反撃
目が覚めた頃にはルーシアが私の顔の前で何か話していた。口の中にある名状しがたい味の気付け薬を感じながら声を聞いた。
「白ちゃん、起きて白ちゃん。このまま寝てたら死んじゃうよ。」
そう言って起こしているルーシアの背後に岩の巨人が立っていた。私は未だ朦朧とする意識の中右手で剣を探り、拾い上げると同時に全力で岩の巨人の顔を打った。
「ぐううう!」
岩の巨人は顔を吹き飛ばされながらもルーシアを腕で貫こうとした。私はマズイと思い、全身全霊を掛けて岩の腕を弾こうとした。すると、剣は数カ月ぶりに淡く光りだし、私は自身の身体の限界を超えながら、岩を一撃で粉々に砕いた。そのまま、私はゴーレムの胴体を斜めに斬りつけ心石の魔法陣を破壊した、するとゴーレムはすぐに停止した。
私とルーシアは目を合わせて互いの無事を確認した後、互いのゴーレムを倒しに行った。
気絶するまでと同じ様に魔術を身体と剣に纏わせながら戦った。
気付け薬の中に鎮痛剤を混ぜて置いたお陰でさっき受けた傷はあまり痛まなかった。
そして私はもう一体の余ったゴーレムの頭を剣で玉を弾くように吹き飛ばした。するとゴーレムは先程とは違いへんてこな攻撃を繰り返していた。さっきよりかは攻撃が読みづらくなったが私はゴーレムの一撃一撃を蝶のように避け続けた。
「ここだーーー!!!!」
ゴーレムの胴体に一撃を加え表面の岩を退かし、中にある心石を砕いたするとまたもがき苦しむ様な動きをした後に停止した。私はすぐさま近くのルーシアに情報を伝えた。
「ルーシアちゃん、ゴーレムは頭を胴体から離すとおかしな方向に移動したりするから気を付けてね。」
「分かった。じゃあ、頭を飛ばせば良いんだね。」
分かったのか分かってないのか私が分からなくなる返答をして来たルーシアに私は言った。
「頭が無くなるとこっちも動きが読みづらくなるからやめた方が良いんじゃない。」
「良いの、そう言う戦い方も出来るんだから。互いを混乱状態にすれば相打ちさせる事が出来るかもしれないし。」
そう言ってルーシアは2体のゴーレムの頭を左右へ飛ばした。しかし、ルーシアの予想に反してゴーレム達はお互いに離れて行った。
「え!なんでなんで。」
ルーシアは慌て出した。
「多分、心石にそう言う安全装置があるのでしょう。護衛用ならば護衛対象を傷つけない為にその人物の魔力を心石に書き込み、一定の条件を満たした際にそのものから距離を取る。」
私は不安で張り裂けそうな心の臓を抑えて、落ち着きを装いながら言った。
「じゃあまあ、これも訓練の一部だと思って一人で頑張って下さい。私はイーヤさんの助けに行きます。」
そう言って私はイーヤさんの方へと向かった。その時ルーシアは私に向かって何か叫んでいたが私には聞き取れなかった。
イーヤさんは黒い個体に苦戦を強いられていた。
「イーヤさん!」
「離れて!」
イーヤさんがそう怒鳴ったので私はびっくりして急いで離れると、さっきまで私がいた所を通って尖った石が木の幹に深く刺さった。
「白ちゃん、気を付けて。こいつ結構速いわ。」
「さっきの灰色の個体よりもですか。」
「ええ、多分。反応速度がめちゃくちゃに早いし、運動性能、耐久力、攻撃力共にとても高いから気を付けて。それに加えて早い再生能力もあるわ。」
イーヤさんは私に情報を分けてくれた。
私は直ぐ様風魔術でさっきのゴーレムの様に倒そうと素早く斬りかかり腕を飛ばそうとしたが、上手くいかずに私の方が先に飛ばされた。幸い、剣を地面に刺して速度を抑え静止することができたが結局何の成果も得られなかった。
「白ちゃん、突撃するだけが戦いじゃないの、周りにあるものまで利用しないと。」
とイーヤさんは心配しながらも注意してくれた。
私はその言葉を聞いて周囲を見渡した。周りには小さい木の枝とゴツゴツとした岩、小石、私一人隠れられそうなくらい太い木、そしてイーヤさん。
私は考えに考えつくした、そして一つの解が生まれた。
「イーヤさん、砕いた破片を岩の中に隠すってのはどうですか。」
「良いわねやってみましょう。」
私はゴーレムの腕をちょっとずつ壊し破片をイーヤさんに投げ、イーヤさんはゴーレムが破片を引き寄せるまでに砕いた岩と破片を溶かして融合させるこれの繰り返しで私とイーヤさんはゴーレムの片腕の半分までを封じた。
