表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

213/329

第百二十三話「マリアンネの結晶の失敗と、姫殿下の『真の専門家』」

 その日の午後、マリアンネ王女の研究室は、静かな絶望に包まれていた。マリアンネ王女が、数週間かけて開発していた、「魔力を完全に結晶化させる」という、極めて困難な実験が、最後の段階で、完全に失敗したのだ。


 研究の権威である彼女の失敗は、研究員たちに大きな衝撃を与えた。マリアンネ王女自身も、自分の「知性の完璧さ」への過信が崩れ、深い自己嫌悪に苛まれていた。


「おかしいわ。全ての理論、全ての計算は完璧だったはず。なぜ、この結晶は、濁って、二度と光を放たなくなったの……」



 シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、研究室へやってきた。彼女は、マリアンネ王女の持つ、「完璧主義者の挫折」という、冷たい悲しみの魔力を感知していた。


「ねえ、お姉様。その結晶さん、()()()()()


「怒ってる? なぜ?」


 シャルロッテ姫殿下は、失敗した濁った結晶に、そっと触れた。


「だってね、お姉様。この結晶、お姉様に、優しくしてほしかったのに、『完璧に! もっと完璧に!』って、怒られて、泣いちゃったんだよ」



 シャルロッテ姫殿下は、「完璧さの追求」という、大人の論理の裏に隠された、「物への愛情の欠如」を指摘した。


 シャルロッテ姫殿下は、マリアンネ王女の手に、同じ粘土で、不揃いな形を作った、小さな泥の塊をそっと置いた。


「ね、お姉様。この泥の塊は、完璧じゃないよ。でもね、触ると温かいの。だって、わたしが、ニコニコしながら作ったから」



 シャルロッテ姫殿下は、マリアンネ王女に、「失敗」という現象を、「愛の不足」という視点から再解釈させた。


 マリアンネ王女は、自分の研究が、いつしか「愛」を欠き、「完璧な結果」という、冷たい目標に支配されていたことに気づいた。彼女は、「名人であっても、愛を欠けば、結果は濁る」という、最も根源的な真理を悟った。


 マリアンネ王女は、失敗した結晶を、そっと抱きしめた。


「ごめんなさい……。私は、あなたに、愛を与えることを忘れていたわ」



 その瞬間、濁っていた結晶は、シャルロッテ姫殿下の魔法ではなく、マリアンネ王女の心からの謝罪という、純粋な愛によって、ごく微かに、澄んだ光を放った。


 アルベルト王子は、妹の知恵に感銘を受けた。


「シャルロッテは、技術の過信を、謙虚さという、最も美しい美徳で打ち破ったのだな」


 シャルロッテ姫殿下は、にっこり微笑んだ。


「えへへ。だって、失敗ってね、『もっと優しくしてね』って、教えてくれる、可愛い合図なんだもん!」


 シャルロッテ姫殿下の純粋な愛の哲学は、「専門性の極限」よりも、「愛の謙虚さ」が、真の成果をもたらすことを証明したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