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Everlasting...  作者: たけうちなる


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18/26

2-12 俺の傍に居てよ

 

 如月を受け入れてから、俺は変わった。

 如月も変わった。

 嘘か本当か解らないような、茶化した返答が無くなった。

 にっこり笑うのではなく、穏やかに口元を緩める笑みを見せるようになった。


 俺は学校へ行く。その間彼が何をしているのかは訊いていない。でも下校の時には必ず現れて、一緒に買い物をして一緒に俺の家に帰る。

 不意にキスをされたり、俺の方がそっと彼の手を握る事もあった。

 自分でも信じられないくらいに、そういうほんの少しの触れ合いが嬉しかった。


 血も、拒む事はない。

 俺を求めてくれる事が嬉しかった。


 彼はあの日の事を何度も口にした。喉の渇きが押さえられなくて理性を失ってしまった、とすまなそうに何度も言う。

「ああやって、有無を言わせない状態でさっさと吸ってしまえば楽じゃない」

 さらりと言う俺に、彼が目を泳がせて言った言葉。

「ストーカーやってる間に、惚れちゃったみたい」

 随分笑ってしまい、彼は長い間拗ねていた。彼は俺を想う事により、他の血を絶っていたのだそうな。


「どうしても秋の血が欲しいからその願掛けと。何て言うか、浮気したくなかったから」

 俺の気持ちが如月に向いているかなんて知りもしなかったくせに、如月はそんな事を言った。

 俺は素直に、嬉しかった。



 手を握る。寄り添う。キスをする。如月が傍に居る。

 小学生や中学生の頃に、密かに想う子は居た。でも想いを告げた事は無かったし、告げようと思った事もなかった。

 全てを曝け出せない上辺だけの友達と、俺を育てる為に一生懸命な母親。

 俺の周りに居るのはその二種類の人間だけだった。


 如月の様な存在は、今迄に居た事がない。

 母親以外に俺を真っ直ぐに見て、好きだと言ってくれる人は居なかった。

 初めての経験だから溺れているんだと、そんな風に言われたくはない。

 並んで座り、彼にもたれ掛かる。こんなに近くに居るのに、涙が出そうになるくらい切ない。

 この気持ちはそんな風に片付けられるものではないんだ。



「如月と同じになれないかな」

 彼の耳に届かなければ、流してしまおうとした呟きだった。

 え、とこちらを振り向いた彼の瞳は、驚きと恐れが入り混じっていた。

「冗談じゃないよ」

「秋」

「居なくなってしまいそうな気がする」

 如月の手を取る。両手で彼の手を包む。

「俺には、誰も居ないから」

 ぴくんと、俺の手の中で、如月の手が動く。如月しか居ないんだと言葉を続ける。

「俺の傍に居てよ」


 長い間があった。

 言うべきではなかったのかと、後悔し出した時、彼の身体が動いた。

 空いている手でテレビを消す。部屋が静寂に包まれる。

 俺の手の中にあった如月の手が動き、俺の手を握る。

 はっとして振り仰ぐと、俺を見下ろした如月の口が動いた。

 血を、と。


「血?」

 飲みたいのかと思った。でもそれは違った。

 如月は一瞬目を逸らし、顔を歪めた。迷っているのは明かだった。

「言って」

 握り締める手に力を込める。飲むんだ。唇を見ていないと解らない程の、小さな擦れた声。

「誰が」

「秋が」

「誰の」

「俺、の」

「血を?」

 如月は頷く。俺はそうだったから。如月はそう続けた。

 俺の中に迷いは無かった。即座に言った。飲むよ、と。

 手を放し、彼の首へと腕を回す。ぎゅっと抱き付くと、背中に彼の腕が回された。

「ずっと傍に居る」

 お互いの声が重なって、相性ピッタリ、と二人で微笑み合った。



お読み頂き有難うございました。


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