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13 側近

「災難でしたね。」

髪を一つに結んだ女性が心配そうに僕の方を見た。

裏夢という人の側近だそうだ。ちなみに、名前は花柳というそうだ。

「いえ、別に大丈夫です。」

彼女は僕に食事を運んできてくれた。

 僕はそれを受け取って口に頬張る。

「お坊ちゃまときたら、絶対に友達を作るって言って。聞かなくて。」

僕は先ほど、悪江裏夢という人に勝手に友達認定された。

当の本人はというと、友達ができたとスキップしながらどこかに嬉しそうに走っていった。

「…にしても不思議な子供ですよね。」

「ああ見えて、十五歳なんですけどね。」

「えっ、そうなんですか。」

彼(彼女?) はどう見ても子供だ。僕は9歳ぐらいなのかと思っていた。

「それならあの恰好はまずくないですか?」

「そうですね……。いくら言っても聞かなくて。」

彼女は水着とドレスを合わせたような恰好をしている。見ているこっちが寒くなってくるような恰好だ。何より、十五歳にしては子供すぎる恰好だろう。

「あの恰好、どう見ても寒そうなんですけれど。なんだかこの部屋、なんか海の中にいるんじゃないかってなるぐらい寒いですから。」

「実際にここは水の中ですからねぇ。」

「えっ。そうなんですか?」

「知らなかったのですか? 裏夢様の異能〈水族館(aqueriam)〉は水と魚とガラスを作ることができます。水の中にいる感じはしないのに、いつの間にか溺れるため密室空間では最強です。誰もが異能に気づくより前に死に至ります。」

 そういわれてやっと納得がいった。さっき泳いでいた魚は異能で作られたものだったのか。

「なるほど、さっき溺れかけたのはそういうことだったんですか。」

僕は小さく手を打った。

「そうですね。というよりあなたはなんで生きているのでしょうか。裏夢様の異能を受けて生きている人なんて初めてです。」

「僕に聞かれても困りますよ。最初の方は結構息が苦しかったんですけれど、慣れてきたのかもう大丈夫です。それに…あなただって生きてるじゃないですか。」


彼女だって生きているではないか。

そう思ったが彼女は小さく目をそらしただけでこちらを見ようとはしなかった。

どうしたのかと聞こうとすると、隣から声が聞こえてきた。裏夢さんだ。

「なにを話してるの?」

「いま裏夢さんの異能について話をしていて。」


「…? 誰と?」彼女は不思議そうに首を傾げた。

「え? ですからこの方と。」


僕は後ろを振り向いた。だが、そこにもう先ほどの女性はいなくなっていた。

「あれっ? さっきまでここにいたんですけれど。」


「君、本当に変わってるね。」

裏夢さんは呆れたように笑った。


「ねえねえ。僕、お願いがあるんだけど。」

「はぁ。何でしょう?」

裏夢さんは目をキラキラさせてこっちを見る。


「僕、友達と一緒にやってみたいことが三つあるんだよね。全部叶えてくれたら、なんでもお願いを聞くよ。」


「それって、裏夢さんのご両親に合わせてくれるということですか?」

「うん。構わないよ。」


「分かりました。なんでも言ってください。」

すると裏夢さんは謎めいた笑みを浮かべた。

まるで何かいたずらを考えた時のような楽しそうな顔だった。


「じゃあ一つ目—」

裏夢さんは僕の耳に小さくささやいた。

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