第二百四十四話「王城の古鏡と、乙女たちの『見えない宝物』」
その日の午後、王城の誰も使わない古い部屋に、三人の乙女たちが集まっていた。シャルロッテ姫殿下、イザベラ王女、そしてマリアンネ王女の三姉妹だ。
部屋には、縁が黒く、重厚な装飾が施された、古い大きな鏡が置かれていた。その鏡は、過去の王女たちが、「幸せになるための、最も大切なもの」を映し出すという、古い伝承を持っていた。
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イザベラ王女が、最初に鏡の前に立った。鏡は、彼女の姿を映す。
「私の幸せは、社交界の称賛と、最も美しいドレスよ!」と、イザベラは微笑んだが、鏡の中の彼女の周りには、華やかなドレスの代わりに、空虚な空間が広がっていた。
次に、マリアンネ王女が鏡の前に立つ。
「私の幸せは、真理の探求と、知識の獲得よ!」と、マリアンネは誇らしげに語ったが、鏡の中の彼女の周りには、分厚い本の代わりに、冷たい、無機質な解析図が浮かんでいた。
二人の姉は、鏡が映し出す「幸せの形の虚しさ」に、戸惑いを覚えた。
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シャルロッテ姫殿下は、二人の姉の持つ「幸せへの迷い」を、敏感に感じ取っていた。
「ねえ、お姉様たち、心配しないで。だってこの鏡はね、嘘つきだよ」
シャルロッテ姫殿下は、鏡の前に立った。彼女は、「幸せとは、目に見えるものではなく、心の中にある」という真理を証明したかった。
シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、光属性と時間魔法を応用した。
彼女の魔法は、鏡の表面を、「過去に見た、最も愛らしい瞬間」を映し出す、魔法のスクリーンに変えた。
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鏡に映し出されたのは、シャルロッテ姫殿下の姿ではなく、姉たちの、ささやかで、しかし心温まる光景だった。
イザベラ王女が、ドレスの繕い物をしているメイドに、心から感謝の言葉を優しくかけている瞬間。
マリアンネ王女が、実験の成功を、小さな花と一緒に、静かに喜んでいる瞬間。
三姉妹が、誰にも知られずに、お揃いのパジャマで、くすくす笑っている瞬間。
その光景には、高価なドレスも、難解な論文も、何一つ映っていなかった。映っていたのは、純粋な「愛と優しさ」という、見えない宝物だけだった。
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イザベラ王女は、涙ぐんだ。
「ああ……私の幸せは、誰かに愛されることではなく、誰かに愛を贈ることの中にあったのね」
マリアンネ王女は、妹の知恵に感動した。
「真の探求とは、知識の獲得ではなく、愛の瞬間という、普遍的な真理の蒐集なのね」
シャルロッテ姫殿下は、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、女の子の宝物ってね、誰にも見えない心の中にあるんだよ! だってそれが一番可愛いんだもん!」
古びた鏡は、三人の乙女の間に、「真の幸福とは、愛の行為の中に宿る」という、優しく、普遍的な真理を映し出したのだった。




