VSジャイアント
ファシウス伯爵が私達を見つけ声を掛けて来た。
「おーい、早いじゃないか。」
「現場の下見よ、し、た、み。」
そう言うと私達は門から出て周囲を見渡した。周囲に広がるのは赤茶色の地面と少し背の低い木だけだった。
「結構開放的ね。これなら魔法も広範囲の物を使って一掃できそうね。」
そんなこんなで戦場の下見を終わらせた所にちょうど良く討伐隊の一人が来た。
「すみません、そろそろです。」
そう呼ばれて私達は作戦本部に呼ばれた。
作戦本部のテントに入ると中にはもう何人かの勇士が集まっていた。
「良し。全員揃ったな。今回の目標は巨大な蟻の魔物であるジャイアント、こいつらは女王の移動の護衛で女王であるクイーンジャイアントを討伐しない限り侵攻は止まらない。だから今回の作戦はこのクイーンジャイアントを討伐する。そこで遊撃隊はクイーンジャイアントの討伐に専念し、攻撃隊は遊撃隊の援護及びジャイアントの討伐、守備隊は攻撃が逃したジャイアントの討伐だ。部隊の構成は、、、」
そして作戦会議が終わり、私達は遊撃隊に配属された。
日が完全に沈みさっきまで見ていた場所は闇に包まれた。私は買ったばかりの鎧に身を包み腰に剣を下げて出撃の機会を伺っていた。周囲には剣以外にも槍やハルバード、両手剣、弓などの多種多様な武器が見えた。
少しすると土煙を上げながら蟻達がやって来た。それと同時に私達の部隊は進軍を始めた。
近くに来ると蟻達の大きさは高さだけで大人達の身長ほどだった。
私は蟻の足の関節に短剣を挿し込んで切り落とし少しはバランスを崩す様にはなった。
「この剣さえ使えれば、、、。」
そう思っていると部隊の中の一人が悲鳴を上げた。
「うわああああああ!」
そう言いながら剣を握った男の目線の先には蟻に頭を食われ力無く蟻の口にぶら下がっている男がいた。ジャイアントの甲殻は分厚く堅い為簡単に剣などが通らなかった。そして、その男も今食われそうになっていた。そこに一振りの剣が男を食おうとした蟻の首を切り落とした。
剣が飛んできた方を見ると弓を構えた男がいた。男は剣を取りにこっちに来ると突っ立ていた男に向かって。
「そんな事で一歩も動けなくなるんだったら。すぐに戻れ。無駄な犠牲だ。」
そう言うと男は剣を拾い腰の鞘にしまった。
私は他の仲間と一緒にジャイアントの波を切り開きながら、クイーンジャイアントを目指した。
一体ずつ丁寧に丁寧に倒してやっとの思いでクイーンジャイアントに辿り着いた。ジャイアントより二まわり回り大きい赤いジャイアントがいた、それこそがクイーンジャイアントだった。クイーンの背中に飛び乗ろうにも高すぎて乗ることはできなかった。そして、クイーンジャイアントの四方を守る様に緑色をしたソルジャージャイアントがクイーンジャイアントを囲み守護していた。
「攻撃隊はソルジャージャイアントを、遊撃隊隊はクイーンジャイアントを。」
と指示が入った。
私達はクイーンジャイアントを攻撃する為にソルジャーの隙間を縫ってクイーンに近づいた。私はクイーンの甲殻の隙間に剣を挿し込もうとするが甲殻の密度が高いクイーンに剣を挿し込むのは至難の技だった。その上、クイーンには分厚く鉄分を含んで熱の伝わりが悪い甲殻のせいで何の魔法も効かなかった。ただ、私達はクイーンの甲殻の隙間を狙う事にのみ専念した。
「前回、クイーンを倒しときってどうしたんですか。」
そう珍しい剣を握っているイーヤさんに聞いた。
「確か、前回は無理矢理甲殻の隙間に攻撃を入れて倒したわ。だけど、結構な人が犠牲になったわ。」
それを聞いてやるしかないと言う言葉と絶望が浮かんだ。私は腰に刺してあった黒い剣を抜き取り、それを甲殻の隙間に挿し込もうとしたが刺さらず、逆に足で吹き飛ばされてしまった。
なんとか起き上がり、イーヤさんの方を見るとソルジャーがイーヤさんを背後から狙っていた。イーヤさんはクイーンの方に意識を集中していたので気づいた様子はなかった。
「イーヤさん!後ろ!」
そう私が叫んでも聴こえている様子はなかった。私はイーヤさんを助ける為に全速力で走りジャイアントの顔面に剣で一撃を加えた。
ジャイアントはよろめき後ろに退いた。それに続く様にソルジャーを攻撃隊が囲んでソルジャーはその対処に専念しだした。
「助かったわ、白。その色じゃ刺さんないでしょうこれを使って。」
そう言うとイーヤさんは一本の剣を渡してきた。
私は右手に黒い剣、左手にイーヤさんがくれた剣を持ちクイーンに向かった。
慣れない双剣術に苦戦しながら黒い剣でクイーンの攻撃を受け流し、左手の剣を刺す隙を探した。
突如、ソルジャーがクイーンから距離を取り、クイーンは動きを止めて地面に魔法陣を展開した。
「皆、クイーンの近くに寄って。」
イーヤさんがそう叫ぶとそれを聞いた人達はクイーンに近づいた。
魔法陣が完成すると同時に地面から岩の棘が飛び出した。私とイーヤさんはなんとか避けることが出来たが数人が逃げ遅れて魔法の餌食にされた。私はこのクイーンが動けない隙に甲殻の隙間から攻撃しようとしたが隙間はうまく甲殻が重なっていて、矢一本も通さない程になっていた。
地面が隆起する轟音が止むとクイーンはまた動き出した。
私はその隙を利用してクイーンの関節部に剣を刺し風魔法を打ち込みクイーンの足を内側から爆破させた。そして、またその傷口に剣を刺し、また風魔法で爆発させた。クイーンの甲殻の一部が圧力に耐え切れず爆発し中の内臓がそこからあふれだしてクイーンはキュイー!と鳴き苦しみだした。
段々と動きが鈍くなって、命の灯が消えようとしているクイーンを見送るためにソルジャーたちが攻撃隊によってボロボロになった体を引きずりながらやってきた。そしてクイーンはソルジャーたちに見守られながら動かなくなった。また、ソルジャーたちも後を追うように段々と動かなくなっていった。
ソルジャーの最後の一匹が死んだのを確認すると私たちは歓喜の声を上げた。
「嬢ちゃん、そんな若いのによくクイーンジャイアントを倒したな。」
大人たちは私の周りを囲んでジャイアントの血にまみれた私に向かってそういった。
私は大人たちの壁の隙間を縫って抜け出した。クイーンの亡骸の近くに行くと剣を矢の代わりに使ってジャイアントを殺していた男がいた。男は私に気が付き質問してきた。
「英雄気分になって満足か。」
「いいえ、全然。本物の英雄ならばジャイアントも人も死なずに済んだ。私は力がないからジャイアントを殺すしかできなかった。」
「ふん、アンタも哀れだな。」
「いいや、ジャイアントたちに比べれば全然。」
そして、夜が明け地平線から現れた太陽がこの戦場を暖かく照らした。
私と男はこの戦場で命を散らした者たちに黙祷を捧げた。




