23 「自分」だった頃 中
瑠空の体になってから一週間ほどたった。
自分はまだ、瑠空がもういないという現実を受け止められないでいた。
そんな時、彼女が来た。
「あの、すみません。うちの子を見ていませんか?」
部屋の外から声が聞こえてきた。
「子供? どんな子ですか?」
部屋の外で待機している護衛…正確には自分の「監視」が返事をした。
「あの、青い髪に虹色の目をした子供です。」
恐らく瑠空のことだろう。つまり、この人は瑠空の母親ということか。
何度か、瑠空の迎えに来ていたことを思い出した。
「さあ? 知りませんが。」
この護衛はずっと部屋の前で自分を監視している。
知らないわけがないだろうから、父に彼女のことを話してはならないと言われているといったところか。
すると、彼女は絶望したように泣き始めた。部屋の中からでも声が聞こえてくるほどだった。
「どうしたのですか⁉」
護衛は慌てたような声を出した。
まさか急に泣き出すとは思わなかったのだろう。
「り、瑠空、ごめんなさい。私が仕事のことばかりでちゃんとかまってあげられなかったから……」
外から何かが倒れるような音がした。きっと彼女が崩れ落ちたのだろう。
「あ……少々お待ちください。何か拭く物を持ってまいりますから」
護衛はなんと声をかければいいのか分からなかったのか、静かに部屋を離れていった。
外は静かになったが、彼女の泣き声はまだ廊下に響いていた。
なんだか心配になり、部屋の扉を小さく開け、彼女を見た。
彼女は瑠空にそっくりな青い髪に、藍色の目をしていた。
(瑠空にそっくり……)
彼女を見ながら、いつの間にかそう思っていた。
(……ごめんなさい。)瑠空が死んだのは自分のせい。それは間違えようのない事実だった。
それなのに後悔するより先に、ある感情が出てきてしまった。
(羨ましい……)
自分は瑠空のように家族に大切にされたことがなかったからだ。
家族に心配されている瑠空が羨ましいと思ってしまったのだ。
そんな感情、持ってはいけないことは分かっていた。
分かっていたのに……
その瞬間、自分の頭の中に、ある提案がよぎった。
絶対にしてはいけないことだった。
けれど、それは自分にとってあまりにも魅力的な提案だった。




