14 誰?
私たちは悪江家の屋敷の近くまでたどり着いていた。
とはいっても、古都につけられた発信機では正確な居場所は分からない。
悪江家と言っても庭だけで3000坪はあるだろう。そこから古都を探し出すのはかなり至難の技だ。
「それにしても琉人、本当にこっちの道であっているのか?」
「…。」
「まるで道を知っているような歩き方だが。」
「…。」
彼は私の言っている言葉など気にせずに、スタスタと歩いていく。
「もしかして、悪江家の屋敷に言ったことがあるのか?」
「…。」
「おい、聞いているのか?」
「…。」
「返事をしろ。」
「…。」
やはり返事は返ってこなかった。
先ほど私が—古都は悪江家の屋敷にいる—と言ってから琉人の様子がおかしい。
私の言うことを聞かずに勝手に歩いていく。
悪江家のことを知っているのだろうか。
裏社会の出身だと言っていたが、それに何か関係があるのだろうか。
そんなことを考えていると、琉人は急に足を止めた。
「どうしたのだ?」琉人の顔色を窺うと、彼は目の前にある一つの建物を見つめていた。
「ここが、悪江家の屋敷か。」私は屋敷を眺めながらいった。
琉人は睨むようにして建物を見つめていた。
その建物は石膏により重厚な雰囲気を発していて、どこか古いように見えるが驚くほど白く、そして薄暗い。私はゴクッと息を飲んでその建物に入ろうとした。
「どこ行こうとしてんだ? お前。」
琉人が私の首根っこを掴んで引き戻す。
「えっ? ここが悪江家の屋敷じゃないのか?」
「違う。ここだ。」
琉人は後ろに見える海を指さした。
「は???」
琉人は海に向かって歩きだす。
「おい! どこにいくんだ? びしょ濡れになるぞ!」
だが、琉人が水の中に入っていくことはなかった。
琉人の体が水の上に浮かんだからだ。
「はぇ?」
「琉人はそのまま歩いていく。」
「なんだこれ? ガラス?」
海の上を覆いかぶせるようにガラスが張られていることに気が付いた。
私は慌てて琉人を追って走ってゆく。
「このあたりか。」琉人は地面のガラスをたたく。
「どうした?」
「ここが入口だ。知っているかもしれないが、悪江家は世界四大犯罪組織の一つを束ねている、マフィアの一族だ。中に入ったら何があるか分からないから覚悟しとけ。」
「ああ。分かった。」私はごくりと唾をのんだ。
琉人が扉を開く。
扉が音を立てて開くのと中から人が出てくるのは同時だった。
「古都⁉」
「あ! 良かったです。無事だったんですね二人とも。目が覚めたら二人ともいなくてびっくりしたんですよ。」
「…ああ。」
琉人が小さく頷く。
「じゃあ行きましょう。」
その言葉を聞いて、琉人が訝しげな表情を浮かべた。
「…どこにだ?」
「えっ? ああ。琉人にはまだいってなかったけれど、いい隠れ家を見つけたんですよ。今日はそこに止まっていきましょう。」
「おお、もう隠れ家を見つけたのか。すごいな。」
私は古都を追って歩いていく。
だが、そこで私は気づいた。
琉人が後ろをついて来ていないことに。
「どうしたのだ? 琉人。」
琉人は数歩後ろの海の上で止まっていた。
その目は、古都を睨んでいるように見えた。
彼は口を開いて言った。
「誰だ、お前。」
この続きは今日の夜…にたぶん書き終わります。(書き終わらなかったら申し訳ありません。)




