其の九十七 強者犇めくその島の名は
第三章!開始!予想以上に早く出せて良かった!あとあらすじ変わりました!
何処までも、何処までも続く大海原。海面はキラキラと陽光を反射し、今まさに水平線に太陽が昇らんとしている。
海を渡ること一夜。私は大地を見つけた。
「陸地発見!第一村人はフツーの人がいいなぁ!」
空を駆ける足に力が籠もる。格段と速度を増し、宙を跳ねるようにして進む。
あの島の現生生物はどんなモノだろうか。
「最初は亡霊、次に魔王、精霊と来てようやくヒト。ついには魚人だったわけだけど。話の通じる人類がいると助かるなぁー」
なにせ今までロクな交流をしていない。
亡霊とは殺し合い、魔王とも殺し合い、精霊とは何故か初対面で婚姻を申し込まれ、ヒトとは……なんかいろいろと問題しか犯さなかった。その上魚人とも初対面じゃあ捕らえられて殺されかけてたわけでして。
どうにもこうにも穏やかな初対面になる気がしない!
「ま、頑張りましょうかね!」
穏便な対面を済ませてサッサと天空の国に行きたいものだ。待っていろ、私のお手軽強化編!
そんな事を考えて大地に降り立ったのだけれど……結論から言えば。それは叶わぬ夢となってしまった。
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走る走る走る。木々を薙ぎ倒し、山を砕いて逃げ回る。
「ハッハッハッ!ハハハハハッ!!流石は異世界!さすいせっ!!」
しゃがむ。跳ぶ。墜ちる。
一つ行動する度に、元いた場所が塗りつぶされる。
朱に、蒼に、黄色に、色とりどりの絵の具が世界にぶちまけられていく。
「インク鬼ごっこ!そう考えればこの姿なら多少は微笑ましくなるかなぁ!?」
流れる大河を前にして急停止、後ろを振り向くと同時に向けられている銃口を目にする。
「ハハッ、サヨナラ」
弾丸代わりのインクが飛び出すと同時に瞬間転移。地中に潜ってやり過ごす。
ドシン、ドシンと立ち去る音を聞いて、油断せず地上の様子を確認する。うん、大丈夫。うんしょ、こらしょとモグラのように穴を掘って地上に出る。
「ぷはぁ!太陽が眩しいぜ!」
適当に生み出したサングラスを投げ捨て周囲を確認。色とりどりに塗られた世界がとてもカラフルだ。
「うへぇ、子供落書きだぁ」
葉っぱが赤青緑に染められた植物だとか、紫や茶色に染まった空だとか、灰や橙に染まった地面とか。
おおよそこの世のものとは思えない色になっていたりいなかったり。
「よし、あの鬼を色鬼と名付けよう」
シンプルだね。見たまんま。
「色鬼。身長は2メートルほどだがその額には角が生えており、手には金棒代わりに銃を持つ。銃弾は非殺傷性のカラー弾だが弾薬は無制限であり、どこでも何でも染め上げる主婦の天敵…なんちゃって」
実際にはそんな事で収まらないヤバさをしている。普通に全生物の敵。
「放たれるカラー弾の色はランダムであり、もしもその弾を当てられ色付けられたなら…猶予時間以内に同色で塗られた場所以外に立っているとペナルティを受ける」
そのペナルティを受けるというのがマトモではなくて。
「感覚の喪失に始まり四肢の喪失を経て命の喪失に至る。よく考えなくてもやばいやつ。命をかけた色鬼ごっこを強制してくるヤバいヤツ」
ちなみに複数の色を塗られたら新しい色に更新される。あと連続してペナルティをするとどんどん猶予時間が短くなるおまけつき。
「そのくせ向こうは好きに動いて色陣地からでてくるように、あるいは色を変えようと銃を乱射してくるという…」
鬼側次第で難易度がバカ変わる。正直忖度してほしい。
と、言ったところまでが精霊の眼で見た限りでわかったやーつなのだけど。正直これ以上に気になる点が幾つかある。
「世界曰く、色鬼くんは“神獣”が一匹だとか」
“神獣”それすなわち神の獣。つまるところ神のペット。
えぇ?ここ神様いるのぉ?
