其の百 サメサメパニック!
「ん〜ふぁ!!」
今日も今日とて地中から飛び起きる。いつものように体を動かして体をほぐしつつ、照りつける太陽の温かさに安心を覚える。
「太陽があるって素晴らしい!」
あれから数週間、一ヶ月位が経った…ような気がする。なぜ疑問かと言えば時間間隔なんて今更大して気にしていなかったから。最近は特に龍化が進んでる気がする。そのうち人間的思考がなくなっちゃうかもね。
「んー!まあっ!そうなったらなったでいいけど。背骨折りながら真後ろ向くやつとか、龍思考になったからこそ余裕でできるやつとかありそうだし」
あの時はビビったよね。倒せる!って思ったら上半身だけ180°回転して口開けてきたんだから。
「やっぱりあの時勝てたのは奇跡っちゃ奇跡かもしれない」
なんてことを考えつつ、そんなものは今更かとも思う。
「この一ヶ月、余裕の勝利なんて一度たりともなかったからなぁ…」
クマに始まり、猿に続き、烏に蜘蛛に、馬に鬼に狐に鶏、猪兎虎に羊に狼と、やっばい奴らしかいなかった。
カラスはめちゃくちゃ早いし、蜘蛛は例の糸が切れないし、馬はバカ早いしユニコーンでペガサスだし……あれ、私いつ処女終わった?あれか、私の中身が男だからか。あとは性別可変型だから。
鬼はまぁ言わずもがな色鬼。普通にやったら勝ち目ないから〈絶対領域〉に引き込んで〈色鬼禁止〉にした。それでも単純なフィジカルでボコされかけたけど。
そして狐さんは幻覚がウザかった。けど尻尾は1尾だったからまだまだ進化系がいそう。
鶏は…コカトリスみたいな?毒と石化と状態異常が辛かったです。
猪は猪。猪突猛進。サイズがおかしい。
兎は多いし眼が怖いし角生えてるし、どこからでも現れるし、全然減らないし。
そんで虎は虎だった。驚くほど虎。ただシンプルに強い。それだけのくせして2敗した。普通には逃げれないし空間転移しても追いかけてくるから別の適当な神獣に当てて逃げた。フツーに生きてた。だから三度目の正直として龍形態になって倒した。それでも妖力量的にあと数秒長引いてたら負けてたから意味が分からない。龍虎相搏ってやつ?
その後の羊と狼は特筆すべきはなかった。なにせ虎が強すぎてね…フツーに強かったよ?フツーに負けかけたし。でも…やっぱ虎のインパクトには敵わなかったかな。眠らせて夢に閉じ込めてくる羊も、一体一体がバカ強いくせして数体の群れで連携してくる狼もヤバかった。危機であったことに変わりはないんだけどね…。
「なーんて、過去を振り返ってる間に今日の獲物…って思ったんだけど…そう怯えられると困るよね」
いやぁ…最近毎日一体?一種族は倒してるからかな。ついに神獣に恐れられるようになってしまった。
「ふ〜む。ま、襲ってこないなら見逃してもいいかなぁ。神獣は他にもいっぱいいるし」
それにコレはあんまり強そうにも見えないし。
棘のある魚……んーと、カサゴってやつ?
針には毒があったようななかったような?
ま、どっちでもいいか。毒あってもコカトリス戦で解毒にはもう慣れたし。そもそも戦わないし。
「んじゃ、空泳ぐのもほどほどにして海に帰れよー。恐ろしい肉食獣がうじゃうじゃいるからなー」
そんな事を言い残して新たな獲物を探しに向かう。
いやぁ、良いことをした。一人の神獣の命を救ってしまったかもしれない。まぁ代わりに他の神獣が犠牲になるんだけど。
「にしても、あのカサゴぱっと見ただのカサゴだったな。空泳いでるだけで。………もしかして虎系統?」
あの虎みたくシンプル故にバカ強い、みたいな?
「だとしたらむしろ見逃されたの私の方なのでは?」
・・・できるだけ早く離れとこう。触らぬ神に祟りなし、だ。
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「さて…………スゥ~、三十六計逃げるにしかず!!!」
形態変化で騎手!なんかいい感じのペガサス創造して乗馬!
「逃げろ逃げろー!サメだぁー!」
あはははは!まさか異世界に来てB級映画を観ることになるとは思わなかったなぁ!?
「うーんコレは…振り返る度に数が増え、みんなして空を泳いでるの、“まさに”って感じ」
そのうち地中とか泳ぎ出しそう。チェーンソーとか使うべき?
「・・・今こそマサカリグマの出番だったのでは?」
まぁもう倒しちゃったんだけど。いや、もう一匹とかいてもおかしくないけども。各種族一匹だけなんてことないだろうし。いや、これまで見てないしあるのか?
