2-3 「やあ」
学校以外の場所に居ると、視線が付いて回る気がした。
常に見られている様な錯覚。
被害妄想なのか、それとも本当にストーカーが居るのか。
図書館で出会ったあの男が、そんなに変質的には思えない。アイツではなかったのだろうか。
頬杖を付いて考えていると、映画の話題で盛り上がっていたクラスメイトに声を掛けられた。
「気分でも悪いのか?」
「ああ、違うけど」
一人で居ると視線を気にし過ぎるのだと思い、滅多に乗らない誘いに乗って、学校帰りにクラスメイトと街を歩き、ファーストフード店に入ったところだった。
「何」
「いや、あのさ」
自分の事を人に話すのは余り好きではない。好きじゃないというか、実は話す機会がないだけなんだけど。
でも今は自分でも驚く程、実は視線に参っているのかもしれない。いつもだったら絶対口にしないのに、最近視線を感じるんだ、と呟く。
「何ソレ。男?女?」
解らない、と答えた。
きっと女だ、ストーカーじゃねえのという話から、以前こういうストーカードラマがあったよな、という話題に発展していく。ストーカーは思い込みが激しく、会った事もないのに恋人だと勘違いしているのがパターンらしい、という話をぼんやりと聞く。
別に心配して欲しいわけじゃなかったし、笑い話にしたかったわけでもないけど。
こういう風に話題になると、自分自身感じている視線が、気のせいではないかと思ってしまう。
とても非現実的な悩みの様に思う。
じゃあ又。気を付けろよと声を掛け合い、帰路に着く。
まだ十六時を過ぎたばかりなので日も高い。
公園をぶらりとしてから帰るか、と鞄を持ち直したところで、いつもの視線を感じた。恨みを持ったような視線でも、愛のこもった熱い視線でもないような気がする。粘着質な感じはしない。
でも見られていて気持ちの良いものではないのだ。
俺は思い切って振り返る。
車道を挟んだ反対側の歩道に目を走らせても、こちらを見ている人影はない。
「何なんだよ」
小さく呟き、公園へと足を向ける。
言いたい事があれば言えば良い。黙って見詰めてるだけでは、相手に何も伝わらないぞ。
まるで呪文の様に呟き、公園を横切る。
学生服のカップルが語り合うのが目に入り、ふと進路から視線をずらしたその瞬間、あの視線を感じた。
ハッとして思わず足が止まる。
視線はいつも後ろからだった。
いつも視線を確認してやろうと思う時は斜め後ろを振り返っていた様に思う。
それが今、前方から注がれている。
緊張して鼓動が速くなった。
息を吸って素早く吐き、視線を進路に戻す。俺がいつも途中休憩する特等席。公園の中央に位置するベンチに、人影がある。
その人物は膝に肘を乗せて、少し前屈みになり口元で手を組んでいる。
そして、俺を見ている。
目が、合った。
アイツだ。図書館で会った、あの。
俺は男に視線を固定したまま、止まっていた足を動かし、ゆっくりと近付く。
俺と男の距離が五メートル程になった時、男は身を起こし、のんびりとした動作で左手を上げ、やあ、と言った。




