表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Everlasting...  作者: たけうちなる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/26

2-10 多分、ずっとそう思ってた

 

 火事場の馬鹿力とはよく言ったものだ。

 二十センチも身長の違う如月を、この俺がよく背負って家まで帰って来れたものだと思う。

 ハイツの階段を二階まで上がるのはかなり大変だっただろうとまるで他人事の様に感じる。


 ベットに運んだ如月の靴を脱がして、玄関へと持って行く。

 前屈みになり腕を伸ばして靴を置く。腕や太腿の筋肉がぴくぴくと震えている。

 腕を揉みながら部屋へと戻ると、仰向けに転がった如月の腕が動いているのが見えた。

 腕を額に被せている。


「気が付いた?」

 足早にベットの側に行き、顔を覗き込む。彼は手の甲を額に当て、閉じていた目をゆっくりと開ける。

 秋、と呟きが漏れた。

 ベットの脇にすとんと腰を下ろし、息を吐く。安堵の溜息だ。

 如月は暫く放心していたけど、段々状況を理解した様子だった。

「そっか、俺」

 起き上がりかけた如月の胸に手を当て、そっと押し戻す。

 俺が言葉を発する前に、やはり身体が重いのか、彼は起き上がる事を諦めて、枕に頭を戻した。


「ごめん」

 彼の胸に手を置いたまま、俺は言った。

「信じてなかったわけじゃないんだ。ただやっぱり、ちょっと、怖くて」

 彼に見詰められて、視線を逸らす。もう一度ごめんと呟く。

 不意に彼の胸が動き、肘を突き如月はゆっくりと起き上がる。今度は止める間もなく、彼は身を起こした。

「俺の方こそ悪かったと思ってる。ちょっと茶化し過ぎた」

 胸に置いていた手の置き場に迷い、軽く握って退こうとした時、手を取られた。

 ハッとして彼を見ると、彼も俺を見詰めていて。

 きゅっと彼の手に力が入り、俺は無意識に握り返していた。



「如月なら」

 胸が痛む。自分でもこの気持ちをどの感情に当てはめて良いのか解らなかった。

 でもやっと彼の本当の姿を見たと思った途端、気持ちが溢れてしまったのかもしれない。

 昨日迄の、一緒に居る時の楽しさや安堵感とは違う、味わった事がない切なさ。

「如月なら良いんだ。多分、ずっとそう思ってた」

 彼の手から自分の手を退き、彼の二の腕を掴む。

 さあ来い、と睨む様に彼の目を覗き込んだ。一瞬戸惑いの表情を見せた彼は、良いのか、と訊く。

 俺は無言で目を閉じる。


 目を閉じていても、自分に影が重なるのは解る。

 掴んでいる腕の角度で、彼の動きが解る。

 肩を掴まれた。ふっと耳に彼の髪の毛が当たる。

 鼓動が速くなるのはどうしようもない。

 首筋に息が掛かり、俺は痛みに備えて歯を食いしばる。


 来るぞ、来るぞ、来るぞ。

 でも痛みは待っても中々やって来なかった。

 おかしいな、と疑問に思って目をそっと開けかけた時、如月の唇は首筋ではなく、俺の唇に重なっていた。



お読み頂き有難うございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