8…復 詳細 活
目に飛び込んできたのは、見慣れた天井だった。しかし、頭には鈍い痛みが残り、どうにも拭えない違和感が胸をざわつかせる。
――そうだ、ナイフで刺されたんだ。
背筋を冷たい汗が伝う。恐る恐る体を起こすと、視界に入ったのは、あのときのニコニコと能天気に笑う男の顔。
「目が覚めた?^^」
「うわぁぁぁ、なんでお前がここにいんだよ!」
オレを殺そうとした張本人が、なぜかオレの部屋にいる。混乱と恐怖で叫び声を上げると、隣の部屋から別の人物が顔を覗かせた。
「詳しいことはミナトちゃんに聞いてね^^」
そう言い残してニコニコは消え、入れ替わりに現れたのは、ミナト。ミナトもどこか楽しそうにニヤニヤしながら、とんでもないことを口にした。
「さっきの模擬戦どうだった?緊張した?」
模擬戦?ふざけるな。オレは確かにナイフで刺されたはずだ。苛立ちと怒りがこみ上げてくる。
「おい、聞いてないぞ。それにオレはナイフで切られたはずだか?」
「あれ百均で売ってるびっくりナイフよ?」
「気づいてなかったの?^^」
先ほどの男がひょっこり顔を出し、心底面白そうに笑う。オレは怒りで頭が真っ白になった。
「気付くかよ!こっちは必死だったんだぞ!」
しかし、冷静になって考えてみれば、確かに違和感はあった。ニコニコは電話番号も聞かずにミナトを呼び出したし、ミナトもあっという間に駆けつけた。
「それで、なんでこんなことをしたんだ?」
オレは怒りを抑えきれずに問いただした。
「あなた、私の話聞かないでしょ?だから実戦を経験して、いかに自分が弱いか理解して欲しかったのよ」
ミナトは静かに、しかし有無を言わさぬ口調でそう言った。
「別に戦わないって選択肢もあるだろ、巻き込まないでくれ」
「…残念だけど、そんな選択肢はないわ。あなたの能力が『ギフト付与』だった時点で詰んでたのよ」
「どういうことだ?」
「能力はレベルアップした時に増えたり強化されたりするんだけど、その時にいくつか隠し条件があるんだ^^」
ニコニコが再び現れ、不気味な笑顔で語り始める。
「特定の能力を得るためには、その能力を持ってる人を殺さないといけなかったり、その能力の攻撃を受けないと行けなかったりするんだ^^」
「それで、『ギフト付与』は能力獲得も強化も、殺しが条件なの。今、日本国内で『ギフト付与』の能力を持っているのは、あなたを含めて多分7人よ」
「そのうち3人は確定で君を殺しにくるね^^」
「『ギフト付与』を進化させると、全人類に一斉にギフトを送れるようになるの。」
「全員が超能力者になるってことか?」
「なんでもできるわ…例えば、自分が神だって思い込ませるギフトを送ったり、自分の周りの人間に永遠の命を送ったり、やりたい放題よ」
ミナトはそう言って、この能力がどれほど危険なものかを説明した。
「でも、襲われないんじゃないか?オレは今んとこそこのニコニコ野郎にしか襲われてないぞ」
「今はまだ気づかれてないもの。もしもその能力を持っていると知れたら、全員が襲ってくるわよ」
「その全員て誰だよ」
「今、日本には4つの勢力があるの。あなたを殺しにくるのは3つね」
「666、JuGGleR、星彩教。この三勢力が能力者狩りをしてるよ^^。この中だと666が若干ほかより強いね^^」
「もうひとつの勢力は高橋東山連合ね。ここは2人の『ギフト付与』持ちがいるわ。主に海外から日本に攻めてくる勢力を撃退してくれてるわ、こっちの世界の警察みたいなものね」
「あとひとりは?」
「…わからないわ」
ミナトはそこで言葉を詰まらせた。
「なんで?」
「本当に何も分からないの。目的も居場所も、性別すらね」
「一つだけ言えることは、あなたに能力を与えた人ってことだけ」
「その人に会いに行った人は99%死んでるの。強い人もね。だから一部の人達からは神だと言われているわ」
長々しい説明を聞き終え、オレは自分が置かれた状況を理解した。このままでは死ぬ。生きたいなら、なんとかしなくては。
「じゃあ、オレは高橋東山連合に行ってみるよ。生き残りたいからな」
「やめといた方がいいよ。多分殺されるから^^」
ニコニコが再び口を挟む。
「なんでだよ」
「よその超能力者は怖いからね。みんな自分が能力を与えた人だけで勢力を作ってるんだ^^」
確かに、オレの能力が珍しいものなら、いつ寝込みを襲われるかわからない。いったい、どうすればいいんだ?
答えが見つからず、途方に暮れていると、ミナトがまっすぐオレを見てきた。何か言いたげな、強い意志を秘めた目だ。
「なんだ?」
「私たちで、5つ目の勢力を作るわ!」