第二百三十七話「夜明けの露と、窓枠に残された『秘密の贈り物』」
その日の朝、王城の窓辺は、夜明けの光を浴びて、しっとりとした空気に包まれていた。一晩中、外を警戒していた騎士団の若き衛兵は、交代の時間が来て、疲れた体で窓の施錠を確認した。
彼は、窓の縁の隅に、ごく小さな、素朴な木の箱が置かれているのを見つけた。
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箱には、誰の名前も書かれていない。衛兵は、不審な物として報告するべきか迷ったが、箱から伝わる温かい、懐かしい魔力に惹かれ、そっと蓋を開けた。
箱の中には、二つのものが入っていた。
一枚の、焼きたてのクッキー。まだ、微かに温かい。
一枚の、小さな紙片。そこには、「ありがとう。あなたが、誰も見ていないところで、頑張ってくれたから」という、簡潔で、力強いメッセージが書かれていた。
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衛兵は、その場で涙ぐんだ。彼は、地味で孤独な夜間警備の責務が、誰からも評価されていないと感じ、心の中で、「自分の仕事に、何の意味があるのだろう」と、深く悩んでいたのだ。
彼は、王族の派手な褒章ではなく、この「誰にも見られない贈り物」に、自分の存在が、確かに認められていたことを知った。
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その頃、薔薇の塔の居室。シャルロッテは、モフモフを抱き、温かいベッドの中で目覚めたばかりだった。
「ねえ、モフモフ。感謝の気持ちって、誰にも見えないところに、こっそり置いておくのが、一番可愛いよね」
彼女は、夜中に風属性魔法で、衛兵の記憶と、心の重さを感知し、彼が最も必要とする「無言の肯定」という、贈り物を用意したのだ。クッキーの温かさは、彼女の光属性魔法による、「愛の持続」の祝福だった。
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その日、衛兵は、そのクッキーを一口食べ、心の底から勇気を得て、次の警備の任に就いた。彼の仕事は、以前と何も変わらない。しかし、彼の心は、「誰にも見えない場所にも、愛は存在し、私を見守っている」という、確かな真理に満たされていた。
アルベルト王子は、衛兵の仕事ぶりが、突如として、精確で、充実したものになったことに気づいたが、その原因を知る由もなかった。
シャルロッテの純粋な愛は、「目に見えない愛の存在」という、最も温かい形で、孤独な魂に、希望の光をもたらしたのだった。




