其の七十八 あいむ魔法少女
ちょっと短い。代わりに次回予告。
次回! 絶体絶命!シオン死す!?
先の見通せない暗闇。その中へ。
何時だかと同じように騎士を後ろに落ちていく。ただ、違うことがあるとすればそれは。
「ククク。私の成長、見せてやらぁ!」
一切の恐れも怯えも在りはしないことだろうか。
「お前らぁ!!何もするな!全部、受け入れろ!」
加速。重力に従い、ぐんぐん落ちていく。感覚が正しければ、そろそろか。
───魔法”風船”
突き出した左手から風が放たれ、地面周辺で留まり、クッションとなる。体が触れれば減速し、低速落下。速度0とはいかないが、十分すぎる効果だ。
「ハハッ、大成功!」
ぶっつけ本番でもうまくいくんだから私ってば天才!
って言いたいとこだけど。
「ぜぇー、ぜぇー、まじで集中した。緊張した」
やっぱりリハは欲しいよ。あと練習時間も。
「シオンちゃん大丈夫?」
「ダイジョブよ。元気元気。ちょっと緊張しただけ」
「ったく、お前はやらかさなきゃ気が済まねぇのか?」
「まあまあ、口が悪いなジラルドは」
「・・・なんか気持ちワリぃ」
「なんでさ!?」
「戻ったか」
え、戻ったって何さ。もしかして私ってあのハイテンションおちゃらけガールじゃなきゃ認められない感じ?
「え~、ジラルドがこれがいいなら仕方ないなぁ~。この感じで接してあげる。これ疲れるんだけどなぁ~」
「うぜえ」
「ひどっ!?」
まったく、魔法に満足した私もダメ。ハイテンションガールな私もダメ。ならどうすればいいのか。
「まあいいや、私もモンスター蹴散らしてくる」
「え!?私たちは戦力温存のために休んどかないと!」
「そうだけど、ちょっとくらいウォーミングアップしといたほうがいいじゃない?」
「うーん、でも…」
今のうちに行くか。どうせジラルドは止めないし。むしろ多少動きたそうにしてるし。わかる。わかるよ。体が疼いてるんだよね。仕方ない。だってあんな高揚感というか全能感に包まれるバフ受けてるんだもん。大人しくしてられる騎士たちがおかしいのさ。
「・・・何考えてるか知らねぇがむかつくことなのはわかった」
「さ、逃げるか」
「待てガキ!わからせてやる!」
おー怖い。
「討伐数で勝負な!」
「上等。かかってこいや」
最前線に飛び出し敵を殲滅。お堅い騎士様がいろいろ言ってくるが無視だ無視。鎧袖一触。腕の一振りで蹴散らせる相手に万が一はあり得ない。
「ハッハァー!テンション上がってきちゃぁー!」
魔法”風塵”。効果、周囲に風を巻き起こし敵を塵になるまで切り刻む。
魔法”砂塵”、効果、周囲に砂嵐を起こし、敵の体を穴だらけにする。
「あいむ魔法少女なりけり」
ふはは、昔やりたかったこと全部できるぜい。まさかもまさか。魔力を失って初めて魔法が使えるとは思わなかった。ダンジョンと、仏様には感謝だ。ああ、早く魔力を取り戻したい。
「む。周辺魔力が薄い。移動するか」
これで良し。いやぁ、ほんとに。気づけて良かった。仏様最高。代償として魔堕ちしたけど、理性取り戻したから良し!
