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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第三章 神獣激突

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其の百一 前略、いつもの

 


 ───どうしてこうなったのだろうか。



 私はただ、漁夫之利がしたかっただけなのに。



『我が盟友の血を継ぎし者よ、去れ。………去らぬならば、死ぬが良い』



 爬虫類のような鱗に覆われた体。背に生える両翼。


 その手に生える鋭く長い鉤爪。


 眼は蛇のように縦に開かれていて、睨むだけで生物を殺せることだろう。



 ──ただ立っているだけ。



 ──ただ、その姿を見ただけ。



 それだけで死を予期せずにはいられないそれは…



 ───私は巨大なドラゴンと対峙していた。





「………カッコいいっすね、先輩!」

『そうか、去らぬならば死ぬが良い』

「わっ、わぁ!?」

『勝てぬと分からぬ道理もなし、手加減は無用だな?』


 手加減は…して欲しいね!?



 ━━━━━━━━━━━━━━━



 時は戻って、クラゲアンドサメ激突時。私は隠れて戦闘の行く末を見守っていた。


「・・・ヤバぁ…」


 ・・・・・


「・・・ヤバぁ…」


 いや、ほんと…語彙力何処言ったって感じだけどそれも仕方ないようなことが起こっているのだから仕方がない。


「ヤバぁ…」


 一言で言うならば、世界が鮮紅に染まっている。


 一度半透明クラゲの触手が伸び振るわれれば、それだけでサメは弾け飛び数を減らす。

 一方で、サメは同胞を殺し勢いの落ちた触手を我先にと奪い合い分裂するように数を増やしていく。さらには弾け飛んだ肉片を食らって数を増やすものもいる。


 その結果、増え続けるサメが爆散し続けている。


「泥沼過ぎる…」


 どっちもイカれた性能をしている。やはりシンプルな見た目の神獣の方が化け物性能しているという推測は当たりだったか。


 ・・・これ、どうしようかな。 


 現状私がここに隠れておることはバレてはいない。もしかしたらバレてるかもだけどどっちも私なんかに構ってる暇はないからバレてないようなものだ。


 となれば、私は今割と取れる手立てが多い。

 逃げるも良し、待つも良し、或いは…火事場泥棒だって出来るかも知れない。


「……やるか」


 空き巣と行こうか。

 そうして私はクラゲの増援を横目にコソコソと神木の近くまで進んでいった。


 ・・・因みにやっばいよ?あれ。

 増援の数が尋常じゃない。あとサメの増え方も尋常じゃない。そのうちこの島全部がサメで埋まるんじゃないかな?


 さすがにその前に他のバケモンに駆逐されてくれるとは思うんだけども。


 ・・・それはそれで嫌だな…



 とかなんとか思っていたら攻撃された。


 振るわれる触手をイチニノサンでぴょんぴょこ避けていくのだけどこれがまぁ大変。クラゲの方も余裕がないらしく攻撃が乱雑なんだよね。

 だから触手同士がぶつかり合うこともまるで気にせず自傷しながら圧殺してきたりもする。


「へい!固結び!」


 まぁそんなだからこうして触手同士を絡ませる事も出来るのだけど……あまり意味はない。だって当然のように自切機能を持っているから。ついでに再生能力も桁違いなのでサメの餌が増えるだけである。


「さっさと確認しよ」


 逃げ回りながら神木をぐるりと確認していく。

 私の予想ではここには何かしらの秘密が眠っている。例えば木の洞とかに宝が隠されてるとか。まぁ世界樹みたくこの木自体が特別な素材って言うことも十二分にあり得るのだけど。


 それでも少しの可能性も逃さないように念入りに確認…はできないけど手短に素早く委細漏れのないように確認していく。


 チラリと後ろを見れば逃げる私を追うようにしてクラゲが、そしてそれを追うようにしてサメがと列車になっている。しかもクラゲの狙いがこっち優先になったらしくサメの数がバカみたいに増え始めた。


 少し考える。このまま逃げたとしてクラゲが全て食われれば次は私が狙われる。そして私にあの数のサメをさばくことは不可能。


「〈龍門開門〉」


 背後に扉を設置、同時に地中にも対となる門を設置して開門。これにより地上の門を通ったものは地中の門へと転移する。サメの数が一時的にでも減れば少しはマシになるだろう。きっと。ついでに門の先に大量のオロチの幻影でも出しとくかな。同士討ちしてくれそうだし。


「うわぁ、入れ食いだ」


 入れ食いで思い出した、そういや釣り猿とかいたけど今まではアイツがサメを釣って数を管理してたとかないよね…?


「………だとしたら誰がアレ止めるの?」


 あいつの釣りという名の異空間収納なしにどうしろと?


