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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の九十二 追想は宴と伴に

のんびり日常回!

 私が目を覚ましてからおよそ一ヶ月が経った頃。


「「「かんぱーい!!!」」」


 ギルドに併設された酒場、いつもの宴会会場で冒険者たちが騒ぎ立てる。


「飲むぞ〜!!」

「「「うぉぉ〜!!!」」」


 だとか、


「うぇ〜い!最近何処もかしこも宴ばっかでただ酒のみまくれるぜぇ〜〜!!」

「「「ウォ〜〜!!」」」


 だとか。


 大体のやつはタダ飯タダ酒目当てだけども、それは良い。むしろ歓迎だ。


「しかし珍しいな、お前が自分の金で奢るなんてよ?」


 そういう男は目の前でチビチビと酒を飲む。予想では何時もの借りを返すべく好き勝手飲むかと思ってたが。


「なんだジラルドそれじゃまるで私が他人の金で奢ってるみたいじゃないか」


「そうだろうが」


「そうか。にしても随分とチビチビ飲むんだね?」


「グイグイ飲むだけが酒じゃないってことだ」


「そんなもん?」


「そんなもんだ。お前にはもう何百年はわかんない感覚だろうけどな」


 ・・・まぁ、そうだろうなぁ。この体の成長は遅い。まだまだ若い体は続くだろうし、その間はきっと精神も若くて、そんな風に飲めるようになるまではまだまだかかりそうだ。


 そんな風に思いつつ、何処かくたびれたように酒を傾ける奴の姿はただの親父のようで…とてもじゃないが金級には見えない。


「はぁ…」


「なんだよ?」


「何でもない」


「はぁ?」


 コイツみたいに傍から見てもわからない強さを持つやつってのは今後ゴロゴロいるんだろう。その度に自分の強さを疑って、目標との距離を確認して苦しんで。


「はぁ〜。せめて右腕が治ればいいのに」


 魔力が使えないのはこの際構わない。外野から吸収すればいい話だ。そうでなくても時間が経てばまた使えるようになる。今はこの前の魔力過剰供給で魔力器官がぶっ壊れてるけど。


「そういやその右腕どうしたんだよ?」


「あ〜、……消費した」


 うまく言えない。けど実際そんな感じだ。思えばあれはキッカケは一人の騎士で、治さないままに神に挑んだ私の過失ではあるのか。でも右腕を治していたからと言って何か未来が変わったかと言えば…


「世界は厳しいなあ」


「そうかよ。で、今日はどうしたんだよ。そんな風に珍しい姿ばっか見せて。あの二人とのデートで精神病んだか?」


「やめろ。思い出させるな」


 あれは忘れたい記憶だ。既に終わったこと。思い出すことのない記憶だ。


「そうかよ。で、実際何用だ?わざわざ俺一人のとこに来やがって。まーたアイツラが面倒くさくなるじゃねぇか」


「あ〜、……まぁ許して?」


「・・・まじでどうしたんだよ。変すぎるぞ?後遺症か?」


「違う。そんなもんはほとんどない」


「ちょっとはあるのかよ…」


 ある。魔力器官が壊れた。あとは明らかに存在力が上がって属性が魔に傾いた。属性が何かは知らないけど。精霊的な視覚、つまり世界において存在を区別する要素の一つなんだろう。ま、これに関しては元から魔だったんだけど。当たり前だな。魔王だし。

 ちなみに勇者のはずのヴィクトリアも属性としては魔である。多分あの時言ってた【怠惰】の権能とか言うのが関係してんだろう。


「まぁ、それはよくてさ。この国を出ることにした」


「そうか」


「何処に行くかアドバイスある?」


「ない」


「おい」


 コイツ。適当いいやがって。


「なんだよ。急に旅先決めろとか言われても困るだろうが。そもそも旅に出ること言われたの今だぞ?」


「そうだけど…返事が軽かったから」


「どう返せばいいか分かんねぇんだよ。そもそも、お前は龍で、幼くて、親も、故郷もねぇ。俺とは条件が違いすぎる」


「それはそうだけど…深く考えすぎでしょ」


 あの一瞬でそこまで考えんのかよ。これが年寄りの力?


