■ 序章
今日から二作品同時に投稿することにしました。
この話とは別に、異世界転生させられた子供を拾ったら、世界最強の魔術師になりました。という話も書いているので読んでいただけたら嬉しいです。
青い空が、どこまでも広がっていた。
どこかから風が吹いてきて、俺の髪がなびいていた。
「行ってくるね。」僕は彼女に言った。彼女とはもう会えない。
そんなことは前から知っていたのに。
胸にこみ上げてくるこの虚しさはなんなんだろう。
扉から後ろ向きに倒れこむようにして外へ出た。
風が前身にあたって心地よかった。
地面との距離が近くなっていった。
さっきまで乗っていた飛行機に向けて手を伸ばした。
手なんて届くわけなかったのに。
最後に小さくつぶやいた。
その声は誰の耳にも届かずに風の中に消えていった。
空が赤く染まった。
体が熱い。
街が炎に包まれた。
ただ、春の夜のような冷たい寂しさだけが、心にむなしく残って、消えていった。
少しずつ、何もかも感じなくなっていた。
寂しさも
痛みも
虚しさも
時間が過ぎていくことと同じ事だった。
時間さえも感じなくなった時、すべてが暗闇に包まれていた。
二千五十三年 ある都市でテロが起きた。
半径二十キロ以内のものはすべて吹き飛び、後には瓦礫だけが残った。
負傷者二百万人
世界最高規模のテロだった。テロを起こした少年には、微かに息があった。
彼は、監獄に入れられた。意識はほとんど失いかけていた。