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02 監獄

 次の日の朝。


 僕は琉人さんと一緒に朝ご飯を食べていた。


「昨日のあれ、どういう意味だったんでしょうか。」


 僕はソーセージに勢いよく食いついた。

「お前まだそんなこと考えてたのか。忘れろ。」


 話している内容は昨日、綾という人が言っていた言葉についてだ。


(お互い死なないように気を付けよう)彼女はそう言っていた。


 それはつまり、彼女は死と隣合わせだということだろうか。

 そんなことを考えながら僕は葡萄の粒を口に放り込んだ。


「お前、さっきから物凄い量食べてないか?」

「五年間も寝ていたからおなかが空いているだと思います。」


「ああ、なるほどな。」

 琉人さんが呆れた声で言った。


 ここの食事はバイキング形式になっている。全員が全員好きなものを好きなだけ食べている。

 今日の朝ご飯は、パンやケーキ、卵焼きやベーコンなどだ。


「それにしても、監獄にしてはおいしい料理が食べれるんですね。」


 食事は一日三食ついてくる。牢屋の中で出るにしては豪華だ。それに、食事は運ばれてくるのではなく、食堂のような場所でみんなで食べる。


 それと、琉人さんの言っていたように、みんな足についた鎖を砕いていた。砕いても次の夜には新しい鎖をつけられるので、まったく問題ないのだそうだ。


 監獄にしては自由すぎると感じたのは僕だけだろうか。


「まあ、ここにこれるやつは大体が金持ちだからな。ここなら食事も三食ついてくるし、強力な結界が張ってある。外とは比較できないほど安全だ。わざわざ金を出して入ったやつだっていたぐらいだ。」


「へえ~。そうなんですか。じゃあ、ここにいる全員が全員何か罪を犯してここに入れられたわけじゃないんですね。」


「ああ、むしろお前みたいに本当の犯罪者の方が少ないぐらいだ。」


「それなら、琉人さんも何か犯罪をしてここに入ったわけじゃないってことですか? 家族の事情だと言っていましたけれど。」


 すると琉人さんは少し俯いた。


「……いろいろあったからな。」


「あ、すみません、無理に聞いてしまって。」


 琉人さんは食器を片して食堂を出た。僕は慌てて追いかける。この監獄はとてつもなく広いので一度琉人さんを見失うと本当に部屋まで戻れなくなりそうだ。


 監獄の廊下は空気が重苦しくて、朝なのに光が一切ない。小さな蝋燭の光だけがただ不気味に光っていた。

 琉人さんは重い空気を吸い込むと、ゆっくりと話し始めた。


「俺がここに来た理由は、罪を償うためだ。」


「罪、ですか?」


「ああ。……たくさん殺したからな。親に言われたことだとしても、許されるようなことじゃないだろ?」

 そう言って、彼は自分の掌を見つめた。その手に蝋燭の光が、ゆらゆらと揺れた。


「……ごめんなさい。」

 すると琉人さんは僕を見て、不思議そうな顔をした。


「……何がだ?」

「僕なんかが聞いていい話じゃなかったですよね。」


「いや、別に構わない。俺が勝手に話しただけだ。でも、少し気持ちが楽になった気がする。……ありがとう、古都。」


 歩いているうちにいつのまにか部屋に戻ってきていた。


 部屋には窓がついていて、朝日がちょうど昇ってきていた。


 やっと琉人さんの顔が見えた。

 彼は小さく微笑んでいるのが分かった。


 少しでも元気が出たのなら良かったのだろう。


「……はい。」

 だから僕も小さく微笑んだ。

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