肩慣らし
次の日の朝、私達はまたアムニムス夫人の手料理をご馳走になった。
「ホントに、お客様が来ると沢山作れるから、嬉しいわ。」
そんな事を言う夫人に私は少し恥ずかしさを感じた。
朝食を済ませた私達をファシウスさんが呼んだ。
「すまない、急用だ。今、街の南門の方から魔物の大軍が押し寄せて来ていると報告を受けた、今晩討伐隊を編成するそうだ。」
「分かったわ、ありがとう。じゃあ、肩慣らしにちょっと付き合って貰ってもいいかしら。」
「八つ当たりの間違えだろ、いいだろう。」
そう言うと二人は庭に出て、互いに訓練用の剣を構えた。
「懐かしいな。」
「さあ、私にはさっぱり。白ちゃん審判を任せてもいいかしら、ルールは片方が降参するまで。」
私が上げた手を降ろすと同時に試合は始まった。イーヤさんが剣を持っているところなどが一切見たことがなかったので新鮮なワクワクがあった。
二人はお互いの間合いに入ると目にも留まらぬ速さで互いに剣をぶつけた。
「あっ、お父様やってらっしゃる。」
フェアリスがそう言いながらやって来た。
「ああ見えて、お父様昔イダリヤの警備隊の隊長やってたのよ。あれ単純に振っているだけの様に見えるけど、一回の攻撃の為に二、三個ぐらいの囮を入れてるんだって。イーヤさんはその倍らしいけど。」
しばらくすると二人は決着がつかないと思ったのか、いった距離を取った。
「やっぱり、少しも衰えを感じさせないわね。」
「いやいや、君に言われたくはないよ。」
二人は少し会話を挟んだあと、また接近戦を始めた。
カン!と言う音を立ててお互いの剣が後方に吹き飛んだ。
そのまま剣を取りに行くかと思ったが、二人は素手のまま互いに格闘を仕掛けた。最終的にはお互いに胸ぐらを掴み合い転げていた。
私はこのままじゃ収拾がつかないと思い、引き分けを宣言した。しかし、イーヤさん達はそれを無視して、未だに取っ組み合いを続けていた。するとそこにアムニムス夫人がやって来たので事の経緯を伝えると穏やかな顔のままアムニムス夫人は二人に近づいた。
「貴方達、審判の宣言が聴こえないの?結果は引き分け。」
「まだ、決着がついてない。」
そう駄々こねるイーヤさんに一言、「は?」と言うと二人は静かになった。
アムニムス夫人が去り際に。
「いい歳こいた大人が何やってんだか。」
そう呆れながら家の中に入って行った。
そして、二人が芝生で汚れた服を着替える為に家に入ろうとすると柱の裏側から運動ができる様な服に着替えたフェアリスが現れた。
「イーヤさん、一つ稽古をつけてくださらない。」
その手には訓練用の剣が握られていた。
まだ、やり足りなかったイーヤさんは快く承諾した。
「昔見たく手加減しないけど大丈夫かしら。」
「良いよ、こっちも本気で行くから。」
また、私が審判を務めた。ルールはさっきと異なり身体のどこかに当たれば勝ちと言うルールに変更した、理由はさっきの通りである。
試合が始まるとフェアリスはただ構えた状態を保っていた。
「こっちが先にやっていいのね、自信満々ね。」
イーヤさんが、芝生の上に土が舞うくらい強く地面を蹴り一撃でケリをつけようと切っ先をフェアリスに垂直に構えた。攻撃が当たったと同時に土煙が立った。土煙が落ち着くとそこにはただ悠然と立つ二人がいた。
「そう、さっきのは受け流す構えだったのね。じゃあ、我慢比べしましょう。私の体力が切れるか貴方がダウンするか。」
そう言うと、フェアリスにゆっくりと近付き間合いに入った途端イーヤさんは横に剣を振ったあと一瞬で切り返してまた切り返してを続けた。イーヤさんとフェアリスの剣がぶつかる時カン!カン!と鳴り響く程一撃一撃が重かった。突然、イーヤさんが一歩引いて、からフェアリスに向かって走り出し、フェアリスの目の前で飛び上がりフェアリスの背後に立ち腰に刃をゆっくりと当てた。それと同時に私は勝利の宣言をした。
「貴方に確かに受け流しの型はあっているけど実戦で使うなら、相手の攻撃の隙を大きくして、そこに攻撃を入れるって事しないと。」
「わかってても難しいんですよ。」
「まだやり足りないけど貴方もやる?」
そう、目の奥に戦闘狂の色をチラつかせながら私にいってきた。私は話題を変えようと装備の話をした。
「イーヤさん、そう言えば私もそろそろ防具が欲しくてこのあと見にいきません。」
「まあ、確かに白ちゃん用の鎧って見たことないけどなかったのね。いいわね。」
私達は夜に備える為に街一番の鍛冶屋に行った。
鍛冶屋の中には幾つもの武器や防具が並んでいた。その中でも私の目を引いたのは薄い金属板を曲げて作ってその真ん中に魔石が埋め込まれいるものだった。
それを眺めていると店の奥から野太い声の男性が話しかけてきた。
「嬢ちゃん、それが気になるのか、ライトアーマー良いよな、軽いが耐久力と防御力が無い、そこでだそいつは胸の所に防御魔法の魔石が埋め込まれていて値は張るがそいつはほぼ全身を覆う程の防護壁を張れるんだぜ。ちょっと着てみるか、そいつは嬢ちゃんぐらいの奴がよく買うから多分合うと思うぜ。」
そう言う事なのでお言葉に甘えて試着するとさっきまで暗い色をしていた魔石が突然淡く光出した。
「その光が消えると一時的に防御魔法が使えなくなるから気をつけてくれよ。まあ、一晩経てばまた使える様になるから安心しろ。」
私はそれを着たあと少し身体を動かしたがいつより少し動きづらいくらいだった。
「どうだい、気に入ったか。」
私は頭が飛ばんとするほど首を縦に振った。
「そりゃ良かった。」
するとイーヤさんが店の店主に話しかけた。
「相変わらず良いもの作ってるのね。」
「おう、イーヤどうよこのライトアーマーもうちょっと軽さを追求したかったがこんなとこにしかできなかったがな、ただ此処にある武具は全部良いもんだ。」
「どうする嬢ちゃん買ってくか。価格は金貨4枚だ。」
私は少し考えた後に腰に掛けて置いた巾着から金貨を4枚出した。
「毎度あり。」
用を済ませた私達は今回の防御拠点である南門に着いた、そこには一足先にファシウスさんが既に着いていた。




