15「何か」
「誰だ、お前」
琉人は確かにそう言っていた。…どういうことだろうか?
「おい、何を言う? 琉人。どういうことだ?」
「どういうことも何も、そのまんまの意味だ。…だれだ、お前。古都じゃないだろ。」
私は慌てて古都を見る。
声も顔も服もどこからみても古都だ。
「…なんでそう思ったんですか?」
古都が聞く。
「古都は俺のことを〈琉人さん〉と呼ぶ。お前は琉人と呼び捨てで呼んでいただろ。そもそもしゃべり方や口調、歩き方ですぐに分かる。……もう一度聞くが、だれだ?お前。」
古都は何も言わなかった。
「いや、別に急に呼び方が変わることだってあるだろう。」
そもそも、姿どころか魔力の質だってそのままだ。
さすがにこれで別人なわけがない。私は慌てて古都を援護する。
だが、古都の顔を見た途端、私の意見は覆された。
古都は笑っていたのだ。それも、私たちを見て楽しむような笑みを浮かべていた。
古都なら絶対に見せないような顔だった。
私は異様な雰囲気を感じて、一歩後ろに下がる。
「あ~あ。演技は得意な方なんだけど。」
その瞬間、私たちの体が水に浮かんだ。
急に現れた大量の水に飲みこまれる。
そして、水の中に魚が現れる。
「魚⁉」
空中に五メートルを超える巨大な魚が何匹も現れて、私たちを取り囲んだ。
ギョロっと目がこちらを向く。
「動かないで。君たちを殺すつもりはないから。ついて来て欲しいだけ。」
「ついて来て欲しいだと? どこにだ?」
「さっき言ったでしょ? 隠れ家を用意したから一緒に来て。」
「信用できるか! その前に古都に何をしたか言え。」
「別に信用できないならそれでいいけど、僕を殺すつもりならやめておいた方がいいよ。古都が返ってこなくなるから。」
「どういう意味だ?」
「う~ん。そーだな~。僕について来てくれたら、話してもいいよ。」
「分かった。ついていく。」
琉人が睨みながら言った。
それを聞いて、〈古都の姿をした何か〉は嬉しそうに微笑んでいた。




