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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の七十六 そこに住まう者たち

 〔Side ジラルド〕


「なぁ!どうする!?この金!どう使う!?」


 シュリヴァンの声が頭に響く。昨日飲みすぎたか?あの発表のせいでバカどもが騒ぎまくって朝まで飲み明かすことになっちまったし。いや、単純にうるさいだけか。特に酔った感じはしなかったしな。


「私はショッピングに行くわ!洋服買って、あと気になる店の食べ歩きかしら!」


 ショッピングね。この間も行ってただろうに。というか、気になる店ありすぎじゃねぇか?シオンに聞いた話じゃ前回は一日で三十軒は回ったって聞いたぞ。


「お〜!俺はやっぱ酒だな!酒!今夜は飲むぞ〜!」


 で、こいつは酒。当然だな。だが、昨日も気絶するまで飲んでたのにまだ酒か。こいつはコイツで意味わからん。


「やめときなさいよ、あんたすぐ酔うんだから」


「ケチなこと言うなよ!じゃあ何に使うんだよ!」


「こういうのは形に残るものとか、思い出になるものに使うのよ!だいだい酒なんて何時も飲んでるじゃない!」


 形に残るもの。そういや、シュリヴァンが唯一付けてるマトモなアクセはロゼッタが買ってきたもんだったな。


「はあ〜?形に残るもん買ったって死んだときにゃ持ってけねぇだろ?それに思い出っつーなら酒飲みまくるのも思い出だ!」


「どうせ飲み過ぎて全部忘れるでしょうが!」


「なに〜!?」


 アレを思い出呼ばわりしていいのか?飲んで暴れて巫山戯て寝る。まぁ、一応思い出、か?

 というか、いくらシュリヴァンでも酒の飲み過ぎで記憶は忘れないぞ。無駄に。………逆にあの醜態全部覚えててああなの心強すぎだろ。


「ふん。あ、そう言えばドーラは?」


「私は、後でシオンちゃんにご飯でもあげようかなって」


「「えっ」」


 あ〜、こいつもこいつでちょっとおかしいからな。言葉遣いは丁寧だし、行動も真面目なんだが…可愛いもんとか気に入ったもんに対しては溺愛するからな。シオンの奴は都合の良い餌やり係としか思ってなさそうだが……


「ご飯食べてる時のシオンちゃんは大体のことなら許してくれるんですよ!抱っこしても、抱きしめても、突いても、吸っても!ちょっとくらいなら食べても許してくれるんです!まぁ、邪魔そうにはしますけど、それはそれでかわいいのでヨシです!」


 なかなか愛が重いやつだ。普通の人間なら頭おかしくなるくらい愛してくる。昔。といっても十年位前ではあるが。俺がコイツに気に入られてた頃はマジで大変だった。常に一緒にいるし。ロゼッタですら敵意出しかねないし。平然と寝込み襲ってくるし。薬盛ってくるし。断れないよう外堀埋めまくった上で告白してくるし。何より一番は。


『ジラルド。今までごめんなさい。私、どうかしてたみたい。大変だったでしょ?もう無理しなくていいからね?』


 そう言って別れを切り出してきたことだ。多分、向こうの熱が冷めたのだろう。付き合って一週間後のことだった。泣いた。


 大変だった。大変だったけどよ。俺としては滅茶苦茶愛されてるな俺!って優越感感じてたくらいには受け入れてたんだよなぁ…


 まぁ、しゃあないんだけどな。別れた理由っつーか、熱が冷めた理由がパーティー解散の危機だったわけだし。そりゃそうだよなぁ、アイツラからしたら居心地悪いったらしねぇ。ドーラからすりゃ常に敵意向けられるし、シュリヴァンからしても飲みに誘おうとすると睨まれる。そんなんだから宿もわざわざ俺等とアイツラで分けて取ってたしめんどくさいったら無い。

 そんでギスギスし始めた結果ドーラの熱が冷めて、俺もさすがに不味いと思ったから別れたわけだ。


 だから別れるのにも納得はした。そもそも俺等のは恋心とも違うような気はするしな。


「じゃあジラルドは?」


「俺?無いぞ。というかお前らもこれは使わせねぇぞ。」


「「「なんで!?」」」


 こいつら…馬鹿か?