「うっせえ、まぁ…いい。で、何処行くかだったな?」


「あ、うん。そう」


「今まで何処行ったことあんだよ」


「太陽の国」


「・・・あそこか。どうだった?」


「滅んだ」


「ちげぇよ。街並みとか暮らし、何したか聞いてんだよ。つーか滅んだのかよ…あの大国…」


 滅んだ。自滅したというべきか、神災に遭ったというべきか。


「街は…四方を山に囲まれてて、そのうち一つは氷に覆われてた。その氷は溶けない氷で、内側に入れられた時は死ぬかと思った」


「なんで中に入ってんだよ…」


「巫山戯た魔王のせい」


 あのナルシストは一生許さない。魔王として実力をつけたら殺しに行く。或いは配下にする。まぁ、それもアイツが生きてたらの話だけど…どうだろう?


「なんで魔王と絡んでるんだよ…」


「それはまぁ…答えるには親密度不足かなぁ?」


「そうかよ。まぁいい。他に行ったことある国は?」


「ない」


「マジ?」


「まじ」


 生憎と生まれは空島育ちも空島なもんで。家出して即魔王に捕らえられました。許せないね。けどアレがなかったらまだまだ誰もいない世界を彷徨ってたかもしれないからなんとも言えない。


 そういや最初に地上で見つけた城みたいなのってダンジョンだったのかな。私を転移嫌いにさせた大きな理由の一つだけども。


「あ〜、なら天空の国行けば?」


「天空?」


「お前ら龍の故郷みたいな国だろ?どうせしばらく帰ってないだろ?そもそもよくあの国からその年で抜け出せたな…」


「ん?そんな抜け出すの難しいの?私の場合はほら、そもそも天空の国で生まれてないからわかんないんだよね」


 そもそも親なんていません。無から三歳児として生まれました。意味わかんない。


「・・・野良の龍かよ…しかもその年で一人ってことはお前…捨て子か?」


「そもそも私に親はいない」


「捨て子じゃねぇか。よく生きてこられたな…」


「運が良かったのかもしれない」


 生まれてこの方世界の強者トップ100にランクインするような奴らとしか戦ってない気がするけども。それでも生き残っているという意味では悪運が強いと言えると思う。


「だろうな。ま、ならやっぱ天空の国行っとけ、俺もあんま知らんが…あの国は龍と人間の国だ。なんか良い感じに成長できるだろ」


「雑だね?」


「俺もあんま知らん。海から出ねぇし」


 それもそうか。魚人だもんね。あんまり魚人形態見ないけど。


「陸で生活するのにヒレとか要らねぇだろ」


 おっと、足元ばっか見てるのがバレた。


「そもそもなんで海底のくせに陸なの?」


「あ?水中だと酒飲めねぇからじゃね?」


 なるほど…アイツラ観てるとそれで納得しかけるな…。


「実際は知らねぇけど。ま、何でもいいだろ。普段は人型、水中戦闘は魚人で使い分ければよ」


「まぁそうだけど…そもそも魚人の時のが強いの?」


 私の見てきたジラルドは全部人型だったからなぁ…。


「さぁな。この姿に慣れすぎたしわからん。けどま、水中なら魚人のが動けるのは確かだ」


「へぇ〜」


「相手も動きづらくなるだろうし、水中戦闘の時は魚人にならねぇ理由はねぇし…あぁ、そういや忘れてたが海中で戦うと祝福受けれんだよな」


「祝福?」


 なにそれ。ヴィクトリアの強化とはまた別?神様とかそこら辺関係?


