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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の八十一 怪異『血濡れの獣』

少しぶりの主人公視点に戻ってきました。

 

「なぁ、あれなんだ?」


「・・・なんですかねぇ?」


「なんだろねー?」


 目の前で起こっていることに理解が追い付いていないためか、みんながみんな現実逃避をしている。もちろん私も。


「・・・ひとまず、助けに入りますか」


「・・・そうですね?」


 思わず疑問の形で答えてしまったけれど、助けに入るというのに異論はない。異論はないのだが…


「あれ、助け要るかぁ?」


 そういったジラルドさんの言葉に内心みんな同意してたと思う。


 それはともかく。かくして、私たちは血に塗れた体の小さい…しっぽの生えた…人型?であるシオンちゃんらしき人を助けに行くのであった。



 ────────────────



 ヴィクトリアたちと再会するしばらく前。バラバラ死体となり果ててから生き返ってすぐのこと。私は絶賛死地にいた。


「・・・だぁらっしゃぁ!!  数が!!多いッ!!!」


 おかしい。いくらなんでも数が多すぎる。具体的には下層での小魚の群れがかわいく見えるくらい。夏場にアリの巣に角砂糖落としたってこうはならないと思う。やったことないからわかんないけど。


「ええい!耐久ゲーにしたってこんな量最初から来ることないと思うの!というかちょくちょく合間に休憩時間てきなのあってもよくありません、か!!」


 ついつい愚痴が零れ出る。けど内心では別にそこまで追い詰められてるわけでもなかったりする。


「転生者が死にかけになって前世の記憶思い出すのはありがちだけど実際経験するとちょっとわかる」


 多分あれ。走馬灯みたいな感じで過去の記憶漁った結果思い出してるんだ。私はそうだった。


 さっき足元から巨大ウツボに飲み込まれたときはびっくりした。あれはやばかったね。一瞬で視界が暗くなって死んだかと思った。過去にクジラに食われてなかったらもうちょっと慌てたかもしれない。


 まあ実際に走馬灯を見たのはそのあとの腹の外出た瞬間にちょっと小さめの?ウツボに足を食いちぎられた時だけど。その直後のピラニアの動きはやばかった。でもさらにその後に血の匂いにつられたのか現れた巨大サメに食われたのもびびった。おかげで脚を回復する時間が手に入ったのは助かったけどね。


 なんて、意味もないことを口にする余裕はあったりするのだが。


「終わりの見えない戦いってつらいよねって話!っですよ!っと!」


 あんまり思ってもないことを言ったりもする。終わり見えなくても楽しければよくない?

 ほら、あるじゃん?終わって欲しいけど終わって欲しくないってやつ。辛いけど、キツイけど、最高に楽しい、みたいな。


「まぁ、そんなわけだからさ。いい感じに私の経験値に変わって?」


 ━━形態変化(モード) 龍人(ドラゴニア) 職業(モデル) 龍騎士(ナイト)


「蹂躙のお時間です。敵対する皆様は頑張って足掻いてくだぁさい」


 ささ、対多数の実戦経験を積むとしましょう。今後軍隊と戦争するときに役立ちますからね。


「手負いの獣は恐ろしく、知恵ある獣も恐ろしい。しからば私は知恵ある龍になりましょう」


 飛びかかる者を軽々払い捨て、地中の存在を踏み砕く。尾は堅固にして柔軟な守りとなり、指向性を持った殺意は動きを鈍らせる。


「私もゲーマーの端くれなもんで、最適化は得意とするところ。君らが尽きるまで、練習させていただきますよ?」


 ははは。な~に大したことじゃない。不眠不休の労働は社会人の必須技能。不眠不休の思考はゲーマーの基本技能。まして龍の肉体をもってすれば…ねぇ?


「ありゃぁ?動きが止まってるねぇ?もしかして───怖いの?」


 ダメじゃないか。そんな感情を持っちゃ。軍隊型・群体型の生物にそんなものはあっちゃいけない。だってそんなのあったら数の利が生かせないじゃないか。危機を感じる力はあっていい。けれど危機を危機と知ったうえでなお止まらぬほどの恐怖への鈍感さが必要だよ。特に、君らみたいな仲間の死体を踏み台にして生きるタイプの奴らはさ。


「ほ~ら、来なよ。か弱そうな女の子だよ~。誰が食べれるかなぁ?早くしないと自分の分がなくなっちゃうよぉ?」


 ・・・動かない。どころか…


「なるほどなるほど。獲物にしてはうまみがないと思ったか。でも今更止まるのも無理。だからそうやって、喰らい合う。同士討ちだね?」


 それでも同族だけは生きている間は襲わないのはまだマシなのかもねー。ただ、残念ながら知能が足りなかった。弱者としての自覚が足りなかったんだね。だからこうなる。


「普段なら? 魔王ロールで言えば見逃す、というか放置して見物が正解だと思うんだけどさぁ。生憎と今修行中の身でして。どうしても勝ち目の見えない相手に勝つために、いろいろ試行錯誤してまして。だからさ、さっきも言ったけど。