 つーかなんでロゼッタまでそっちにいんだよ。お前はわかってんだろうが。


「全部装備と消耗品に使うからだろうが」


「そん、な…」


「私の餌付け計画が…」


 怖、ドーラ怖!何しようとしてんのまじで!?


「ま、そうよね。知ってたけど、それはそれとして何に金使うのよ?」


「あ?」


「いつになく死ぬ可能性が高いんだからやっておきたいことは終わらせときたいでしょ?だから、何したいのよ?」


「あ〜」


 確かにな。死ぬ前にしておきたいこと、か。


「ねぇな」


「嘘でしょ?一つもないの?」


「ねぇよ」   


「うわ…」


 悪かったな面白みのねぇ男で。生憎としたいことなんて無いからな。ただ平凡に生きてられたらそれでいい。まぁ、一般的な平凡とは違うが、冒険者らしく生きられたらそれでいいんだよ。俺は。


「んじゃ、装備とか諸々の準備考えてくぞ。一応最低限は向こうで用意するらしいからな、特殊な物でも頼めば用意してくれるかもしれねぇ。しっかり死ぬ気で頭回せ?いいな?」


「「「了解」」」


 来るその日に備えて準備する。それは他のものも同様だが。数日後、ロゼッタとシュリヴァンは結婚した。とはいえ、それで何かが劇的に変わることはなく、いつも通りに過ごす日々。それを受け、俺は気づいた。


 ああ、やっぱ俺に死ぬ前にしておきたいことはねぇな。だが強いて言うなら、俺はお前らと巫山戯ていてえ。死ぬその直前まで、な。  





 ━━━━━━━



 〔Side ヴィクトリア〕


「ねえ、セバス。上手く、いくかな?」


 その言葉は、暗い、暗い夜の海。明日に備え、誰もが寝静まった城下に消えていく。


「・・・大丈夫です。姫様、貴女がいる限り我々に負けはありません」


「そう?」


「はい」


「・・・」


 駄目だ。考えちゃダメなのに。セバスを見るたび、嫌でも思い出す。


「私、怖いの。また、失敗するんじゃないかって。まだ、私じゃ足りないんじゃないかって」


 セバスは歳の割に老いている。それは個人差なんてものじゃない。本来なら私と同じ。ううん、私よりも若いのに。


 私が奪った。私が、彼から寿命を削ったんだ。


「セバス。私はね、ずっと、後悔してるんだ。あの時、あの瞬間。貴方を使うしか無かったのはわかってる。貴方じゃなきゃダメだったのもわかってる。貴方が、それを受け入れてるのもわかってる。でも、その上で、なんで貴方だったのかな。私は、貴方にずっと迷惑をかけてた。苦しかったでしょ、辛かったはず、面倒だったはずよ。でも、貴方は近くにいてくれた。それが仕事だから、って」


 子供の頃の私はわがままで、心が狭くて。私よりも凄かったセバスに嫉妬して嫌がらせしてた。でも、一緒にいてくれた。見放さないでいてくれた。だけど、そのせいで。


「覚えてる?防衛線が抜かれて、彼方此方で悲鳴が上がって。地獄だった。怖かった。死ぬんだって。これで終わりだって思ってた。あの時、セバスは私の無茶振りで街にいたでしょ?だから、私は独りだったの。みんな気にかけてくればするけど、自分のことで手一杯で、不安で仕方なかった。でも、そんな時、貴方は来てくれたのよ?それがどれだけ安心したか、わかる?」


「・・・いえ。あの時は必死でしたので」


「もう、今くらいあの時みたいにしてくれてもいいのよ?」


「いえ、そういうわけにも行きません」


「そー、じゃあ仕方ないわね。じゃあ、あの時初めになんて言ったかは覚えてる?」


「・・・はい」


「『申し訳ありません。頼まれていたものを落としてしまいました。後ほど、回収して参りますのでどうかお許しください』バカね。そんなこと叱るわけ無いじゃない。来てくれただけで、十分過ぎるほど私は嬉しかったのよ?」