とか思ったらそれも違うのだとか。
「世界曰く、この島は『神獣の園』と呼ばれる場所でありー」
ふと辺りを影が侵食していることに気付いた。
「かつて神々がこの世を立ち去る時、伴に連れられなかった神のペットが集められた島である」
不思議に思って上を見れば。
「すなわち!」
そこにいたのは巨大な蜘蛛。
「野生と化した大量の神獣の住処である!」
糸が伸びる。爪を伸ばして切ろうとするが、切れやしない。
「むー!?ムッムッー!!」
一瞬にして私は捕縛され、餌としてか連れて行かれることとなったのだった。
「ムゥーッッッ!!!」
ノーモアッ!無責任飼育!
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「ふぃー、ひどい目に遭った…」
肩を回し、首をひねり、身体をほぐしながら歩く。
「この島は魔窟が過ぎるよ、私が成すすべ無く死にかけるって何よ?」
結局、さっきの蜘蛛は横から現れた巨大カラスと喧嘩し始めたからギリギリで逃げられたのだが…
「生きたまま食われるのはノーセンキューだよ。あんな経験二度としたくないわ」
グロかった。近くで見ると牙とか諸々ヤバかった。でも何よりヤバかったのは私の先輩たち。一部はそのままバリボリ食べられて、一部は何か液体注入されてスープとして飲まれてた。内臓溶かされて飲まれてるのグロすぎよ?
「さて、こんな場所早いとこおさらばしたいと思うのが普通なのだけれど…」
御生憎様、それは出来ない御様子であります。
「明らか適正レベルより低いのに入った時点で途中離脱不可とか死ねとしか言われてないよね」
島を覆うようにして張られた結界。どうやら私を閉じ込めるためのものらしい。
ハァー、ヤレヤレ。これだから神は。
「今回は紙こそ来なかったけど絶対あのクソ神のせいだよなぁ?」
私を閉じ込めるためだけに島一つ隔離するなんてことするやつあの神以外にいる?いや、いないね。
「そんな事されるほど恨まれることしてないし」
こちとら海の国救った魔王よ?あ、魔王じゃん。ま、まぁ?勇者見習い名乗ってますし、ね?
そもそもあの神は人類虐殺しろって言う方だし。
「とて、全力パンチでも破れない結界だし、転移で外にもでれないし、結界中和できないし、いよいよなんか条件クリアしないとなぁ」
神が下手人ならきっとそれ相応に愉しませれば出れるはず。あの時も絶望が足りないとかよく分かんないこと言ってはいたけどそもそもは暇つぶしに私を呼んだわけで。こんな事する以上は何か私にさせたいことがあるってことでしょう。
もし神の他にこんな事したやつがいるならそいつ殺せばオケってことで。
「わかりやすいのは神獣のどれかが閉じ込める系の能力持ちってとこかなぁ?」
あの色鬼は色鬼ごっこ強制してたわけで、そういう感じで逃亡を禁止を強制してる神獣がいるかもなぁ?
フッツーにあり得る。
まああの蜘蛛は特にそんなルール押し付けてこなかったけど。あれかな?家畜的扱いだったのかな?
色鬼は遊び相手として飼われてて、蜘蛛は糸を手に入れるための家畜だった、みたいな?
あり得る。
「そうなってくると…ヤバくない?常に全力出さないとだめなの?」
あの龍騎士形態もただじゃないのよ?フツーに妖力バカ食いするからね?
まあ精霊兼龍のおかげでそこら辺は無視してる感あるけど。それでも常時使用となると…
あ、なんか飛んできてる。
「考える前に身体動かすかぁ。けーたいへんかー、龍人。フォルムー?らんさー!」
雑な詠唱と共に身体を鎧が覆っていく。手には槍が握られ、尻尾も生える。
「尻尾…後で久しぶりに九尾ってみる?」
オロチとかもいいかもだけど。
オロチ……うん。そうしよう。絶対楽しい。かっこよくなるかなぁ?
「さぁて!お楽しみの前に!一狩り行こうぜっ!?」
轟音、土煙とともに現れたのは四足歩行の巨体。
「マジか…!?」
あぁ、ホント、神ってオカシイと思うよ。
「神話の怪物ってこんなのばっかなのね!?最高かぁ!?」
現れたのは巨大な熊!
体高5メートル、体長10メートル!