「魔法乱射じゃい!喰らいやがれぇ!」
あ、物理で殴ったほうが強いのは内緒ね?熟練度上げですから。なにより楽しい。戦闘に彩が増えて私はとても嬉しいです。
にしても。私このダンジョンの深層に来た時毎回モンスターを狩りつくしてる気がする。もはや天敵通り越して天災だよね。
────────
ダンジョン攻略作戦が決まりってすぐのこと。私は残された準備期間を自身の強化に充てることにした。
なにせこの間はジラルドに負けたのだ。これはまずい。魔王として、些か認められる敗北じゃない。
というわけで。
「おうおうお前ら。元気に暴れてるじゃないの!ちょっくら私も混ぜてや!」
ヴィクトリアの言っていた海の国周辺に増えたという魔物の巣窟に飛び込み、ちょうどよく縄張り争いしてた蟹と海老の争いに参加して三日三晩戦い続けたり。
「おうおう海蛇風情が良く群れる!」
ブリこと海蛇の群れを壊滅させたり。
「これは!お宝の香り!」
幽霊船と化した沈没船の船団と戦ったり。
「なん、こわ」
何一つしゃべらずただこちらを見てくる顔色の悪い少年の霊に憑かれたり。気づいたら消えてた。
「ここは釣り堀か?」
長靴だとか手錠だとか矢印だとか骨だとかおおよそゲームの釣り外れ枠にありそうなやつらに襲われたり。
「これは、謎とき?」
飛び回る鍵を捕まえて一個一個宝箱に合うか確かめて最終的にミミックだったと知って地形ごと消し去ったり。
「ここは、まともなエリア!」
久々に三葉虫とかシーラカンスとかイソギンチャクとかフジツボとかと戦い。
「これはまさか!ダンジョン!」
岩肌に隠されたダンジョンで大暴れし、その最奥にいた千手観音みたいに大量の腕を生やした人型を死にかけながら倒して。
『汝、我を超えしものよ。何を望む。其れを持って我が生涯最期の御業としよう』
「なら回復させてください。死にそうなんで」
死にかけ(内臓全滅両足欠損片目損失状態)から命を救われて。
その時に使われたのが千手観音風の何かの魂とダンジョン内に満ちた魔力だと気づき、周辺環境に存在する魔力(以降”魔素”)を取り込み利用しようと考えて魔堕ちして数日理性なく暴れまわる獣と化し。
「あ、チョウチンアンコウ」
理性なく巨大亀と戦い両者ぼろぼろになったところをチョウチンアンコウに襲われその提灯を破壊したところで気絶。意識を取り戻すと同時に理性を戻し土下座して許してもらって。ついでになぜか周囲に満ちてた魔素を使って覚えたての魔法で直して。
『我すら知らぬ新しき龍よ。アトラシアを降した褒美だ。一度だけ、そ奴を好きに呼び出すといい。それと、なにやら魚人どもが騒いでいるようだぞ?』
と、謎の声を聴いて。ダンジョン攻略を思い出していっそいで戻って。
私は今。真層への入り口にいる。
─────────
「ここから先が真層。ダンジョンの本番かー」
「俺たちは一回来たことあるけど、かなりやばいっすよ?」
「そうね。あれはやばかったわ。なんていうか、空気が違う」
「はい。存在の格が違うというか。私たちじゃ先に進んでも意味はないって言われてる気がして」
「なるほど。ならやっぱり作戦はそのまま。護送部隊はここで、いや、地上で待機。その防衛部隊に合流」
「了解しました」
ヴィクトリアの指示に従い撤退準備を進める騎士一同、なのだが。
「それで、シオンちゃん?そろそろ出発するよ?」
「・・・そう」
「無駄だ。こいつはしばらくこのままだ。どうせモンスターが来たら暴れだすんだから放置でいいだろ」
「それもそうだけど、そいやなにがあったんだ?」
っ!!!
「あっぶな!?」
「ちっ!外した」
「モンスター狩りの量競うってのに原型留めないで殺したから計測不能で俺に負けて拗ねてんだ。馬鹿だろ」
死ね!
「あっぶねぇ。普段なら死んでた」
今だけは、ヴィクトリアの強化が恨めしい。私にもかかってるけど技量的に向こうのほうが効果的に体を動かせるの腹立つ。
「なるほど。まっ、まあ仕方っ、ないっ、だろ?くすっ」
おい聞こえてんだよ笑ってんのは。
「あー戦闘中手が滑るかもなぁー。バフとかうまくかけられないかもなー」
「ご、ごめんて。許して?」
「・・・」
「よし分かった。今度ジラルドと喧嘩するとき味方になってやるから」
「許す」
「っしゃ!」
「お前らなんなん?」
マブダチです。
「それじゃあ、みんな行くよ!集まって!」
「あ、私扉開けた~い」
「え?う~ん、じゃあ私と開けよっか」
「うん!」
勇者と魔王(秘匿)の共同戦線だね!頑張るぞい!
「それじゃあ、改めて。”之は勇者の道。付き従うは勇ある者。則ち我らは皆勇者である”!」
「”勇者””英雄””人類”」
───魔法宣誓”我は魔王。故に勇者の道は魔王道。勇者にして魔王。魔王にして勇者。我らは勇魔を併せ持つ”
「ヴィクトリア、いくよ」
───魔法”『聖魔』”。効果、私一人だけに、勇者と魔王に相応しい力を与える。
「うん。せーのっ!」
扉が開かれ、暗闇が現れる。一歩、踏み出せば。
「シオンちゃ──!?」
瞬間的にヴィクトリアを突き飛ばす。
「ああ」
全方位から迫る攻撃。刹那にカウンター。魔王として、勇者として劇的に強化された肉体をもってしてもしかし。
「強制分断からのモンスターハウスってのは!流石に初見殺しが過ぎるなぁ!?」
何時もの強制転移。からのこれだ。
「私じゃなきゃ死んでたぞ!?」
宙を舞う視線の先、
心臓を穿たれ、
無数のピラニアに食い尽くされる自分の肉体を見ながら、
頭一つとなった私は考えるのだった。
今回だったかもしれねぇ。