「この島で言う蝗害枠なのでは? ………蝗害?」


 蝗害ってアレだよね。バッタがメチャクチャな繁殖して作物食い荒らしてくやつ。大飢饉を起こしてくやつ。


 バッタ………バッタ…?


 ふと手を見やる。視界の端で代わり映えのしない木目を見つつ。


「ふんっ!……でた」


 手のひらの上にバッタが一匹。ぴょんと跳びはね地面に落下、する前に触手によって爆散した。


「………よし!探索再開!」


 ひとまず何もなかったことにして神木を調査する。そして気づいた。神木の近くにいたほうが安全だと。


 どうやらクラゲはどうしても神木を守りたいらしく、本気で私を潰そうとはしても神木に当たる直前スレスレで止めるのだ。地面とか触手には馬鹿みたいにぶつけるのに。


 そんなだから当然神木付近では触手の動きが限られて避けやすくなるわけだ。まぁこちらも逃げ場所が制限されるんだけど。それでもまだマシだ。


 とかなんとか、雑念まみれで調査していたら…


 一瞬、木に違和感を覚えた。ほんの僅か、自分が騙されているかのような感覚。


「当たり、かな?」


 その場所に近寄ろうとしてみればなんだかより一層攻撃が激しくなったような気がする。


 流石にこのままでは無理、かな?


 ならばどうするか。決まっている。


「全員まとめて駆逐してやる」


 嘘、付近の数体だけでよろしく。


「〈素晴らしき新世界(ソルラース)〉」


 自分を中心に地面が溶けていく。空は快晴となり、太陽が強く照りつける。ドロドロに液化し凹んだ地面の中でポツンと残されるのは神木ただ一つ。


 それは何処かで見た景色の再来で、通常生物の存在できない死の領域。


 妖力が大量に増えたことで発動可能になった新たな領域術、


「特と見よ」



 溶ける触手、焦げるサメ、地中から這い出るサメの骨。この熱さは確かに神獣にも通用するらしい。


「〈再臨〉」


 太陽神の復活、それが起こる時、何が起こったか。それは強く、深く、心底知っている。



 訪れる超大爆発。世界の全てはここに燃え尽き再誕することだろう。





 光が消えたあと、爆心地に残されたのは私一人のみである。


「さ、生き残りに襲われる前に探索しよー」


 少し離れた場所ではまだまだクラゲとサメが戦ってる。私の妖力量じゃあ火力はともかく領域範囲がまだまだ狭いのだ。


 それでも、大量の神獣を倒したことで随分と妖力最大量が上昇した。使った分を完全に補填するほどじゃないけど…それこそもう一回なら領域展開までできるかもしれない。〈再臨〉はたぶん無理だけど。


「ん、ここか?」


 ペタペタとテキトーに触ってみたら違和感の強い場所を発見。力を込めて押してみるとすり抜けた。


「おぉー!隠し扉!」


 しかもすり抜けるタイプ!

 なんなら一定の力が加わるまでは機能しないでただ樹皮を触ってるだけ!


「これはお宝の予感!」


 早速足を踏み入れようとして…


「神木、隠された樹洞、強すぎる雑魚敵…」


 もしかして…


「隠しボス?」


 え、封印された神とか隠れてたらどうしよ。まだまだ勝てる気しないんだけど。もし仮に右腕取り戻して魔力取り戻して魔力妖力体力気力共に全回復の万全状態であっても勝てる気しないよ?


「……でも行っちゃうんだけどねー!」


 ここまで来て帰るとかありえないし。まさかそんな隠しボスなんているわけないし。探索魂に灯がついちゃったし。実質一日一回の切り札切っちゃったし。


 行かないなんて選択肢、ないよね?




 ──そうして、話は冒頭に戻るのである。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━



 灯りのない樹洞。しかし龍として、精霊としての眼を前にそれは意味をなさず、整然と整えられたような樹内壁を確認する。


 間違いない、何かいる。


 入り口と合わせて自然に作られたとは思えない。誰かが、何かしらの意図を持って用意した。それも、過ごしやすいように改装してまで。


 一歩、また一歩と進んでいき、行き止まりに出会った。


 当然のようにまた行き止まりへと力を込め、すり抜ける場所を探して通る。


 それを幾度か繰り返したらば、突然鉱石に照らされた大広間にたどり着いた。



『我が盟友の血を継ぎし者よ、去れ。………去らぬならば、死ぬが良い』



 脳に直接響く声。いつぶりかの懐かしい感覚に襲われながらその姿を視認する。



 爬虫類のような鱗に覆われた体。

 背に生える両翼。その手に生える鋭く長い鉤爪。

 眼は蛇のように縦に開かれていて、睨むだけで生物を殺せるだろう。


 ──ただ、立っているだけ。


 ──ただ、その姿を見ただけ。


 それだけで死を予期せずにはいられないそれは。



 ───私は巨大なドラゴンと対峙していた。


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