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第二十三話「モフモフの真の才能と、究極の癒やし抱き枕」

 その日の王城は、なんだか空気が重かった。第一王子アルベルトは徹夜の政務で目の下に隈を作り、第二王子フリードリヒは猛暑の中の訓練で肩を落としていた。第一王女イザベラも、社交会の連続で肌荒れを気にし、第二王女マリアンネも研究の壁にぶつかり眼鏡を外して頭を抱えている。


 シャルロッテは、大好きな家族がみんな疲れていることに心を痛めた。


「うーん……みんな元気がないと、全然可愛くないよ」


 夜、薔薇の塔の秘密の小部屋で、シャルロッテはモフモフを抱きしめた。いつものように、モフモフの毛皮は驚くほど柔らかく、温かい。その温かさが、シャルロッテの疲労や心配を吸い取ってくれるかのように、心地よかった。


「ねえ、モフモフ。きっとあなたは、ただの可愛いペットじゃないわ。癒しの力をもつ、究極のふわふわ抱き枕なんだわ!」


 シャルロッテは、モフモフの「ふわふわ状態」こそが、最強の癒やし魔法だと直感した。



 翌日、シャルロッテは、モフモフを抱いて「家族癒やしツアー」を開始した。


 まず向かったのは、疲れ切ったマリアンネがいる魔法研究室だ。


「お姉様! 研究は一旦お休み! この究極のふわふわを体験して!」


 シャルロッテは、モフモフをマリアンネの膝にそっと乗せた。


 マリアンネは、「もう、シャル! 私は今、集中しないと……」と最初は抵抗したが、モフモフの温かさと柔らかさに触れた途端、力が抜けた。


「あら……何かしら、この脳波を安定させるような波動は……」


 マリアンネは、モフモフの毛皮を撫でながら、ウトウトと眠り始めた。研究で凝り固まっていた頭と体が、一瞬でほぐれていくのを感じたのだ。


「シャル、この子は、ただのモフモフじゃないわ。魔法的な疲労回復剤よ! データを取りたいけど、このまま寝たい……データをとりたいけど……このまま……ぐぅ……」



 次に、シャルロッテはイザベラ王女の化粧室へ。イザベラは、肌荒れを気にしながら、鏡の前でため息をついていた。


「ああ、シャル。社交続きで肌が荒れてしまって。もう、こんな可愛くない私きらい……」


「大丈夫よ、お姉様! モフモフを抱っこしてごらん!」


 イザベラは、恐る恐るモフモフを抱きしめた。その瞬間、モフモフはイザベラの体温に呼応するように、さらに毛並みを柔らかく、温かく変化させた。


「まぁ! この感触、世界一上質なシルクよりも柔らかい! まるで、肌の細胞の一つ一つが喜んでいるようだわ!」


 イザベラは、モフモフのふわふわに顔を埋め、深呼吸した。数分後、彼女の顔から肌荒れの悩みが消え、血色が良くなっていた。


「シャル、この子は、最高の美容液ね。今夜、私のベッドで一緒に寝てもらえないかしら?」


「だめー! モフモフはわたしの抱き枕なんだから!」



 その日の夜。シャルロッテは、大食堂のソファで、政務を終えたアルベルトと訓練を終えたフリードリヒを待ち構えていた。


「兄様たち、お疲れ様! 癒やしの時間だよ!」


 フリードリヒは、「男がモフモフなんて」と照れながらも、モフモフを抱きしめた。


「うおっ……なんて温かいんだ……」


 岩石のような緊張が解け、フリードリヒは数秒でソファに沈み込んだ。アルベルトも、政務の書類から目を離し、モフモフを抱かせてもらった。


「これは……軍事機密級の癒やしだ。魔力の消耗と精神的な疲労が、まるで回復魔法のように一瞬で満たされる……」


 アルベルトは、真面目な顔でそう呟くと、妹とモフモフの間に挟まり、静かに目を閉じた。


 家族全員が、モフモフの究極のふわふわに癒やされている光景を、ルードヴィヒ国王とエレオノーラ王妃が、そっと見守っていた。


 エレオノーラ王妃は、微笑みながら、ルードヴィヒに耳打ちした。


「あのね、あなた。私も実はね、夜中にこっそりシャルの部屋に行って、モフモフを抱いてたのよ」


「なにっ! エレオノーラ! ずるいぞ!」


 ルードヴィヒは悔しがったが、すぐに「よし、私も今からモフモフを抱きに行くぞ!」と宣言した。


 シャルロッテは、大好きな家族全員が、モフモフという「可愛い」を通して繋がり、癒やされていることに、最高の幸福を感じた。モフモフの「ふわふわ」は、王族全員を支える、目に見えない最強の力となったのだった。

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