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9…結 勇気 成

「第五の勢力なんて無理だろ。オレ、雑魚だし、お前ら二人でやってくれよ」


オレがそうこぼすと、ニコニコが言った。

「僕も無理だと思うよ^^」。


これで2対1。ミナトは本当にバカなのか? 出来るわけないだろ。


「作戦はあるわ」


ミナトの言葉を遮るように、ニコニコがため息混じりに言い放つ。

「いいや、無理だね^^」


「少数精鋭のチームを作るわ。私とゼンの2人は、そこらの超能力者の20倍は強い。あなたは弱いけど」


じゃあオレ、いらなくないか? もう巻き込まないでくれ。そっとしておいてくれよ。そう思った瞬間、ふと気づいた。ゼン? こいつか。オレを殺そうとした、こいつのことか


「待て。一番大事なことを忘れてた。オレを殺そうとしたこいつは、何なんだよ」


「そういえば、名乗ってなかったね^^」


にこにこと、まるで何事もなかったかのようにそいつは言う。

杉本スギモト ゼンよろしくね^^さっきはごめんね^^」


「お、おう」

にこやかな顔の裏にどんな感情が渦巻いているのか、全く読めない。不気味だ。


「まあ、お前はいったんいいや。これ、仕組んだのミナトだよな?」


ミナトを睨みつけるが、「何よ?」とばかりの顔でこちらを見ている。その澄ました顔が、オレの神経を逆撫でする。


「そうよ。あなた、説明聞く気なかったから実戦をさせてあげたの」


開き直りやがったこいつ、と内心思ったが、何も言わなかった。ここで言い争っても無駄だ。どうせこいつは聞く耳持たない。


「話は戻るけど、チームは作らないからな」


「作らないとあなたは死ぬわよ。私もゼンも助けないからね」


「たす…」

助けなくて結構と言おうとしたが、待てよ。雑魚かつ珍しいオレは、いわば足の遅いメタルスライムみたいなもん。つまりただの経験値だ。なら、こいつらに助けてもらった方がいいに決まってる。プライドなんて、命の前じゃゴミだ。


「助け合うためのチームってことか?」


それなら弱者のオレにとって好都合だ。こいつらの力を借りて、生き延びる。それしか、道はない。


「今はそういうことでいいわ」


「それ、僕も入らないとダメなの?^^」


ニコニコは乗り気じゃないようだ。まあ、強いやつからしたらメリットなんてクソほどもないからな。


こいつらの力関係がどうなっているのかは知らないが、ゼンとミナトは対等な関係らしい


「ダメね」


食い気味にミナトが言う。その後もニコニコは何かごちゃごちゃ言っていたが、最終的には入ることになった。


「とりあえず、あなたたち2人はチームに入ってくれそうな人を探しなさい」


「あなたは超能力者を増やしなさい」


「ゼンは知り合いにあたって」


「お前は?」


「私は作戦を考えるわ」


「どうせ何も考えないでしょ^^。そんなことより約束は守ってね?^^」


ニコニコの言葉に、ミナトはムッとした顔で話し始める。


「最初にジャグラーを潰すわ」


「規模が小さいからだね^^」


「安直だな。策はあるのか? オレ、戦力にならないし行かないからな」


「ジャグラーは構成員が約50人。そのうち目立った人物は4人。行けると思わない?」


「最低でも10人は欲しいね^^」


50人相手に10人で行けるはさすがに無理がある気がするが、2人は行けそうな顔をしている。一体、どれだけ自分たちの力に自信があるんだ。オレからすれば、ただの無謀な特攻にしか思えない。


「じゃあ、10人集まったら正式にチームを作るってことでいいな」


ニコニコとミナトの人脈がどれほどかは知らないけど、10人集まるまではゆっくりできそうだ。適当にメンバー集めを邪魔するかー。でも邪魔しすぎると、オレのこと守ってくれる騎士様がいなくなっちゃうしなー。バランスが大事か…。


「あなたはそれまでにレベルを上げなさい」

自己防衛のために上げたいけど…レベルか…。やっぱり…。


「人を殺す以外でレベルを上げる方法はないのか?」

できれば人を殺したくない。というか、殺しに抵抗がない人間なんていないだろ。もし他の方法があるなら、どんなにきつくてもそっちをやる覚悟はある。


「ないわね。人を殺す勇気がないのは、さっきの戦いでわかってるわ」


「人を殺すのは勇気とかじゃないだろ」


「勇気よ。自分や大切な人を守るために人を殺せないなら、ただの意気地なしだわ。他人に迷惑をかけてでも、殺してでも生き残る。それを勇気があるって言うの」


ミナトの言葉は、まるでオレの心臓に冷たい刃を突き立てるようだった。ミナトのは正論じゃないオレが正しい。だが、オレは、何故か納得してしまった。


「まあ、もう少ししたら嫌でも戦うことになるんだから、覚悟はしときなよ^^」

ゼンはそう言って、にこやかに笑う。その笑顔が、ひどく恐ろしかった。


「……おう」


そんな日は来ないでほしいな…と、オレは小さく呟いた。


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