 ───お前らが獲物だよ。ちゃ~んとこっち向いて生存競争しましょうや」


 圧倒的な殺意。殺らねば殺られると本能に刻み付ける。お前らがすべきは同士討ちじゃなかった。一目散に逃げだすことだった。だけどもう遅い。すでに種を懸けた戦争は始まってしまったのだから。


「イイね。現状の動きとしては最良かも」


 全てのモンスターが迫りくる。争っていたものも、死にかけているものも、今か今かと機を待ち望んでいたものも。あるいは、死んでいる者も。その全てが、動き出す。


 今までの戦いなど比にならないほどのモンスターが迫り、視界は一面黒に染まる。隙間なく、所狭しと並んだその包囲網。その一か所に大孔をこじ開けて。


「ささ、今度こそ特訓だ。 ──命懸けで喰らいついて来いや」


 ここで勝たねば種が終る。そう錯覚したモンスターたちは蛮勇に身を焦がし、焦燥と共に徒花を咲かす。種の垣根を越えて、かの災厄を滅ぼさんと鬼気迫る。命を投げ打ち仲間を運び、命尽きてなお執念がその体を突き動かす。


 それに対し、


 特訓と称して気楽に、笑みを見せながら彼らの命と願いを踏み躙るその姿は。

 その容姿のあるべき姿からかけ離れた邪悪は。

 シオン・セレスティンは。


 まさに、”魔王”であった。




 ───────────────



 戦争が終わり、ヴィクトリアたちと合流してからの事。


「アッハハハッ!!やー!楽しかったっ!!」


「もう何なのお前?頭おかしいんじゃねぇの?あれが楽しいとか狂ってるにもほどがあるだろ」


「おー?なんだぁジラルドォ、喧嘩かァ?気分がいいからなァ、受けて立つぞォ!」


 一回負けてる狩りがあるからなあ。手加減なしで殺しに行くけどいいよねぇ?


「やめろお前マジで。そんな戦いたいなら後で存分に暴れろ。どうせボス部屋にもいんだろ。大量に」


「え~?仕方ないなぁ!じゃあ我慢してあげようじゃぁないかっ!!アハハっ!」


「おい待てマジで、近寄るな。怖え」


「ほーらシオンちゃんこっちおいで。お菓子あげるからいい子にしてましょうねー」


 えぇー?お菓子ぃ?


