第二百九話「地下倉庫の食糧と、姫殿下の『言葉のひかり』」
その年の冬は、王国の麦の収穫が例年より少なく、王城の地下倉庫は、食料がぎりぎりの量しか残されていなかった。騎士団や使用人は、「食料という、物質的な備蓄」の重要性を議論し、不安を抱えていた。
「我々には、食料しかない。他に、この寒い冬を乗り切るための『力』はないのか」と、アルベルト王子は、苦渋の表情を浮かべた。
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シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、その冷たく、暗い地下倉庫を訪れた。彼女の目には、食料の山よりも、その空間を満たす、「不安」と「物質的な貧しさ」の、冷たい感情の波動が見えていた。
彼女は、王城の人々が、「物質的な豊かさ」だけを数え、「精神的な豊かさ」という、もっと大切なものを忘れていることに気づいた。
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シャルロッテは、土属性魔法で築かれた、冷たい石の壁に、そっと手を触れた。
そして、光属性と共感魔法を応用した。彼女の魔法は、壁に、物質的な食料の量ではなく、「言葉のひかり」を映し出した。
「ねえ、モフモフ。お腹が空いても、心は満タンにできるんだよ!」
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シャルロッテ姫殿下が、目を閉じ、壁に送ったのは、過去の、温かい言葉や、愛の記憶だった。
壁に映し出されたのは、「大丈夫、私がここにいるわ」という母の声。「お前は、最強の騎士だ」という父の信頼。そして、「みんなで、笑って食べる、甘いパンケーキの光景」といった、「愛」と「希望」という名の、美しい言葉のモザイク画だった。
それは、「寒さを和らげる、太陽の光」、「喉の渇きを潤す、雨の雫」、そして「心を温める、優しい言葉」という、三つの詩的なテーマで構成されていた。
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その光景を見ていた、アルベルト王子は、涙ぐんだ。
「なんということだ……。我々は、食料という物質的な備蓄ばかり数えていたが、『希望』という、最も大切な備蓄を忘れていた!」
マリアンネ王女は、妹の魔法を解析し、その効果に驚愕した。
「この光は、脳内の不安物質を中和し、生きる活力を呼び覚ますわ! これは、究極の精神的な食料よ!」
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シャルロッテ姫殿下は、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「ね、お兄様たち。お腹は、食料で満たされるけど、心はね、可愛い言葉のひかりで満たされるのよ!」
その日以来、王城の人々は、食料の量に不安を覚えることなく、「言葉のひかり」という、精神的な食料を分け合い、寒い冬を、温かく乗り越えることができた。
姫殿下の純粋な愛の哲学は、物質的な貧しさに直面した世界に、「芸術と希望こそが、真の備蓄である」という、最も高貴な真理をもたらしたのだった。




