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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の七十四 未曾有の始まり

 その日、集められた者たちは噂していた。


 曰く、「今日重大発表あるらしいぜ」、と。

 曰く、「知ってる。じゃなきゃ集められねぇだろうが」、と。

 曰く、「最近妙に羽振りいいしギルドの金が尽きたんじゃね?」、と。


 則ち、何もわかっていなかった。もちろん、真実に迫る内容を話す者もいないでもないのだが、それはまさかと切って捨てられる内容であり、あくまで冗談でしかなかった。



 少しして、一人の女が台に立ち、静粛を呼びかける。そして、その発言は彼らを驚愕させ、その心に灯を点けた。


 曰く、「これより、強制依頼を発令する。依頼主はギルド及び王家。依頼内容は、大罪迷宮【怠惰】を冠する『フォールシグニ』の完全踏破であり、之を成すため、諸君らには命を賭して戦ってもらう。そして、勘のいいものなら気付いていると思うが、これはギルド、王家による最大限の援助を受けて行われ、一切の拒否権はない」


 誰の発言も許さず、素早く告げられたそれの後で、


「詳しい内容は追って連絡する。銀級は大罪迷宮踏破作戦対応部署の者に確認を取ってくれ」


 そういう彼女の目線の先には最近改築により新しく作られたスペースで手を挙げて並ぶ職員一同の姿。


「そして、金級冒険者はこの後すぐにギルドマスター室に来ること。いいな? では、以上、これにて私は失礼する」


 そうして台を降りた彼女だが、その歩みは扉に向けられている。

 それに対し、一部の者が疑問に思うのをよそにスタスタと歩いていき、扉を開け放った。


「ヴィクトリア王女殿下、どうぞこちらへ」


「ええ、ご苦労様」


 二人は横に並び立ち奥に消えていく。それはまさしく、この作戦が真に王家との協力作戦であることの証左であった。




 数分と立たず、ほぼ全ての金級の集まったギルドマスター室。

 背後に近衛騎士を備えた王女とギルドマスターが並んで座り、向かいに冒険者たちが立つ厳格な空気を持つ。そんななか、全ての役者が揃ったはずのそこに、扉を開け放つものが現れた。


「ヴィクトリア元気してたー?」


 則ち、魔王にして、勇者見習いを名乗る者、シオン・セレスティンである。


「あれ、今日空気重め?」


 今日も彼女は平常運転であった。




 ──────────



 どーも皆さん。絶賛空気の違いに戸惑いを隠せない私です。


「ええと、来ちゃまずかったやーつ?」


 確か呼ばれたのは金級だったよね?そして私の持つカードは金色。うん、合ってる、はず。

 あ、ちなみにこのカードは最初にもらった時から金色だった。ちなみにちなみに、ヴィクトリアも同じ色。


「いや、来てくれて構わない。というか、もっと早く来てくれ」


「えぇ?結構早く来たほうじゃない?」


 急いであるもん食べ終えてから来たし。まだ数分しかたってないよ?


「・・・まあ、いい。そこに座れ」


 座れ?床しかないし、みんな立ってるのに?


「なぜ?」


「シオンちゃん。おいで、ここに座ろっか?」


 見ればドーラが座っている。恥をかかせるのも悪いし、日頃お世話になっているので大人しく抱きかかえられるように座る。


 少し、空気が緩んだように感じる。ジラルド達顔見知りはもちろん、近衛騎士たちも少し穏やかな様子。ヴィクトリアは珍しくまともな表情をしている。その裏はどうか知らないけど。


「んっんん!!では、之より迷宮踏破部隊本隊の作戦等の確認を行う。わからないことがあれば、適宜確認するように」


 ギルマスがそういうと、一人の男が手を挙げた。


「なんだ、ガルダン」


「いや、うん。誰です?あの幼女。ここには金級しかいないのでは?」


 彼の疑問に対し頷きを見せるほか三人。そうそう、この部屋にはジラルド達のほかには五人いる。つまり、反応を見せていないものがあと一人いるってことだ。


「ああ、そうか。お前たちは外に出ていたから知らないのか。彼女は、」


 ギルマスが私のことを紹介しそうになった時、残る一人が口を開いた。


「お前ら、帰れば?」


「は?それ、俺らに言ってる?」


「そうだが?他に誰がいる?」


「おいおい爺さん。ついにボケたか?俺らは金級だぞ?」


「だから言ったんだ。帰れ、と」


「はぁ?」


 あらら、これって一触即発ってやつ?

 私の挨拶シーン消されて何だこの爺さんと思ってたけど、新しく私の出番ができるなら何でもいいや。


「彼我の実力差すらわからん奴は足手まといにしかならん」


「なんだと!?」


「そもそも、金級であることを誇ってるうちは弱者でしかないしな」


「オイオイ爺さん。喧嘩売ってんなら買うぞ?表出ろよ」


 おー、険悪ぅ。でもこれってあれでしょ?こうなってきたらさ、あの爺さんならきっと…


「いやだよめんどくさい。如何してもってんならそこの嬢さんに頼め」


「あぁ?なんだよ、逃げんのか?そんな幼女に守られて恥ずかしくねぇのかよ!?」


「なにもないが?それに、お前らはともかくあっちはもうやる気みたいだしな?」


「は、あ?」


 くくく、いまさらか。人のこと馬鹿にしてきた時点からこっちの準備はできてるんだよなぁ。


「さて、表、行く?それとも、ここがいい?」


 未だにドーラの膝の中ではあるけど…それはそれでいいと思う。弱そうで、守られてそうな奴から放たれる極大の威圧ってすっごい怖くない?得体のしれないものって感じがしていい演出だと思う。魔王城できたらそんなコンセプトのエリア作ってもいいかもしれない。


