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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第三章 神獣激突

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其の百二 『竜王』

 

 神獣の園、その奥で守られた御神木。その隠された内部には恐ろしきドラゴンがいた。


 何かがあるとは思っていたし、もしかしたら隠れボスなんかもいるかもとは思っていた。それこそ、遠い昔に封印された神とか。


 だけどこれは予想外だ。ただ姿を見ただけ、声を聞いただけで体が1ミリたりとも動かせなくなってしまった。


『去れ、盟友の血族よ』


 ドラゴンは私に去れと言う。私だってそれに異論はない。ちょっと、いやかなりこのドラゴンに興味はあるが、それで戦闘になりでもしたら私は死ぬ。


 だから去ることに異論はない。ないのだが、身体が動かない。


 バフかけでもしないとこの圧に対抗できないのだが…それで敵対判定されたらと思うとそれもできない。


 だから、少しの間無言の空間で必死に体よ動けと奮い立たせる私とただ睨みつけるドラゴンとで無言の空間を共有することになり…


「ぁぁ…」


『去れ』


 少しだけ、声が出そうになった。もう少し時間をくれたら威圧を抑えてもらうよう頼めるかもしれない。


 そうして再び静寂を共有し…


 だんだんと思考がそれていった。


 ほら、なんかできないことをやろうとしても全然集中できないじゃん?考えて考えて、考えてる内によくわからないことを考え出すやつ。それがいま起こったというわけだ。


 ドラゴン。この呼び方をするのは目の前にいるのが所謂西洋の竜だからだ。私のようなタツとも呼ばれる東洋の龍とはまた別の、龍が蛇ベースだとしたらトカゲをベースにしたのが竜だと思う。


 サイズはとにかくデカイ。よく分からないが数十メートルはある。色は真紅で、赤竜とも言えるかもしれない。小学生男子が心打たれるのは黒竜ではあるのだけど、赤竜は赤竜でカッコいい。


 そもそも竜がカッコいい。見ればわかるこの生物としての格の違いもそうだし、鋭い目も、鋭い牙も、鋭い爪も硬質な竜鱗も、そのビジュアルがいい。竜にもピンキリで竜…なのか?みたいなのもいるけどやっぱりこの王道のTheドラゴンって感じがいい。素晴らしい。


 私は東洋龍も嫌いじゃないけど個人的には西洋竜の方が見た目は好みだ。まぁ私自身は東洋龍なんだけど。


 まぁ、要するに、だ。


「カッコいいっすね、先輩!」


 あ、


『そうか、去らぬならば死ぬが良い』


「わっ、わぁ!?」


 嘘!?今!?今抵抗成功する!?タイミングッ!?


『勝てぬと分からぬ道理もなし、手加減は無用だな?』


 あぁ…終わった。手加減はしてほしいよ?勝てないのわかってるし。


「ぁ、ぁ───」


 ヤッ──死


『ほう』


 ───?


 な、んだ?なんだ今の、絶対死ぬって、というか〝死〟が目の前に押し付けられたような…そんな、感覚。


 竜が戦闘意思を見せた時点で私は死んだ…ような気がする。だけどいま私は生きてて…あれ?身体が軽い?


『ふむ?』


「あ、──」


 〝死〟


 目の前が真っ暗になる──光が差し込む。


 左眼が熱い。視界が紅い。だが、生きている。


「ハッ、ハッハッ!?」


 呼吸が荒く、心臓が馬鹿になったように脈打つ。もし人生で脈打つ回数が決まっているならば一年は減っているだろう。


 ──あ、ヤバ


 足が震える。体が震える。無いはずの右腕があるかのように熱を訴え、底しれぬ恐怖と、狂った笑いがこみ上げる。


「ア、ハ?アハハハ!」


『まさかまさか、避けられるとは思わなかったぞ。存分に舞うといい』


 三度目の  〝死〟


「ハハ?」


 血飛沫が跳ね、視界が躍る。 


 四つ、五つ、連続した〝死〟が迫る。


 一つ、二つ、肉を弾けさせて舞う。


 舞う度に、血を浴びる度に、熱が灯る。狂気に染まった思考の中で本能が解き放たれる。



『ククク、まさかまさかだ。今になって、アイツを思い出させられるとは』



 裂けた左眼から龍眼が覗く。


 紅い瞳が軌跡を映す。


 いつだったか、極限まで突き詰めた予測は未来視とそう変わらないと聞いたのは。


「アハッ!!」


 何を考え、何を思い、何をするのか。限定的な未来視は、不可能を可能にした。


 度重なる〝死〟を乗り越え、ついに、


人龍(ドラゴニック)


 無理矢理に人の身に収められた龍の手足が、その動きを爆発的に加速させる。


「アハ、アハハッ!!!」


 狂ったままに舞い踊る。


 狂った故に、逃走を選択する。


 避け、逃げ、塞がれ、舞い、踊り、逃げ、塞がれる。



『興が乗った、まだ舞うがいい』



 さながらドールのように、意のままに逃げ惑う。


「ハ、ハハ…?」


 傷つき、再生する度に熱が冷める。疲労と慣れが狂気を緩和する。



『クク、存外に保ったものだ。暇つぶしにはなったぞ』



 風が吹く。



 軸が乱れ、足が詰まる。



 幾度も感じた、  〝死〟   が目の前に。



 ──あぁ、間違えた。



 最期、取り戻してしまった思考がそう答え



「〈護れ〉」



 経験はそう告げた。



 刹那の衝撃、世界は暗転し、痛みだけが〝生〟を証明する。



「───」



 何も見えなくなった視界とともに意識は落ちた。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━



『ふむ…まぁ、良しとするか』



 手応えの違和感に気付きながら、ドラゴンは眠りにつく。


 その横で、


 たとえ龍であっても死を免れることのできない損傷。胴が消え、遺された頸から緑光が揺らめき、身体を描き出す。


 〈精霊体(アストラル)


 緑光は仄かに輝きながら、ゆっくりと人型を形取る。  


 音が消え、血で汚れた神聖な空間で、奇跡は起こった。










今回は短め。この先を押し込んで無駄に伸ばすのもなぁと言ったところ。

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