だが何より目を引くのは。
その背に生える2対の翼!
その口元に輝く金のマサカリ!
まさに異様!しかしカッコいい!
「金太郎じゃあないけど、バトってみよっか!?幼女だし!」
始まりの合図はこっちで決めるけど…イイヨね?
「よーい!蒼穹穿つ聖霊槍!」
やり投げに始まりましたるは世紀の一戦!
幼女魔王VSマサカリ加えた巨大翼熊!
「ハッハァ!すっごいねぇ!?」
初手切り札は失敗!
見事なマサカリ捌きで槍を切り捨ててしまわれました!
「グゥオォオオオー!!!!!」
咆哮、同時に迫る風刃。
オートで張られる緑盾。しかしたった一発で砕け散る!?
「ッ!?ハハッ?やっぱコレ余裕ないねぇ!?」
眼前に迫るマサカリ。口で扱ってるとは思えない精度、速度で飛んできた。
腕鎧だよりに弾き捨てる。
直後背後に気配。
尻尾を間に入れるが重すぎる衝撃。
「ぅっぐぅ!?」
中を舞う身体を捻り視界に捉えた熊はマサカリをくわえ直しているところだった。
(オッモ!てかいつ消えた!?まるで見えなかったんですけど!?)
一撃で鎧がひしゃげた。意味わかんない!結構頑丈だと思ってたんだけど!?
身体を修復しながら鎧も修復。ついでに少しフォルムチェンジ。
「ケホッ!フォルム、えーと戦士っ!」
いい感じの名前出てこなかった!けど変身できたから良し!詠唱なんてのはその場のノリ!毎回違くていいのよ!
さてさて、新しくなった鎧は少し質素?になった感じ? ただ防御力は十分!あと武器も斧に変わっていい感じ!
「さぁ、変身中のお約束を守ってくれてありがとうクマさん。お礼にこっからは完全本気の全力でぶち殺させてもらうよ!」
えっ?さっきまではどうだったんだって?もちろん本気の本気よ。
でも大丈夫。男子三日会わざれば刮目せよ!っていうでしょ?
つまり!私は常に成長しているのだから今の私はさっきの私を疾うの昔に超えているのである!
「若者の怖さ思い知れっ!?」
目の前が暗くなる。影だ。
頭上、既にクマは落ちてきている。ならどうするか。
決まっている。
「フンッ!」
斧を横に頭の上に掲げて待つ。
刹那の内に圧倒的重量に従い膝をつき、大地に沈む。
だがしかし。
思い出せ。かの童話を。あんま読んだ記憶ないけどこれだけは知っているだろう?
───妖術はイメージだ。自分のイメージを世界に刻むことで発動する。故に、言葉にしたり歌にしたり、あるいは踊りでそれを表現する。しかし何よりも効果的なのは、こじつけでもいいから世界を納得させる根拠を与えること────
「金太郎は、クマをも投げ飛ばす怪力の持ち主である!」
遠い場所、異なる世界。しかしそこでは確かに一人の幼児はクマをも投げ飛ばす怪力を持っていた。そしてここにいるのはクマであり、幼女。
であるなら、必然、こうなる。
「ダァラッシャアッー!!!」
クマが中を舞う。私の片腕によってクマが吹き飛んだのである。
「ハァッハァッハハッ。ま、そうなるよねぇ?」
汗の垂れる視界、見上げた先にいるのは2対の翼をはためかせるクマの姿。
「勝てる気しねぇー」
幼女VSクマ。第1ラウンド、勝者なし、引き分け。
[神獣解説]…オマケです。飽きたら無くなります。
“色鬼”
───神代にて神々が暇つぶしに考案した一人遊び相手。鬼ごっこシリーズ第3弾。神にとっては良い暇つぶしであり死ぬまでがワンセット(神は何度でも蘇る)
基本は使い捨てであり神の復活後即座に処分されていた。そのため神界には連れて行かれなかった。というか生き残りがイレギュラー。
“蜘蛛”
───神代における家畜。糸職人。糸が欲しくなれば頼みましょう。少しの餌と交換してくれた。しかし神にとって糸はそんな要らないのである。
カラス
───カラス。伝書鳩してたり。害虫駆除業者。ただし神は何の苦労もなく念話なり駆除なりするため置いてかれた。




