表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/96

第二十五話「シャルの『可愛いオーブ』と、城下町の虹色プレゼント」

 ある晴れた日の朝、シャルロッテは薔薇の塔の窓から城下町を眺めながら、小さな願い事をした。


「ねえ、エマ。城下町にある可愛いもの()()()()()()()


「まあ、シャル様。それは大変なことになりますわよ。シャル様のコレクションの棚が溢れてしまいます」


「違うの。モノじゃなくて、()()()()()()()()()()を集めたいの。パンの焼けるいい匂いとか、マルタおばさんの優しい笑顔とか、全部集めて、そrをまたみんなにプレゼントしたい!」


 シャルロッテの頭の中で、「可愛い」という感情を魔法のエネルギーに変換し、それを人々に還元するアイデアが閃いたのだった。



 その日の午後、シャルロッテは城下町へと向かった。モフモフを連れ、エマとオスカーが後に続く。


 シャルロッテは、人目につかない路地裏で、こっそりと魔法を発動させた。


 得意な風属性と、虹色の光属性を応用し、自身の魔力で小さなシャボン玉のような「可愛いオーブ」を生成した。


「よし、オーブさん、行ってらっしゃい! 城下町の『可愛い』を、いっぱいいっぱい集めてきてね!」


 虹色に輝くオーブは、音もなく、城下町の上空を漂い始めた。


 オーブはまず、パン屋「麦の香り」の上でゆっくりと回転した。そこで、焼き立てのパンの香ばしい匂いと、エマの弟カールがパンを捏ねる楽しそうな気持ちを、魔力として吸い取り始めた。


 次に、果物屋のマルタおばさんの店へ。マルタおばさんが一番美味しいリンゴを厳選する優しさと、果物の鮮やかな色彩を吸い取り、オーブの色は一層濃くなった。


 雑貨屋のクラウスの店では、キラキラと輝くガラス細工や、新しい可愛いぬいぐるみの「可愛さ」を集めた。


 シャルロッテは、オーブが街の「可愛い」を感知して満たされていくのを、遠くから優しく見守った。



 城下町の人々は、上空を漂う虹色のオーブを見て、「天使姫の祝福だ」と喜び、普段以上に店や家を可愛く飾ろうと工夫した。


 果物屋のマルタおばさんは、一番大きなカゴに一番美味しい果物だけを飾り、オーブに「どうぞ食べていって」と声をかけた。雑貨屋のクラウスは、オーブがより輝くように、店頭の商品を何度も磨いた。


 この現象は、シャルロッテが「可愛い」という感情を物理的な魔力に変換し、城下町に幸福と美意識の向上をもたらす、優しい魔法だった。



 日没が近づき、オーブは王城へと戻ってきた。城のテラスで待っていたシャルロッテは、虹色に満たされ、ずっしりと重くなったオーブを両手で受け止めた。


「すごい! ()()()()()()()()()()()()()!」


 シャルロッテは、城下町の方角に向き直り、感謝の気持ちを込めて、そのオーブを空に放った。


 パチン!


 オーブは、大きな音もなく弾け、城下町全体に虹色の花びらと、優しい光のシャワーとなって降り注いだ。この光を浴びた人々は、一日の疲れが取れ、心が温まり、自然と笑顔になった。


 「わあ、なんて綺麗な光だ!」


 「心が温まる……まるで天使のようだ!」


 人々は、この現象を「虹色のプレゼント」と呼び、翌日もその温かい余韻に浸っていた。



 王城に戻ったシャルロッテは、テラスでその光景を見ていたエマに抱きついた。


「ね、エマ。これで、みんなも幸せになったね!」


 エマは、感涙で目を潤ませた。


「はい、シャル様。シャル様の『可愛い』という純粋な感覚が、こんなにも多くの人を癒やし、幸せにできるなんて……。本当に、世界で一番優しいプレゼントです」


 シャルロッテは、自分の「可愛い」という感覚が、単なる趣味ではなく、多くの人の心を動かし、癒やしを与え、幸せにできる最強の魔法であることを実感した。城と民の絆は、この虹色のプレゼントを通して、さらに深まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