王都への帰り道その二
「元盗賊なのに凄いわね。やっぱり商いの才はあるのね、盗賊くせに。あの時は逃げる為にそう言ったけど。」
イーヤさんは皮肉を込めてその元盗賊の男達三人に言った。
「姐さん、俺達、あんな危険と隣合わせの生活から脱却出来たのも姐さんがその嘘をついてくれたお陰です。しかし、まだお金に余裕がないので余裕が出来たら返します。」
そうリーダーであろう男が言った。
それ対しイーヤさんはその事を断った、しかしその代わりとなる事を言った。
「じゃあその代わりの事をお願いしたいけどここじゃ人目が多いから貴方達の天幕に案内して、そこで話しましょう。」
私達は男達の天幕に入ると中は明るくソファと木で作られた机が置かれていた。
「それで、そのお願いは他言無用でその時になったら皆に話して。」
イーヤさんが真剣な面持ちで男達に話した。
「近いうちに北の王国との戦争がまた始まるの、その時に援軍として加勢してくれないかしら、これは元盗賊の貴方達の腕を見込んでの事よ。」
そう言うと元盗賊の男達は勢いよく答えた。
「当たり前じゃないですか、姐さん、俺達は姐さんに助けてもらったんです。次は俺達が助けないと俺達の心は晴れない喜んでお受けいたします。」
男達は柄にもない丁寧な言葉で答えた。
そうして私達は男達の天幕から出て水を補給してからまた王国へと歩みを進めた。
私達は断崖の真横をゆっくりと辿って行った。少しでもずれたら馬車ごとヒックリ返り激流に落ちるような状況だった。
沙漠は雨によっての被害が大きくなりやすいそのため雨が降ると物流網は麻痺しやすくなる。しかし、私達は立ち止まっている時間はないのでこんな危ないところも歩かなければならなかった。
「あ~もう退屈。」
そうルーシアが足をバタバタさせながら文句をたれていた。
「ちょっ、ルーシアさん、馬車今結構危ないところ通ってるんですから暴れないで下さい。」
「まあ、イダリヤはあんまり景色が映えないからね。私も正直イダリヤの街への道はあまり好きでは無いわね。イダリヤの街の先の方は絶景が広がっているのよそしてその先には力の塔って言う塔が建っていてそれがまた凄いのよ。」
私達がそうワチャワチャと雑談をしながら進んでいると道端に三人ほど座り込んでいるを見つけた。
彼らに事情を聞くと、イダリヤの街に向かう客車で客から運賃をもらって運んでいたらしい。しかし、出発前に急な大雨が降っていたのにも関わらず。無謀にもお金の為に無理矢理イダリヤの街に行こうとした結果、何人かの客と、客と一緒に運んでいた荷物、馬車、そして馬車を引いていた砂浴鳥を崖下の濁流に飲み込まれたのだった。
お金の為にそんなに欲張るからこんなに沢山の損失が発生するんですよ。と私は心の中で思った。
私達が借りていた馬車はある程度大きく、彼ら全員を送る程度ならまだ乗れる余裕があったのでついでに王都まで送る事にした。そして四人全員乗るとルーシアは一人一人に事情を聞いていた。
「貴方はなんでイダリヤの街にこんな状況でも行きたかったの。」
ルーシアは一人のやせ細った青年に事情を聞いた。
青年が言うには彼の母親の健康があまりよろしくないと家族から聞き、母の様子を見に行く為に急いでいたという。
そして、青年は続けてこう言った。
「こんなに危ないなら乗らなければ良かった。私の手荷物は全てあの地面を這う怪物に呑まれてしまった。」
そう詩的な表現を使って、川への恐怖を語った。
次にルーシアが声をかけたのはふくよかな体型の男だった。
彼曰く、自身はこの道十数年の御者でこんな事は無かったと言った。しかし、彼の会社のオーナーが変わってから無茶な仕事を沢山押し付けてくるようになったらしい。
そして彼は最後にこう言った。
「こんな事になったら、全て自分の責任と言われてしまう。こんな事になるなら、こんな会社直ぐにでも辞めるべきだった。」
そしてルーシアは最後に二人の母子に声をかけた。
その家族は店の経営が立ち行かなくなり、王都の店と家を売りイダリヤにある母親の実家に向かっている途中だった。
小さな子どもは母親の腕をぎゅっと握りしめていた。母親はこう言った。
「こんな目にあうならば安いところに頼ったのが間違いだった。あと少しで全て失うところだった。」
ルーシアはそんな不健全な時間の潰し方をしているとやっと岩石地帯から抜け出した。そして礫地帯の街に彼らを降ろして行った。
それから少しするとやっと王都の城壁が見えてきた。
私達は関所を越えて王都の中に入って馬車を返し、西区の広場に向かいそこでルーシアと別れた。
私達はイーヤさんの自宅へと向かい、ビールを鳥舎へと戻し、家の中に入った。
中はイーヤさんが頼んでいた仲の良い友人に掃除をさせていた為、出る時よりも綺麗になっていた。
私達は旅の汚れを洗い流してから、私が夕飯を作り友人を入れた三人で夕飯を取ることにした。久しぶりの我が家で食べる食事は何とも言えない温かさに心が休まった。
イーヤさんはその友人と一緒に雑談を楽しんでいて、私は少し離れた場所にあったソファーに座って日記を書いていた。
それから少しして疲れがどっと来て私はソファーで眠ってしまった。
朝起きると私は自室のベットで寝ていた。その理由を朝食の準備をしていたイーヤさんに聞くと教えてくれた。
「白ちゃん、ソファーで寝ちゃうんだもん。体とか痛めたり、風邪ひいたら可哀想だから、あなたの部屋のベットに移したの。」
少し恥ずかしい様な嬉しい様な気分になった。
私達は朝食を済ませ、イーヤさんの友人を家まで送ったあと家に戻ると、そこにはどこかで見たことのある赤髪の少女が戸口の前に立っていた。




