第二十二話「薔薇の塔の祝祭日と、モフモフの結婚ケーキ」
ある日の午後、シャルロッテは、いつものようにモフモフを抱きしめながら、ふと思いついた。
「ねえ、モフモフ。わたし、ユニコーンさんとテディベアさんの、結婚式を開きたい! きっと素敵な結婚式になると思うの!」
それは、彼女の頭の中にふわっと浮かんだ、可愛らしい夢だった。虹色ユニコーンのぬいぐるみと、手作りのテディベアは、シャルロッテにとって、最も大切な宝物。
「ミィ……」
モフモフは、シャルロッテの頬に自分のふわふわの毛皮を擦りつけ、まるで「いいね!」と賛成しているようだった。
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その夜、シャルロッテは、エレオノーラ王妃とルードヴィヒ国王に、結婚式の計画を話した。
「パパ、ママ! ユニコーンさんとテディベアさんが、ずーっと一緒にいられるように、結婚式を開きたいの!」
ルードヴィヒ国王は、愛娘の可愛らしい願いに、顔を綻ばせた。
「素晴らしい! わが娘、我が宝の考えたことなら、何でも実現させてやろう!」
エレオノーラ王妃も、嬉しそうに微笑んだ。
「あら、素敵ね。どんな結婚式にしたいのかしら?」
「えっとね、まず、テラスで、みんなに祝福してもらって、可愛いケーキを食べるの! そして、モフモフには、特別なお役目をお願いするわ!」
結婚式の準備は、すぐに始まった。
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まず問題となったのは、式に招待するぬいぐるみを座らせる椅子が足りないこと。
「これじゃあ、みんな座れないよぅ!」
シャルロッテは、悩み顔で自分のぬいぐるみコレクションを見つめた。
そこで、ルードヴィヒ国王が「安心しろ、シャル!」と、王城の木工職人に特注の椅子を依頼した。小さなぬいぐるみたちにぴったりな、ピンクと白の可愛いミニチュア椅子が、次々と作られていく。
次に、シャルロッテの夢である「世界一可愛いウェディングケーキ」の制作に取り掛かった。
エレオノーラ王妃は、腕によりをかけ、シャルロッテと一緒に厨房にこもった。
「シャル、美味しいケーキを作るには、愛情が一番大切よ」
王妃は、最高級の生クリームを泡立てながら、シャルロッテに教えてくれた。
「そして、飾りつけは、あなたの魔法で!」
シャルロッテは、虹色の魔力を込めて、小さな薔薇やリボン、ハートのチョコレートを次々と作り出した。そして、その一つ一つに、「みんなが幸せになりますように」という願いを込めた。
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結婚式当日。薔薇の塔のテラスは、色とりどりの花で飾られ、まるで夢のような空間になった。
モフモフは、新郎新婦の世話役として、小さな花の冠を頭に乗せ、ふわふわの毛皮をなびかせながら、準備万端でスタンバイしている。
そして、いよいよ結婚式の時間が来た。シャルロッテは、司祭の衣装を着て、少し緊張した面持ちで、誓いの言葉を読み上げた。
「愛するユニコーンさんと、テディベアさん、健やかなるときも病めるときもずーっとずーっと一緒にいてね! 永遠に、可愛く、幸せに!」
シャルロッテが、風属性魔法で虹色の花びらを降らせると、テラスは七色の光に包まれた。
ルードヴィヒ国王、エレオノーラ王妃、エマ、そしてモフモフは、心からの温かい眼差しで、この小さな儀式を見守っている。
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誓いの言葉が終わり、いよいよお待ちかねのウェディングケーキの時間。
シャルロッテとエレオノーラ王妃が作ったケーキは、まさに芸術品だった。
三段重ねのケーキは、ピンクと白のクリームで彩られ、小さな薔薇とリボンが飾られている。頂上には、虹色のユニコーンと、手作りのテディベアが寄り添うように乗っている。
シャルロッテは、ナイフを入れ、ケーキをみんなに配った。そのケーキは、甘く、優しく、そして、何よりも「幸せ」の味がした。
モフモフも、美味しそうにケーキを頬張っている。
シャルロッテは、この最高の瞬間を噛みしめた。
「やった! わたしの可愛い子たち、みんな幸せになったね!」
結婚式は大成功。そして、シャルロッテは、ぬいぐるみたちが「永遠に可愛い幸せ」になったことに、心から満たされた。
モフモフは、花嫁のぬいぐるみに寄り添い、シャルロッテの側に寄り添い、みんなを癒した。
ルードヴィヒ国王とエレオノーラ王妃は、娘の純粋な幸福感に触れ、夫婦の絆を改めて感じた。
このぬいぐるみたちの結婚式は、王城の記憶に残る、愛と癒しに満ちた祝祭日となった。