第百十話「深夜の闖入者と、愛の結界の秘密の解体」
王城の書斎での、四人の兄姉による「シャルロッテ論」は、愛と感動の頂点に達していた。全員が静かに頷き、愛しい妹の存在の大きさに余韻に浸っていた。
その時、書斎の重い扉が、小さな音を立てて開いた。
そこにはなんと…ん…モフモフを抱いたシャルロッテが、眠い目をこすりながら立っていた!
彼女は、兄姉たちの集中した魔力の波動を感知し、「何か楽しいことをしている」と察して、やってきたのだ。
「なあに、お兄様たち、お姉様たち。シャルをのけ者にして、秘密のお話をしているの?」
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四人の兄姉は、一瞬にして、完全にフリーズした。自分たちが話していた内容が「妹への究極の愛の哲学」であったため、それを本人に聞かれるという事態は、騎士や王子の威厳、研究者の理性を一瞬で崩壊させかねない。
アルベルトは、完璧なポーカーフェイスを保とうとしたが、口角が微かに震えている。フリードリヒは、顔を赤くし、すぐさま背中を向けて壁を見た。イザベラは、優雅なティーカップを慌てて置き、マリアンネは、ノートを隠そうとして、ノートとペンを床に落とした。
「い、いや、シャル。これは、その……お、王家の……機密事項だ!」と、アルベルトが、冷や汗を流しながら、しどろもどろになった。
「そ、そうよ、シャル。非常に、非常に複雑な、魔法理論の話なのよ!」と、マリアンネは、落ちたノートを拾う振りをして、顔を隠した。
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シャルロッテは、兄姉たちの動揺を、小さな瞳で正確に読み取った。彼女は、薄々「みんな私のことが大好きで、私のことを話していたんだ」とわかっている。だからこそ、その「秘密」を、もっと優しく、引き出してあげたかったのだ。
シャルロッテは、そっとアルベルトに近づき、彼の肘に抱きついた。
「ふーん……でもね、アルベルト兄様。兄様のローブ、なんだか、苺のショートケーキの匂いがするよ?」
「なっ!? 苺の……?」
すぐさまアルベルトは、「それはシャルロッテの好きなものを考えていたからだ」という意味だと察し、息を詰まらせた。彼は、兄としての威厳をかなぐり捨て、絞り出すように言った。
「う、うむ……やはりわかるか? そ、それは、シャルが、苺のショートケーキのように、甘く、大切な存在だからだ……」
シャルロッテは、次に、フリードリヒの背中に向かって、優しく問いかけた。
「フリードリヒ兄様は、なんで壁を見てるの? 壁がモフモフに見える魔法にかかったの?」
フリードリヒは、壁に向かったまま、震える声で答えた。
「そ、そうだ! モフモフだ! シャルと話していると、愛しすぎて、すべてモフモフに見えてしまうんだ……!」
イザベラは、優雅な笑顔を取り戻し、シャルロッテの銀髪を撫でた。
「秘密なんてないわ、シャル。私たちは、あなたの髪の毛一本一本が、どれほど愛らしく、完璧な構造をしているか、語り合っていただけよ」
その言葉にシャルロッテは満面の笑みを浮かべた。
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ルードヴィヒ国王とエレオノーラ王妃は、書斎の扉の隙間から、この全てを見ていた。二人は、顔を見合わせ、声を出さずに笑い合った。
「私たちの子供たちは、本当に愛に満ちているわね」と、王妃は囁いた。
シャルロッテは、モフモフを抱いたまま、兄姉四人の温かい腕の中で、幸福感に満たされた。
「えへへ! みんな、愛の力が強すぎるよ! でも幸せ!」
兄姉たちの愛の結界は、妹の可愛らしい問いかけによって、ユーモラスに解体され、より広く、温かい光となって、書斎全体を照らしたのだった。




