■ 序章
青い空が、ただ漠然と広がっていた。
風が吹くたびに、まるで記憶を搔き乱すように髪が揺れる。
「行ってくるね、✕✕」
こうなることは前から知っていたのに。
胸に込み上げてくるこの虚しさは一体なんなのだろう。
扉から後ろ向きに倒れこむようにして外へ出た。
風が前身にあたって心地よかった。
地面との距離が近くなっていった。
さっきまで乗っていた飛行機に向けて手を伸ばした。
手なんて届くわけなかったのに。
「ごめんなさい。」
最後に小さく呟いた。
その声は誰の耳にも届かずに風の中に消えていった。
空が赤く染まった。
体が熱い。
街が炎に包まれた。
ただ、春の夜のような冷たい寂しさだけが、心に虚しく残って、消えていった。
少しずつ、何もかも感じなくなっていた。
寂しさも
痛みも
虚しさも
時間が過ぎていくことと同じ事だった。
時間さえも感じなくなった時、すべてが暗闇に包まれていた。
◇◇◇◇
西暦二千五十三年 ある都市でテロが起きた。
半径二十キロ以内のものはすべて吹き飛び、後には瓦礫だけが残った。
負傷者二百万人
その中心部に倒れていた少年には、不思議なことに傷一つもなかった。
彼はまるで何もなかったかのように、ただ眠るように倒れていた。
少年は監獄に入れられた。
薄暗くて、冷たい檻の中。
時間という概念すら存在しないような静寂だけが、周囲を取り巻いていた。
そして、五年もの月日が過ぎる。
薄暗い部屋で、一人の少年が目を覚ました。
「ここ、どこ?」




