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4…暗 教師 躍

不可解な状況の中1日を過ごす。


「おい植野、放課後自習室こい」


先生からの突然の呼び出し。心当たりがないわけではないが、今はそれどころではなかった。今日という今日は、とにかく嫌だった。放課後、重い足取りで自習室に向かうと、先生が待ち構えていた。


「なんかあったのか?」

心配そうな眼差しに、オレはただ首を横に振る。「いえ、何も…」。

ペンギンのこと、そしてこの世界の違和感。とても話せる気にはなれなかった。


「まぁ、話さなくてもいい。だけど、家族や友達に相談できないことは私を頼ってくれ。それが先生の仕事だ。金もらってるから、それくらいはするぞ」


先生はそう言ってくれたが、オレの心には響かなかった。いや、多分今のオレは、誰に何を言われようと響かない。壊れた機械みたいに、何も受け付けない状態だった。


「はい、大丈夫です。心配ありません」


とりあえず、早く帰りたかった。この話がこれ以上続くなら、もう帰ろうと決意した。すると先生は、唐突に話を切り替えた。


「ところで、話は変わるんだが、私は結婚して苗字が変わったんだが、何になったと思う?」


は?本当に急だな。戸惑うオレに、先生はにやりと笑う。

「当てたら帰っていいぞ」


これは好都合だ。鑑定スキルを使って、さっさと帰ってしまおう。


鑑定の結果はこうだ。

名前:福嶋フクシマ アンLv0

通称:先生

身長:165cm

体重:55.6kg

性格:冷静、正義

性癖:なし

趣味:人助け

悩み:生徒と仲良くしたい

ギフト:なし


福嶋って、変わってねぇじゃねーか。てことは「結婚」は嘘だったのか。

趣味や悩みも胡散臭いし、「性癖なし」ってのもいかにもって感じだ。でも今は、他人のことなんて気にしてる余裕はない。


「福嶋のまんまですね?結婚って本当ですか?」


その問いに、先生はあっさりと「いや嘘だ。もう帰っていいぞ」と言い放った。

この時間は何だったんだ?拍子抜けしたが、なんだか少しだけ、気持ちが楽になった気がした。


「あ!明日、休学明けの子が来るから、お前の隣の席な。色々説明してやってくれ」


「はい、わかりましたー」


面倒くさいな。明日休もうか。そんな思いが頭をよぎったが、先生はさらに追い打ちをかける。


「めっちゃかわいい女の子だったなぁー」

その一言に、オレはニヤリと笑った。「謹んでお受けします」とつぶやいた。


学校を休むのはやめておこうと決めた。やっぱり、サボるのは良くないよな。









(ミナト)、再び戦場へ


数時間前──

「いきなりで悪いが、明日から学校に来てくれないか?ミナトの力を借りたい」


ある人物が、目の前に立つミナトと呼ばれた女に切り出した。ミナトは無表情で答える。


「別にいいけど、理由でもあるの?」

「フクダが死んだ」


抑揚のない声。しかし、その言葉の重みはミナトには十分伝わっていた。


「あ、そう」「これで何回目?」


驚くこともなく、平然と死を受け入れるミナト。

「…8回目」


「今さら私が行って、何か変わるの?」


ミナトは本心を隠さずに尋ねる。できるだけ平穏に過ごしたかった。


「今回は別だ。ツバサが能力に目覚めて、フクダの死を認識してしまった」


その言葉に、余裕だったミナトの表情がわずかに曇る。


「そう…能力にギフト付与はあるの?」

「ある…もう戦うしかなくなった。それで、ツバサの護衛兼指導者になってもらいたい」


「いやよ。できるだけ前線には戻りたくない」


本心から嫌そうな顔をするミナトに、人物は少し声を荒らげて言った。


「忘れたのか、前に起こったことを…」


その一言に、ミナトの抵抗は消えた。


「…分かったわ……それじゃあ明日学校に行くから、書類とか諸々はそっちで作ってね」


「助かる…」とだけ言い残して、人物は立ち去った。


「また私たちの日常は壊されるのかな…」

ミナトの問いかけに、答えは返ってこなかった。静まり返った路地裏に、ただただ虚しさが残った。


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