第二百五十四話「銀の髪と、母の『愛の封印』の解放」
王妃の私室は、若き日の情熱が詰まった抽斗の中身と、母の深い告白によって、張り詰めた感動に満ちていた。エレオノーラ王妃は、王妃という役割のために、個人の夢を自ら封印した、「愛の代償」について語り終えていた。
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イザベラ王女は、スケッチの束を抱きしめ、涙ぐんだ。
「ママ……。ママが封印したのは、『夢』ではないわ。『私たちが、この平和な王城で、何不自由なく生きるための、お守り』だったのね。その重さ、今、痛いほど理解したわ」
マリアンネ王女は、詩集を静かに閉じ、決意を込めた眼差しで母を見つめた。
「ママは、『論理の終わり』に真実を探求した。私は、今、誓います。私は、ママの『自由への情熱』を、科学の力で、王国の全てに還元する。誰もが、自由でいられる、揺るぎないシステムを構築するの!」
姉たちは、母の自己犠牲的な愛を、「王国の根源的な平和の力」として受け入れたのだった。
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シャルロッテは、抽斗に手を触れたまま、静かに語り始めた。
「ねえ、ママ。でもね、もう封印しなくていいんだよ」
王妃は、首を横に振った。
「シャル。私は、もう戻れないのよ。私は、あの頃の私にはもう、なれないの」
「ううん、違うよ!」
シャルロッテ姫殿下は、光属性と時間魔法を融合させた。彼女の魔法は、過去に戻るのではなく、「過去の夢」を、「現在の現実の美しさ」へと、優雅に転位させるためのものだった。
シャルロッテ姫殿下は、「翼をモチーフにしたスケッチ」に、風属性魔法を吹きかけた。
スケッチは、一瞬、温かい光を放ち、その光が、王妃の銀色の髪全体に、ごく微細な、七色の蝶の羽のような輝きを纏わせた。
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「ね、ママ。確かにママは、もう『王妃になる前の娘』には戻れない。でもね、今は『王妃としての、最も美しい翼』を持てるんだよ!」
シャルはにっこりと天使のように微笑んだ。
「お姉様たちの自由と、みんなの笑顔という、目に見えない翼をね!」
王妃エレオノーラは、その「光の翼」を身に纏った自分の姿を、鏡台に見つめ、涙ぐんだ。彼女は、役割と個人という二元論から解放され、今の「王妃としての役割」こそが、「個人の夢」を最も大きく、温かい形で実現する場所であることを悟ったのだ。
「シャル……。あなたは、私の愛の封印を、『未来への希望』という、最も優雅な形で解放してくれたわ。なんて素晴らしい娘たちなんでしょう……」
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ルードヴィヒ国王は、扉の外で、この感動的な光景を見て、静かに涙を流した。
その夜、王妃は、娘たちと共に、若き日の詩を、皆で読み上げた。そして、その詩の隣に、「愛と希望の翼を得た、現在の王妃の誓い」という、新しい詩を書き加えた。
王妃の抽斗は、二度と閉じられることはなかった。それは、過去の夢と、現在の愛が、永遠に共存する、家族の愛の宝箱となったのだった。