「食べるぅ~!あはは~!おいし~!」


「そっかぁ!よかったぁ!昨日作っておいたんだけどうまくできてる不安だったんだぁ」


「ドーラの手作りなの!?すっご~い!」


 おいしぃ~。もっと食べた~い。


「うれしい!けどごめんね。荷物に無理やり詰め込んだだけだからもう残ってないの」


「えっ!? ・・・じゃあ、外出たらまた作ってくれる?」


「っ!? もちろんっ!!いくらでも作るよぉ~!!」


 あははっ。くるし~。血ぃ乾いてな~い。


「ドーラ!ドーラ!血が乾いてないよ!べとべとになっちゃう!」


「え~いいですよそんなのぉ!シオンちゃんが可愛ければそれでいいんですよぉ!!」


「えへへ~!でもせっかく真っ白なのに黒くなっちゃうよ~?」


「いいんです!これもシオンちゃんの頑張りの証!私は構いません!むしろ汚してください!」


「え~?それはさすがに~」


「いいの!シオンちゃんは難しいこととか考えず好きに生きてればいいの!私が認めますっ!」


 あはは~。そっかぁ。認めてくれるかぁ~。


「じゃあ抱っこしてぇ?」


「っっっっっ!!!!好きっ!いくらでもしてあげるっ!」


「ありがとぉ~~~」


 あーーーー落ち着くぅ。人肌がぁ~。私を浄化していくぅ~。


 ・・・・・・ぁ。寝よう。



 ──────────────



 シオンが眠り、まったく敵が出てこなくなった道を歩きながら彼らは平和に談笑する。


「なんだったんだこいつ」


「すっかり年相応になってたわね」


「─────────────!!!!!」


「あんたはいつまで笑ってんのよ……」


「だって、だって!─────ッ!!!」


「あーもういいわ。しばらく床にでも転がってなさい。待ってあげないけど」


「もうっ、ロゼはもうちょっと優しくしてあげたら?仮にも夫婦でしょう?」


「いや、それは……というか!あんたも何平然としてんのよ!?さも普通の人間ですみたいな顔してるけどあんたもおかしくなった側の人間でしょ!?」


「私はおかしくありません。可愛いものは可愛い!愛しいものは愛しい!それだけです」


「急に理性取り戻さないで?テンションの変化についてけないから」


「まあ私のことはいいんですよ!それよりみんなです!シオンちゃんが大暴れしてるの見てから明らかに調子が変です!そんな畏れなくてもいいのに!」


「いや、私は別に変ってないけど。当然そこの馬鹿二人も。あとレオン爺もそうじゃん。しゃべってはないけど」


「おう。もともとバケモンだと予想はしてたからな。まあ、ああなるとは思わなかったが」


「そっちはいいんです。冒険者組は。というかヴァンはいつまで笑ってるんですか?」


「──────!!!」


「もういいです。それで問題は騎士組ですよ!特にヴィクトリアちゃん!」


「わ、わたし!?」


「はい!さっきから何を黙りこくってるんですか?そんな物欲しげな目をしておきながら!」


「え、えぇっ!?そ、そんな目してないけど!?」


「い~やしてます!その証拠にほらっ!私としゃべりながらシオンちゃんのほうしか見てないじゃないですか!」


「ぇ!?そ、れは。その…」


「抱っこしたいならしたいならしたいで言えばいいんです!もっと自分に正直になりましょう!数時間後にでも死んでるかもしれないんですから!」


「・・・・・・ぇ」


 瞬間。空気が硬くなった。緩い雰囲気が崩れ去る。しかし彼女はそれに気づかない。気づけない。なぜなら彼女もまた中てられていたから。シオン・セレスティンという怪物の纏う濃密な死の気配に。冒険者としての習性か、自分の命に終わりを感じ、取り繕うことをしなくなっていたから。


「だからほら!ヴィクトリアちゃんも抱っこしときましょう?」


「いや…そんな……別に地上に出てからするからいいし」


 指揮官として。皆の命を預かる者としての責任がそれを受け入れることを良しとしない。その甘い誘いに乗ることはつまり、死ぬことを恐れているという証左だから。


「そんな硬いこと言って。さっきジラルドも言ってましたけど。この先は死んでも勝つ戦いなんですから心残りは減らしとくに越したことないですよ? だって、之のせいで命を賭けられなくなったらバカみたいじゃないですか」


 重ねて言うが。冒険者とは馬鹿な生き物である。巨大な欲望を持ち、それに己の命を賭けることを全くとして辞さない大馬鹿者。生き残るために己を律し、妥協の先で生きるのではなく。己の欲望のために理性を捨て、その果てで死ぬことすら本望とする者たちである。故に彼ら彼女らは極めて刹那的であり、その本質は社会不適合者である。


「ね。体に従っちゃいましょ?手を見ればわかります。抱っこしたくてたまらないんでしょう?そんなに腕を伸ばして欲しがって。ほら、私たちみたいに馬鹿になっちゃいましょ?」


「う、わ…ぁ…」


「怪しい勧誘にしか見えねぇ。止めるべきか?あれ」

「いや、放置でいいでしょ」

「──────!!!」

「はいはいあんたは寝ときなさい」


「ヴィクトリアちゃん。みて?ほっぺとかこんなに柔らかいんだよ?安心してるのかな?心音もゆっくりでとってもかわいいの。よぉ~く耳をすませば寝息だって聞こえるの。すぅ~すぅ~って。可愛いなぁ」


「ください。私にシオンちゃんを渡してください。その子は私の妹です。責任もって預かります。だから早く渡してください」


 迷える子羊は類友により沼に落とされたのだった。


「いいよ。可愛いからね。独り占めはダメだよね」


「────!!!!!」


「うんうん。これで良し!」


「ひでぇ現場を見た」

「あれ大丈夫なのかしら。ことが終わった後に処刑されない?王女を誑かした罪で」

「────!!! 大丈夫でしょ。王女はすでにこっちの味方だし」

「おう…急に理性戻るじゃん」

「いやだって、そろそろ時間じゃん」

「時間? ・・・ああ」


 シュリヴァンの言葉を皮切りにして、彼らは順にそれに気づき始める。

 そして、最後の近衛騎士がそれに気づいたころ。


「ああもう。可愛い!」

「ですよね!やっぱり私が抱っこしていいですか?」

「だめ!この子は私の!」

「ひどい!私は優しく譲ったのに!」

「うっ、そ、それはぁ…!」


「・・・・・・んや。・・・う~ん? これ、どういう状況?」


 彼女は再び目を覚ました。

なんか、いろいろと落差がひどい。

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