「名前は知らねぇけど海の神様の祝福だとよ。昔から海で生きてっとただで貰えんだ。代わりに祭り開いて色々捧げんだけどよ」


「なんで名前わかんないのさ…」


「もう何代も前に海の神関係の諸々が消されたんだよ。確か龍王サマが来たからじゃなかったか?」


「あー、こっちでも信仰替えか」


 それも仕方ないのかもしれないなぁ。いるかも不確かなソレより、いることの分かってる上位者のほうが大事だってわけだ。


「こっちでもっつーと?」


「太陽の国でも太陽神信仰から精霊信仰に変わってた。そんで太陽神の狂信者が太陽神復活させて国が滅んだ」


「・・・ちょっと神殿行ってくっかな」


「まぁ待てやい。まだ飲んでる途中だろう?」


「うるせえ!これ以上バケモンどもの戦闘に巻き込まれてたまるか!テメェもサッサと旅でやがれ!」


「ひっどーい!ここまで一緒にやってきた仲間でしょ!もう少し別れ惜しもうよ!」


「知らん!つうかそのテンションなんだよ!?またろくでもないこと考えてんじゃねえよな!?」


 あ、バレた。ま、いいや。あとちょっとだし続けよ。


「ひどい!一緒に怒られた仲なのに!命預けあったのに!」


「うっせぇ!お前にそんな殊勝な心がけねぇだろ!ただ都合よく人を使ってるだけだろうが!」


「やぁ!捨てないで〜!こんな幼気でカヨワイワタシヲステナイデ〜!」


「急に棒読みになんな…!?」


 あ、きた。


「私のかわいいシオンちゃんに、なに、してるんですか。ジラルド?」


「い、や?何も?」


 こっわ。いきなり現れて首元に手をかけられるのって本当に生命の危機を感じるよね。わかる。よく、わかる。首輪とどっちがイイダロウネ…。


「そうですか、その割に聞き付けならない言葉が聞こえてましたけど?」


「それはソイツの悪ノリでっ!?」


 顔近。いわゆるガチ恋距離じゃん。1センチ空いてるかどうかだよあれ。雰囲気は全然甘くないしなんなら尋問されてる側は絶対眼と眼が合う恐怖しか感じてないけども。


「ホントウニ?」


「ほん、とうに」


 あ、離れた。


「嘘じゃないですね。まったく、シオンちゃんもあんまりからかいすぎちゃダメですよ?良くない大人に返り討ちにされないうちに止めないとダメです」


「は〜い」


 私を返り討ちにできる良くない大人っているのだろうか?いるね。普通に。何人も。


「はぁ〜」


「ため息つきたいのは俺の方だが?」


「???」


 だね。と、来たか。


「シオンちゃ〜ん!な〜んで俺を誘ってくれないのさ!?せっかくの宴なのに!」


「ん〜。言っていいの?」


「え、なにそれちょっと怖い」


 ・・・もう一人は特に反応なし、と。ならいいか。


「ん〜、まあぶっちゃけるとお二人さんがっ!?」


「何、言おうとしてっ!?何でもないっ!何でもないっ!よねっ!?」


 あ〜らら。反応あったわ。特大の。


「む〜む〜っ!ソダネ。なんもないね」


 はぁ〜、ロゼッタさんちょっと随分と可愛くなりましたねほんと。まぁ元々あんまり関わりなかったからあれだけど。でももうちょっとツンケンしてたはず。


「ツンデレってやつ?」


「縛るよ?」


「わぁ」


 なんかわかる。縛ってそう。


 そう言えば前世にもツンデレな人がいたような?あんま覚えてないや。多分身近ではなかったのかな?でも多分タイプではなかったかも?

 まぁそもそも性別変わってるからそれになんの意味があるかと言われると興味以外の答えはなくなるのだけど。


「愛はいいよ?」


「なんでアンタがいうのよ…何歳よ…」


「六歳?」


「若すぎるでしょ…」


 わかる。若いより幼いだよね。


「でも結婚してます。夫いました。もう死んだけど」


「「え…」」


「こんなに小さくて可愛いシオンちゃんが既婚者で、未亡人で、ってなにそれなにそれなにそれ……!?」


 いや、死んだというのも不適切か?私の中で生きてます。むしろ私が嫁で私が夫です。意味わかんないけど実際そう。これぞファンタジー。ハハハハハ。やばいドーラどうしよ。


「なにそれ…聞いていいやつなの…?」


「いいやつだよ?聞きたい?」


「聞きます!シオンちゃんの恋愛事情!私が見極めます!」


 わぁ。


「なんでアンタが見極めるのよ…まず自分が結婚しなさいよ…」


「なんですか!?独身が娘の結婚相手決めちゃダメなんですか!?」


「そもそも娘じゃないでしょ…」


「うっぐ…!」


 強烈なカウンターだけどそれはそう。あと結婚相手決めるも何も既に事後。後の祭りってやつ?


「とりあえず…落ち着いて?お酒でも飲みながら話そ?」


 あっちでシュリヴァンがもう席取ってるからさ。あ、座る席はもちろんお好きにしてね?


「シオンちゃん…好き!」


「ハイハイ。おとなしく座りましょーねー」


 間にジラルド挟むか。


「オイ…お前…」


「ハハハ、いやぁ…楽しくなりそうだなぁ」


「死にかけたら助けろよ?」


 あぁ、うん。助けられたら、ね?


「さ!まずはどこから話そうか。やっぱりあいつとの出会いからかな?」


 さぁて、この調子で旅立ちを切り出せると良いのだけど。そしてその衝撃でドーラが暴れ出さないともっと嬉しい。せめて暴れてもジラルド一人で許してほしいなぁ。



別れというのは突然で、避けられないものです。だからこそ、悲しみ続けることのないように話をしましょう。過去を話して、未来を話して。楽しくて刺激的な未来を想像して笑い合うのです。

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