報告書
イーヤさんとルーシアは大会への申請書を完成させ、その後私が報告書で忙しいイーヤさんの代わりにルーシア稽古をつけていた。
「もっと柔軟に動く。」
私は木の棒を持ってルーシアに避ける技を叩き込んだ。たまたま実戦でも役に立つ様な舞であったが回避の方がなっていないのでそこを鍛えていた。
「ずるい、白ちゃんも素手で避けて見せて。」
そう言うので私は仕方ないのでルーシアに持っていた棒を持たせ、全力でやるように言った。
私はルーシアの振るう棒を軽々と左右上下に次々と避けた。
途中でルーシアが弱音を吐いた為また立場を逆にした。
「じゃあ、今から本気で行くんで全て避けて下さい。」
そう私は忠告して少ししてから本気で行った。
右から左、下から上に向かって私は棒を振り、ルーシアはそれをギリギリで避け続けた。私はルーシアの動きを見ていると彼女は反撃のタイミングはないかと常にうかがっていた。
「今は反撃のことよりも避けることに集中したほうがいいです。」
そういう私にルーシアは言い返した。
「避け続けたって、私の体力が切れたらおしまいじゃない。」
そう言いながら彼女は私が持つ棒の先端を掴み羽のように軽い肉をつけた棒を投げ飛ばした。
「あなたは、避ける技術だけじゃなくて肉をつけなさい。」
私はその言葉が頭に来たので言い返した。
「私はあなたとは違って胸に無駄な肉がついてないからです。」
私の言葉にルーシアは反応してきて棒を振り回してきた。
私達が騒いでいると家の中から報告書が一段落付いて疲れていたイーヤさんが出てきた。
「仲がいいのはいいけどあまりうるさくしないでね。」
私とルーシアよりも遥かに凄い物をつけたイーヤさんを見た私とルーシアは声を揃えて言った。
『もっと、すごいのがいましたね。』
「何よ、二人そろって私の何がすごいの。」
とイーヤさんが不思議そうに聞いてきたので私たちはなんでもないふりをした。
「この後、報告書を直接提出しに行くんだけど、二人とも一緒に行かない?」
イーヤさんは私達にそう提案してきた。
「どこに出しに行くんですか。郵便じゃダメなんですか。」
そういうとイーヤさんは面倒くさそうに言った。
「私もそうしたいのは山々なんだけど内容が内容だし、郵便だと数日かかるから入れ違いで催促が来ることがあるのよ、それがいやでね。あと、大会の会場が王城近くの闘技場でルーシアが会場の下見のついででもあるのよ。」
なるほどそういう事かと合点した私はルーシアを連れて王城に向かった。
王城の入口は煌びやかな装飾が施されていて、周囲との違いがはっきりとしていた。煌びやかな門の下をくぐると、王城の正確な大きさを肌で感じた。その権力の象徴でもあり、その国の力の象徴でもある城には何人もの衛兵がいたるところに立っていた。
そして、私たちは庭園の少し離れた場所にある、軍事関係の研究棟に入った。イーヤさんは入って早々近くにいた職員に向かって訊いた。
「所長は今いるかしら。」
「国王陛下に呼ばれて今は城の中にいると思います。」
と言ったので私たちは今度の大会の会場の下見に行った。
そこはレダリアなどの地方にある闘技場と似たような構造をしているが一か所だけ違うところがあり、貴賓席が地方よりも煌びやかで広い作りとなっていることだった。
「私こんなところで戦うんだ。」
とルーシアがこぼした。
「そのうえ国王様と十二怪の全員が来て、一般人は見れないけど兵士たちのほとんどが観覧しに来てこの席がほとんど埋まるからね。」
そうイーヤさんが同感するように言った。
そんなこんなで時間をつぶして、また研究棟に戻るとちょうど所長と呼ばれる人物が戻っていたのでイーヤさんは報告書を国選研究社の制服を着た男性に渡した。その男性は軽く報告書に目を通しながら私たちを応接室に連れて行った。
応接室に置いてある革張りのふかふかの長椅子に腰を下ろした。。
「お嬢さん、君の剣に関して知っていることはないかい?」
と優しく聞いてきたので私はこの剣を入手するまでの段取りを言った。
「そうか、その剣ははじめは魔物が持っていたんだな。ありがとう。ところで、提案なんだがそれを国王陛下のところに持って行ってくれないかい。国王陛下ならば何か知っていると思うんだだからもしよかったら皆で謁見しに行こう、予約の方は私の方で何とかしておく。」
所長がそう言ってくれたので私達はその後の全てを所長に頼った。
「そして、本題のイダリヤ、調査の結果はどうだったんだ。」
そう所長が聞くとイーヤさんは説明した。
「まず、道中で私達はリザードマンと呼ばれる獣人達に出会って、その獣人達と近くの町は協力関係にあって彼らは無詠唱で魔術を全員が使えていたから、魔物であると言える。」
イーヤさんが、リザードマンとの記録を説明した。すると、所長が言ってきた。
「そのリザードマンと接触したのか。」
イーヤさんは首を縦に振った。
「本当か、他の地方の魔物は余り人間に有効的な個体がいなくてな。」
イーヤさんはその事について言及した。
「多分、だけど人と協力しないと生活出来ないからしてるんだと思うのだけれど。」
「なる程、それについても以後調査といったところかね。」
と所長が言ったのにイーヤさんも賛成していた。
「あと、ジャイアントって言う虫を大きくしたような魔物がイダリヤの都市に攻め込んで来た際、ジャイアントの一団で攻めてきてジャイアントクイーンのみが魔術を使っていたくらいね。」
「そのジャイアントクイーンに関しての死体の調査はしたのか。」
イーヤさんはヘラヘラしながら、掌を上に向け上げながら首をかしげた。
それを見た所長は近くにあった灰皿を手に取りイーヤさんに投げようとし、私とルーシアで止めに入った。
「所長さん待って下さい。イーヤさんも早く謝罪して。」
何とか落ち着いた所長にイーヤさんは説明した。
「向こうの方の取り決めでジャイアントの死体の一部を持って来るのは至難の技だったわ。」
「と、言う事は、持って来たんだな。」
イーヤさんは鞄の中から二重に布で包まれた物を出して、布を剥ぐと中から黒いジャイアントの甲殻を出した。
「おお、これはジャイアントの甲殻か!」
「本当はクイーン方を持って来たかったけど人目が多く、ソルジャーの方も駄目で、帰り際にチラッと盗んできたのよ。本当は防具にでも加工しようとしたけど出来なかったから研究標本として持ってきたのよ。用が済んだら、ここで加工させて。」
「イーヤが勝手に加工しなかったお陰で標本が手に入った。ああ、これは女神様に感謝しなければ。」
そう言うと所長は天に両手を握りしめ祈った。
それにイーヤさんは何か言いたげだったが何も言えなかった。
「ああ、そうだった、こいつの加工は俺達に任せておけ何か案があったら言ってくれ。」
「この研究所の人は加工も出来るんですか。」
私がそう聞くと所長は自慢げに言った。
「おうよ、なんせ人脈があるから凄腕の加工屋に頼んでやってもらうのさ。」
「あ、自分達でやるんではないのか。」
そう言って所長は言った。
「なんせ、やるならプロに任せて正確な結果が欲しいから当たり前じゃないか。」
私達はそんな談笑をしていると時間はあっと言う間に過ぎ、時計を見るともうそろそろで夕方の市場が終わりそうだったので切り上げさせてもらい、研究所を後にした。




