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31 試験ー6

リアムさんが頬を膨らませてモニターの画面を見つめる。

「む~。あの二人すっごく仲良さそう。僕ちょっとやきもち焼く!」


やはり、リアムさんは琉人さんが好きなようだ。完全な三角関係になっている。


後で喧嘩にならないといいのだが。二人が喧嘩するなど、考えても恐ろしい。


なんだか二人とも強そうなのだ。雰囲気というか気配というか……


僕は少しでも喧嘩になるのを防ぐために、慌てて話題を変える。



「それにしても、結局力技で解決しちゃいましたね。良かったんですか?」


リアムさんはさっきモニター越しに機械をいろいろと操作してあのコンパスと磁石を置いていた。

それなのに結局、琉人さんがいつも通りの異常な破壊力で扉を粉々にしていた。


「うーん。別にそれはいいかな。正直、あの部屋を破壊してくれるなら、それでよかったし」


「……どういうことですか?」


「まだ秘密かな。古都は嘘が下手だから。なんだかいろいろとばらしちゃいそうだもん」


「もしかして……また何か企んでいるんですか?」

これ以上変な暴走はやめてほしくて、僕は少しリアムさんを睨む。


「別に何も企んでいないよ? 信用ないなぁ」


「これ以上変な暴走を始めたら、全力で止めますからね」

僕は釘をさしておく。だが、それぐらいでリアムさんの暴走は止められなかったようだ。

「え~。古都にもいろいろと協力してもらいたかったんだけど」


「ダメですよ。協力なんて絶対しませんから」

しっかりと断ればリアムさんも引き下がってくれると思ったが、そんなこともなかった。リアムさんはむしろ楽しそうに微笑んでいた。これは絶対に勝ちを確信している時の笑みだ。

「そういえばこの前、古都に友達になってほしいって約束したよね」

「……はい。しましたけど」


なんだか嫌な予感がする。


「僕、友達とやってみたかったことが三つあるともいったでしょ?」


すごく嫌な予感がする。


「僕、友達と配信とかしてみるのが夢だったんだよね~」

物凄く嫌な予感がする。


「確か古都、僕の親に会わせてほしいって言ってたよね?……僕のお願い、聞いてくれる?」

「……はい。分かりましたよ......」

僕は肩を落として言った。


「やったあ。嬉しい!」

リアムさんは嬉しそうに僕の手を握った。一方、僕はため息をついた。

やはり、リアムさんの暴走は止められないようだ。


「はぁ。まったく、何をすればいいんですか?」

「それは後で言うよ。今はまだ大丈夫」

やはり何かを企んでいたようだ。僕は再びため息をつく。


するとその直後、部屋の扉がギーっと開いて誰かが入って来た。


「うわぁ。誰ですか?」


 部屋に入って来た彼は、青みがかった銀色の髪をしていて、長い髪を一つに束ねていた。背の高さは僕より数センチほど高いだろう。年齢も恐らく僕と近いと考えられる。何となく、雰囲気がリアムさんに似ているような気もする。


「リアムか。久しぶりだな。何を企んでいる?」


(うん。まぁ。そうなりますよね)僕は心の中で相槌を打った。リアムさんは本当に何を企んでいるのか全く分からないところがあるのだ。問い詰めたくもなるだろう。


(だけど、リアムさんは友達ですから。ここはちゃんと庇った方がいいですよね?)


僕はそう思い、リアムさんを庇う形で前に出た。


「誰ですか? リアムさんに近づかないでください」


「お前こそ誰だ。と言いたくなるところだが。まあいい。リアムよりは話が通じそうだからな」


彼はそう言い、僕をまっすぐと見た。睨んだと言った方が正しいかもしれない。


「お前らは従事試験の最中に何をしている。勝手にもほどがあるだろう」


(まあ、それもそうですよね)

正論すぎる意見だ。本当にその通りだと思う。



「急に帰って来て何がしたいのかと思えば、何をしているんだ。お前は昔からそういう勝手なところが困る」

なんと、この二人は昔からの知り合いだそうだ。


「あの、お二人はどのような関係なのでしょうか?」僕はピンと手を上げて聞いた。


「それは……今聞くことなのか?」彼は呆れた声で言った。


彼は答えてくれなかったので、代わりに後ろにいるリアムさんが答えてくれた。

「彼は僕の従兄だよ。会うのはこれで二回目かな?」


「二回目? ずいぶんと少なくないですか?」


「ああ。こいつは基本的に部屋から閉じこもって出てこないような奴だったからな」


「僕が部屋から出られなくなったのは誰のせいだと思ってるのかな?」

リアムさんは彼を睨む。


 すると彼は顔をしかめて視線を逸らした。


「何かあったんですか?」


 聞くところによると、リアムさんの異能力は今は少しは制御できるものの、昔は無意識に出てしまっていたらしい。


 けれど、能力値が高い人、つまりは体内の血液などに含まれる異能力を使うためのエネルギーが多い人はリアムさんの異能力にも少しは耐性があり、倒れたりはしないようだ。


 もちろん、悪江家の一族は異能力の強い者ばかりだ。だからリアムさんの異能力が無意識のうちに暴走させても大して被害は出なかったそうだ。


 けれど、リアムさんが従兄の彪雅と初めて対面した時にリアムさんの能力が少し暴走してしまい、まだ幼くて異能が十分に使えなかった彪雅が気絶をして倒れてしまったそうだ。リアムさんは久しぶりに外出を許可されて興奮していたためだと思われるが、それからはリアムさんの異能は危険視されるようになってしまったそうだ。


 それ以来リアムさんは閉じ込められるように部屋に隔離され、ずっと一人で過ごすことになったという。


「ああ。なるほど。それはお気の毒に」


「でしょ? 僕、本当に可哀想だと思わない? そんな理由で部屋に閉じ込められたんだよ⁉」

リアムさんは僕の方を見て言った。同意を求められても困る。


すると彪雅さんも負けじと反論を始める。


「可哀想なのは失神した俺の方だろう。お前が異能を暴走させたせいで、俺は一か月間も病院送りになったんだぞ! それにお前は俺のせいで部屋に隔離されたと言っていたが、恐らくお前が変な暴走したり、変なことばかり始めるからそんなことになったんだからな!」


二人は謎の口論を始めてしまった。


「落ち着いてください!」

といい、止めようと試みるも全く落ち着いてくれそうにもない。人のことを聞かずに暴走を始めるところなど、本当にそっくりだと思う。

悪江家の一族は全員こうなのだろうか?



「今の話で分かっただろう。いつも暴走ばかりしているのはリアムだ」

彪雅さんはこっちを見て同意を求めてくる。

だが、正直どっちでもいい。


「取り敢えず、リアムさんが暴走は昔からずっと続いていることは分かりました」


「ああ。さらに言うなら、リアムの暴走は早く食い止めなければいつも大事になる。今回もそうだ。」


「今回も? ですか? 確かに試験のルールを勝手に決めるとか変なことをしていますけれど……」


「いや。一番まずいことはそこではない。今、受験者たちがいるのは悪江家の屋敷のさらに下。悪江家の最重要機密の一つ、地下監獄だ。部外者に簡単に見せていいものではないだろう?」


「地下牢獄? なんですか、それは?」


すると、部屋の空気が数度下がったような気がした。


誰も、何も答えなかった。


しばらくしてリアムさんが口を開いた。


「地下牢獄は、この国の裏側に位置する裏社会ののさらに裏側、簡単に一言で表すのなら、......奈落の底だ」

リアムさんは、やっぱりまだ微笑んでいた。

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