1話
新章1話です。
「意外と距離があったな…」
僕は今、リーナさんが勧めてくれたカラブン草の採集に門から30分ほどの森へ来ている。
門の外に森があるのは、この森が広く、未だに拡大し続けているからだそうだ。 また、森には凶暴な生物が多く、迂闊に切り開くことが出来ないらしい。
「にしても、前より明らかに身体能力が上がっている…なんでなんだろう」
そんな疑問に答えが帰ってくるはずもなく、ただ草を集め始める。
この森、ガクナラス森林群は、上から見ると楕円形になっていて細くなっているところが海に接している。
奥へ行けば行くほど森が深くなり、熟練冒険者でも迷って出られなくなってしまうらしい。海に面してはいるが、他国から攻め入られることは無いそうだ。
「……なかなか見つからないな。」
森へ入ってから30分ほど、全くと言っていいほど見つからない。
「変だな、図鑑には森の手前にも生えてるって書いてあるのに全くないな。」
何かが生えていたあとが残っている上、他の特異な草が生えているのに、肝心のカラブン草が一切見つからない。
「奥に行ってみるか?」
獣等に襲われるくらいなら『影成』でどうとでもなるし、迷ってもしらみ潰しに動けば何とかなるはずだ。
《とりあえず『発動』してっと。なにか楽観的な思考になってる気がするな…まぁいいか。》
深く考えずに、森の奥へと進む。
キ--ン 「気づクかナ?分カるカな?」
「こッち来ルかな?彼は出来ルやツかな?」
「…なんだ?なにか聞こえたような?」
少し奥に進むだけで周りの景色がガラッと変わっている。木漏れ日の降り注いでいた居心地のよい雰囲気から一変、暗くジメジメしてバカでかい木々の乱立したろくな生物のいなそうな景色になっている。
「……この生態なら、逆に見つからない気がするな。戻るか。」
〜1時間後〜
「……迷った。」
明らかにおかしい。迷わないよう木に目印を付けながら奥へ入っていったはずなのに、全く無い。木が修復されたとか、そんな雰囲気ではない。「最初からなかった」ようでしかない。
《熟練冒険者も迷うはずだな。これなら地図が出来ていないのも納得がいく。》
キ--ン 「こっチだよコっち。こレるかナ?」
「またなにか聞こえたか?」
疲れてきたからな。幻聴が聞こえても無理は無い。
「それにしても、食料と水が無くなってきたな。無くなっても支障は無さそうだが気にすると欲しくなってしまうな。」
ジメジメしているクセに一切飲めるような水が見当たらない。食べるものも明らかに毒がありそうなキノコやよく分からない曲がった草しか生えていない。幸い縄張りの外なのか獣等には出会ってはいないが油断はできない。『影成』の効果もどこまで信用できるかも分からないしな。
キ--ン「まダ分からナいの?こっチだよ。」
「誘ウのも飽キてくるサ。『早くおいで。』」
《まただ。なんなんだこの声は?疲れから来る幻聴か?》
自然と足が声のする方へ向かう。
感覚としては、森の奥へ。
カタカナの固有名詞は主人公に聞こえているものをそのまま文字に起こした情報で、正確な名前は別にあります。
今までの名前も。
7/17追記
最後のセリフ部分に『』追加してます。
7/24追記
最後のセリフ部分の『』 の中身を修正しました。設定ミスです。