「・・・ですが、あの時姫様は」


「そうね。私は素直じゃなかったから『ダメよ!許さない!しかたないから次は私がついて行ってあげる!だから今は黙ってここにいなさい!』って、言ったのよね」


「・・・はい。それに加え、『こんな怪我までして約束も守れないなら用はないわ!おとなしく私に守られなさい!』とも、言ってましたね」


「ええ、だって本当にボロボロだったもの」   


 全身血だらけで、剣も折れてて、服は汚れて穴だらけ。まさに死にかけね。


「だから、私が守らなくちゃって思ったのよ。でも…」  


 そのせいで、セバスはさらに傷ついた。


「逃げ込んだ避難場所で必死に耐えて、ついに突破されて、最後に残った戦えるの人は私だけ。だから、戦った。セバスができたなら私もできるはずだって。でもダメだった。最初はよかった。けど、数が増えるにつれて傷が増えて、『あぁ、終わるんだ』だって思った時、また貴方は来てくれた。来てしまった」


 悔しかった。見るからにボロボロで、私よりも辛いはずなのに、私より動いて、戦って、勝った。


「姫様の応援が在りましたから」


「そうね。私が、無意識に貴方にバフを掛けた。この力を、貴方独りだけに」


 ただでさえ傷ついた体に、この力の全て、源流とも言うべきものを与えた。急激に高まった力は身を滅ぼす。身に余る強化は、いずれ死に至らせる。


「周りの魔物を全て倒してすぐ、全身から血が噴き出して、倒れ込んだ。なのに貴方は、こういった」 


「「『次の命令は何でしょうか』」」


「正直、怖かったわ。私がやった。私が傷つけた。私が無理させた。なのに、一切戸惑うことなく私に指示を仰ぐのよ?恐ろしいわよ、普通」


「ですね。しかし、姫様もすぐに指示を出したではありませんか」


「あれを指示と言うかは微妙だけどね」


『死ぬな!生きて!まだ死んじゃダメ!まだ何もできてないじゃない!まだ、何も、さっきの約束だって守ってないじゃない!』


 ただただ感情のままに叫んだだけで、深い意味なんて何もなかった。生きてほしい。死んでほしくない。そんな思いを叫んだ。結果が、これだ。


「寿命の使用。未来にあるはずの命を今に持ち込んだ。そのせいで、貴方はもう長くない」


「そうするしか方法は在りませんでしたので」


「そうね。そして貴方はそれを黙っていた。奇跡が起こったと言って、これでまだ戦えると言い放った。私は何も考えずそうなんだと思って、戦禍に放り込んだ。ほんと、馬鹿な話よね。今でも私は自分を恨むわ」


 最初だけなら、問題はなかっただろう。数年の寿命を失ったところで、魚人の寿命を考えれば問題はない。なにせどれだけ早くとも二百年は生きるのだから。 


「何度も、何度も死にかけた。敵の攻撃もそうだけど、それ以上に私に掛けられたバフによって」


 数分おきに全身から血を噴き出し、その度に寿命を削って生き残る。魔物を殺し、上がった身体能力で死のカウントダウンは徐々に遅くなる。殺せば殺すほど存在の格は上がり、寿命は増える。無茶に無茶を重ね、ギリギリで成り立つそれ。全てが終わってから理解した私がどれだけ泣いたか。


「ねえ、貴方はあとどれくらい生きられるの?」


「私にも、わかりかねます。ですが、長くはないでしょう」


「そうよね」


 だからこそ、明日、勝たなくてはならない。彼に次はない。なら、我等にも次はない。彼亡くして、私の本気は引き出せないのだから。


 既に、国民の避難は終えた。明日は国に巡らせたバフを切る。戦闘担当に絞り出力を上げるためだ。城周辺の水没地帯。そこであれば、私のバフがなくてもまだマシだろう。


 そして、戦地となる街もまた水没させた。海の国は今、真に全てが海にある。


「ギリギリだけど彼からの協力も得られた。私たちは、全力で攻めれば良い」


 ただ、唯一の懸念を挙げるなら。


「何処行っちゃったのシオンちゃんは!!」


 特記戦力『精霊龍』シオンが未だ所在不明なことである。

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