ところがゴーレムはイーヤさんが溶かしてゴーレムの破片と融合させて固まったものを砕いた。
「うぇ!なになに、なんで砕き始めたの?!」
とイーヤさんはびっくりしていた。
しかし、そんな声を他所にゴーレムは封じられた破片を溶かした岩ごと吸収した。腕は人間の腕のように丸みを帯び、関節部分は細かい岩で覆われた。黒光りした昆虫の様な体に灰色の模様が入った。
「なにこれ!」
私達の後ろからいつも聞いている声が響いた。私が後ろを振り向くと、服は所々破れ、土で汚れながらも鮮やかな赤髪をを持つルーシアが合流して来た。
「再生能力を封じようとしたら失敗しちゃってこんな感じ。」
とイーヤさんは説明した。
それにルーシアは呆れ顔をしたが、すぐ後に閃いた顔をした。
「イーヤさんは、磁石を火に焚べるとくっつかなくなったが少しするとまたくっつくようになったと言う話を聞いたことはありませんか。」
そう聞くと私とイーヤさんは閃いた。
しかし、イーヤさんは質問した。
「磁鉄鉱ってこんなに早く冷えるかしら。」
「いや、イーヤさん。魔鉄鋼はすぐに冷えるから加工しづらいって前に鍛冶屋さんから聞きました。」
と私は答えた。
「じゃあ、やってみる価値ありね。白ちゃん私と一緒に炎魔術を一緒にやって再生能力を抑える、そしてその後に三人で一斉で攻撃して倒す。」
私とイーヤさんは二人で炎の魔法陣を空中に書き始めた。それに気づいたゴーレムは生物のようになった足がで走って来たがルーシアが足を蹴って転ばせた。
「白ちゃん、イーヤさん今です。」
ルーシアがそう言ったタイミングで魔法陣が完成した。そして、放とうとした途端ゴーレムがルーシアの右足を持って立ち上がった。
ルーシアは何度も足で魔鉄鋼の手を蹴ったがびくともしなかった。ルーシアは諦めて私達に向かって言った。
「私の事は構わずやって下さい。」
「分かったわ。」
イーヤさんは容赦なく言った、その態度に私は魔法陣を両手で支えながらイーヤさんを怒鳴った。
「イーヤさん、弟子なんですよね。それでもルーシアちゃんの師匠ですか!」
それを遠くで聞いていたらルーシアは叫んだ。
「白ちゃん、私一人でどうにかなるか、、痛い痛い痛い!」
ゴーレムが握る力を強くしたからかルーシアは痛みで叫んだ。
私はルーシアが作った隙を無駄にしない為に魔術を放った。
全身が熱くなった。それでも私は魔術を止めなかった。
「白ちゃんもう終わり。」
イーヤさんがそう言ったので私は魔術を止め、ゴーレムに切りかかった。
「くらえ!ルーシアちゃんの分だああああああああああああ!!!」
そう言う私に呼応するように剣は白く光った。
剣はゴーレムを構成する魔鉄鋼を紙の様に割いた。その一太刀に巻き込まれる形で心石を破壊した。すぐにゴーレムは力なく地面に仰向けに倒れた。そして私もゴーレムから出る熱を近くで感じながら地面にガクリと落ちた。
「やった、倒せた。」
私はイーヤさんの方向を向くと、しれっとルーシアが立っていた。
「白ちゃん、作戦大成功だね。」
私は涙で顔をクシャッとさせルーシアに飛びついた。
「よがった、本当によがった。殺しちゃったかと思った。」
「まあ、間一髪の所であのゴーレムが逃げてくれたおかげかな。」
とヘラヘラしながら言った。
イーヤさんは続けて言った。
「ルーシアちゃんならギリギリで避けれると思ってたし、早くしないと足が折れて大会に支障をきたすからね。まあ、これでルーシアちゃんの今の実力は分かったし、明日からは厳しくいくからね。あと、白ちゃんは大会が終わってからね。」
「ひぃ。」
その言葉を聞いた私とルーシアは一瞬で血の気が引いた。
その後家まで私がルーシアを運び、イーヤさんは、ルーシアの剣や戦利品を私の代わりに運んでくれた。
それから大会まではあっという間だった。
イーヤさんの言う通りルーシアちゃんは毎日日が暮れるまでイーヤさんに稽古をつけてもらっていた。その間私はイーヤさんやルーシアの代わりに家事をしていた。その間はそんな大事は無く。
そうやって過ごしているとあっという間に大会前夜になった。大会前夜は参加者、十二怪が王城で過ごす事になっているので、私はその晩久々に一人で過ごした。
そして、大会当日になった。