「そんでまったく逃げ切れる気がしない」
もうペガサスはだめだな。その場のノリで作ってみたけど消費妖力の割に速度も出ない。私は別に空も走れるし、自分で走り回って逃げ隠れするほうがよさそう。
「ということで、ダイナミック着地!」
ペガサスからダイナミックに飛び降り着地。そのまま前に転がるようにしてロスなく駆け出す。
「うわぁ…こっわぁ」
後ろでペガサスが大量のサメに食われていく。まぁ既に消しているから残像というか消えてくところなんだけども。
それでも大量のサメがたった一つの餌に群がって、しかも同族ごと食い合ってるのは恐ろしすぎる。
「・・・漁夫之利できるのでは?」
既に何やら同士してる様子。このまま近くにいる良さげな神獣ぶつけて、最後にまとめて消し飛ばすのがいいような気がする。
「やるか!」
思い立ったが吉日とも言うしね!
まずは周辺を索敵。適当な神獣を捜索。しかし全然見つからない。もしかしなくともみんなサメから逃げているのでは?
しかたない。あそこに行くとしよう。
背後であいも変わらず暴れているを確認しながら速度を上げる。これでモンスタートレインしたあとサメがもういませんだと困るからね。
目指す先はとある大樹。この島をぶらついてる時に何度か向かい、その度に大量の神獣に阻まれた場所。
「あっ…」
少しでも速度を出そうと木々を渡り三次元走行していたらクラゲの髪飾りを落としてしまった。
・・・後で探そう。
今は神獣狩りが最優先だ。きっと見つかる。あとで髪飾りの場所を指し示すコンパスか何かを作ればいい。
にしても、何とも言えない偶然だな。このタイミングで髪飾りを落とすとは…
いやまぁ、もともと大してしっかりとした固定はされてなかったからここまで落ちなかったほうがおかしくはあるんだけど。
それはそれとしてこの先にいるのは懐かしの、見覚えしかないソレだし。
と、見えてきた。
あいも変わらずのんきに揺らめいている半透明の触腕たち。風船のように空に浮かび辺りを照らすそのものたち
「さぁ…クラゲ釣りを始めよう!」
ステップ1。
「咆哮ッ!」
純粋なエネルギーの塊を打ち込み気を引いてみる。
しかし当然のようにその半透明の体に穴が空くことはなく、鬱陶しげにただこちらに触手を伸ばすのみである。
確かにロアは私の最初の基本技ではあるけども。でもそれでも火力はそれなり以上にあるはずなんだけどね?
「うーん、作戦変更!」
クラゲを呼び寄せるのではなくサメを呼ぶことにする。
どうもあのクラゲはあの場を離れなくて困る。
「他の神獣ならロアなんて当てたら…というか向けたら即敵対して地の果てまで殺しに来るのに」
やっぱりあの木には何かがあるのかもしれない。
「サメの処理終わったらまた行ってみようかな?」
木を守っているだろうクラゲの数も減るだろうし。うん、そうしよう。
ということで。
「やぁやぁサメさんやい!咆哮!」
さっきクラゲに効かなかった憂さ晴らしも兼ねて火力の上がったロアで数匹のサメに傷をつける。
「よーし!?あれ、これもしかして思ったよりヤバいことした?」
ザックリと数百を超えるサメが一斉にこちらに大口を開けて迫る。
「うーむ。サメの壁 黒より紅く 染まるかな」
サメの壁、それはすなわち文字通り。サメの群れがまるで壁のようであることを指す。
黒より紅く、とは壁の色。そして染まるかなと合わせてもとは数が多すぎて黒く見える壁が血液で紅く染め上げられることを示している。
「なんてのはどうでもいいのだが…マージで逃げなきゃ終わるんだが?」
誰だ、連鎖型神獣にむけて攻撃したの。
一体ですらいっぱいいっぱいなのに連鎖型とか勝てるわけないだろ!バカか私!
「仏様仏様、どうかお助けください。必ずやかのクラゲとこのサメを戦わせてください」
走りながらそんなふうにお祈りしつつ、あ、神には祈りませんよ?嫌いなので。
「下手に祈るとあのクソ邪神が引っかかりそうで嫌なんだよなぁ…」
なーにが絶望が足りないだ。フツーに絶望盤面ではあっただろうが。
と、危ない危ない。また思考があっち側に行きかけてしまった。
「よっ、ホッ、ハッ!」
前門のクラゲ、後門のサメ。振るわれる触手を回避しつつ後ろのサメの餌にする。うーわひどい。振り返んなきゃ良かったよあの景色。
「グロ耐性あって良かった!」
………ふと思った。サメが食い荒らしてるところを見てグロいとか言っていたわけだけど…
「いつもの私って腸弾け飛んだり首が飛んだり四肢切られたりしてるわけで、なんなら毎度毎度身体に穴が空いているわけで…あれ、もしかしなくとも私もR18Gなのでは?」
そう言えばこの間も死にかけたような…?
「うーん。考えないようにしよう」
わたしシオン、まだ7歳くらいだからそーいうのよくわかんない!
とかなんとか。
適当なことを考えている内に色々と事態は進み…
「予想以上に上手く言ってしまった」
クラゲは触手を喰らいながら大事な木に迫るサメたちを最優先攻撃対象とし、サメたちもまた確実な脅威かつサイズの大きい餌としてクラゲを捕食対象に選んている。
つまり、この戦場において私はフリーである!
漁夫之利上手くやろーっと!