「な、ぁああ!ふざけんな!なんでこんな奴に、俺が、俺様がぁ!?」


「ふふっ、清々しいくらい若いねぇ。でも、そんなだからそこの爺さんに言われるんだよ?『帰れ』ってさ?」


 若さは武器にもなるけど、基本的には欠点になる。若さゆえの過ちってやつだ。経験不足はそれだけで死に直結するのだよ。それが前人未到の場所ならなおさらね。


「ま、若さで私に敵う奴なんてそうそういないんだけどさ」


「ぐっ、ぐぅうう!!」


 ありゃ、まだ諦めない。結構強めの威圧だと思うんだけどなァ。やっぱり、魔力使わないとこんなものかぁ。だったら、仕方ないよね。うん。仕方ない。だって平和的解決できないんだもん。実力行使もやむ無しってやつだ。


「ふふふ。じゃ、行くよ?」


 既に向こうは剣を構えてるわけだし…


「致命傷の一つや二つは許容だよね?」


「っ!?しゃぁ!?」


「あら、さっすがぁ!」


 鳥かごのように展開した見えない刃が内に収束して、内から展開された障壁に阻まれた。うんうん。さすが。金級ともなると何となくで対応できるんだなァ。でも、


「まだまだいこっか!」


 タイミングをずらしていくつもの刃が飛んでいく。発射地点は私の気分。刃の形も私の気分。なんなら刃ですらないこともある。全部見えないからはたから見たら変な人にしか見えないけど、あっちからしたらいつ死ぬか気が気じゃないよね。


「達人同士だと静かに一瞬で終わるらしいから、そういう意味じゃ私たちは似た者同士かもね?未熟者って、点でさ」


 向こうも捌けてはいるけど、まだまだ荒いし。こっちはもっと荒い。というか気分でやってるから法則も何もない。癖とかはあるだろうけど。


「くぅうううううう!!!邪魔なんだよこれ!お前ら!やんぞ!」


「いや、でも」


「いいから、やんだよ!死ぬぞ!?」


「・・・わかった。悪く思わないでね」


 おっと、残りの三人もくるみたい。やっぱ彼らはパーティーでの連携が主なわけだし、こっからが本番かな?


「にしし!」


 おっと、変な笑いが。最近戦闘狂なのよね。ふっしぎ~。


「死ねぇ!」


 最初からいた男が私に近づいてくる。やっぱもう慣れちゃったかな?でもさ。こっちはまだ座ってるわけで、その軌道、ドーラのことも切るつもりだよね。


「なら、容赦なんてしないよ?」


「おい、これ以上暴れるなら全員出ていかせるぞ!」


「「「ッ!?」」」


 動きが鈍る。まっずい!最近叱られてばっかだったから!?


 後ろの三人が動きを止めたのはいい。こっちが術を消せばいいから。でも、なんで止まんねぇんだよ。お前は!


「死ねぇぇ!」


 横ぶり。まとめて斬られる。いや、問題はない。けど、


「黙れ、若造」


 何時振りか、低く、冷たい声が出る。反射的に、目の前に斬撃を構築しようとして、その全てを覆うようにして盾が発生する。


 〈不滅(ウード)の愛盾(・クラルヴァイン)


 かつて使用した其れの効果は、永続。常時展開され、私が攻撃を受けるとき、勝手に発動して盾が防ぐ。さらにそれは私の動きを阻害しないというシンプルにして最高の盾。


 だがしかし、それが内と外、双方の攻撃を一部防いだ。


「な、あ?」


「運が良かったな」


「なにを、いって」


「精霊の気紛れでお前はそこにいる。次はない」


 あの瞬間。奴の体に直撃する剣だけが防がれた。一ミリでも動けば当たるというものは通されたが。それがわかっていたから、あいつは止まり、今こうして生きているわけだ。


 ・・・さすがに、遊びで人死にを出すわけにはいかないからな。危なかった。ちょっと頭に血が上った。最近は短気というか、感情が暴れやすくて困る。これも多分前にジラルドが言ってた魔堕ちってやつの作用なんだろうけど。

 あれかね。魔力が少ないないと鬱になったし、過剰だとハイテンション通り越してイカレテンションに何のかね?


「シオンちゃん」


「あ、ドーラ。大丈夫?」


「シオンちゃんが守ってくれたからね!私は大丈夫だよ~!」


 うっ。痛い。・・・私にダメージを通すほどの抱擁力とは?


「ぁ」


「姫さま?」


「・・・何でもないわ」


 王女が一瞬揺らいだな。あれ。


「さて、落ち着いたところで、ガルダン。多少の行き違いはあったとはいえ、重要な会議中に私闘を行った。さらに、お前は本気で殺そうとしたな?」


 行き違い。行き違いでいいのか?・・・いいか。


「・・・はい」


「即刻、出ていくといい。しばらく頭を冷やせ」


「・・・はい」


「あの、俺たちは…」


「好きにするといい」


「・・・はい」


 ということで、ガルダン君はご退場。ほかの人は残るみたいだね。薄情?いや、一人にさせたいって感じかな?今は優しさがつらいころだろうしね!


「そして、シオン」


「はひ!?」


「・・・君は、後程沙汰を下す。今は大人しくしていてくれたまえ」


「・・・はい」


 くそぉ。せっかくお咎め無しかと思ったのに。


「それと、レオン。君もあまり他焚き点けるようなことを言わないように」


「サーセン」


返事が軽い。絶対反省してないなこれ。私はいいけど。


「・・・では、いろいろとあったが、改めてダンジョン攻略作戦について話していく。注意して、騒がずに聞くように」


 ギルマス…大変だね。やっべ睨まれた。

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