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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の七十三 無知故の過ち

 野郎どもが集まるギルドの酒場。その中心にて。


「うぉぉぉぉぃぁーー!!!」


「ぐ、ぐぐぐぐっ!!!」


 とある二人が一つの樽を囲んで争っていた。


「ジラルド!男なら負けんな!!」

「俺の全財産!!お前に託したんだからなぁ!?」

「負けんなぁ!金級の意地見せろぉ!!」


「シオンちゃん!頑張れー!」

「そんな奴潰しちゃえ!」

「勝ったらご褒美あるからねー!」

「俺の目は正しいはずなんだ!」

「「いけー!!」」


 と、白熱した勝負になっているわけだが。

 では、いったい何をしているのか。それはもちろん、アレである。


「クハハ!ジラルド!もう負けていいんだぞぉ!?」


「バカか!負けるわけねぇだろぉ!?」 


 互いに手を握り、肘を付け、手の甲が先に土俵についた方の負け。そう、腕試し代表、腕相撲である!


「おいこら体重載せんなぁ!」


「うっせぇ!腕相撲は全身使うもんだろうが!」


「ぐぬぬ!」


 拮抗。中央からまるで動かない戦い。そして、未だ両者()()()強化なしである。


「お前、フィジカルどうなってんだぁ!?」


「お前が言うな!つうか、言葉遣い乱れてんぞぉ!?」


「そんな余裕、無いんじゃい!」


 押されて、押して、戻る。完全な拮抗状態。状態を変えるのは体力のみ。


「そろそろ疲れてんじゃないのぉ?」


「ハハハ、これくらいあと一日は余裕だが?」


 クソが。やせ我慢しやがって。


「なら、そろそろ強化でもするかぁ?」


「ッ!?そうだなぁ!せっかく会場も強化されてんだしなぁ!?」


 ふ、ふふふ。いい顔しやがるぜまったく。


「じゃあ、3、2、1でいくぞぉ?」


「いいぜぇ?やってやんよぉ!」


 身体強化なら結局は妖力勝負!なら、勝てる!


「いくぞ!サン!ニー!イチッ!〈勇者(ブレイバー)〉!!」


「〈英雄ゥ〉!!」


 両者同時の強化発動。からの、拮抗。


「なぁ!?」


「早く!倒れろやぁ!?」


(ウッソだろお前。こっち全力の強化やぞ!?)


(なんで耐えんだよ!?全力の強化だぞ!?しかもこの数秒に賭けてんのに!?)


「クハハハ、ハハ!イイねぇ!追加じゃオラァ!


 〈英雄(ヒロイック)ゥ〉!!」


 全力!からの!全霊!コレにより!


「私の!勝ちじゃあっ!!」


「くッ、クソがぁあぁあぁぁ!?」


 ━━━バキッ!!


「「な、ぁああぁ!?」」


 私達の力に耐えきれず、強化されたはずの樽が、割れた。


 あ、やばい。勢い止まんない。


「グエッ」


「ハ、ハァ、はぁ〜。アッブネェ、負けるとこだった」


「なぁ〜!!!実質私の勝ちだろ!?」


「いーや!決着つく前に壊れたからノーカンだ!」


「いやいやいや!?アレはどう見ても時間の問題!あと一秒で私が勝ってた!」


 なんならあとコンマ数秒でも勝ってた!だから私の勝ち!


「うっせぇ!つうかソコどけ!人の上に乗って喚くんじゃねぇ!」


「はぁ!?乗せたのお前だろうが!!てか話逸らすなぁ!」


「まぁまぁ落ち着きなさいやお二人さん!負けず嫌いもいいけど、そんな余裕ある?」


「「シュリヴァン!お前が勝敗決めろ!」」


「ありゃりゃ、こりゃダメだ」


 ダメ?こいつは一体何を言って…!?


「随分と余裕だなぁお前ら!コレで何度目だ?2回、3回…いや、4回だったか?」


「あっ、いや、そんな多くないっ!?」


「ほう?じゃあ何回だろうな?数えてみるか?安心しろ、毎回書面にまとめているからなぁ?」


「「はい、すいませんでした」」


 負けた。毎回この人に勝て無いのはなぜだろうか。圧ってやつのせいなのかもしれない。


「よろしい。ところで、お前たちはよく知っていると思うんだが、最近ダンジョンモンスターの殲滅を行っていてな?」


 あ、やばい。この流れは…


「今日、ちょうど再発生の日でなぁ?お前ら、全部処理してこい。全部、な?」


「はいっ!」


「え、えぇと、全部っつうと」


「もちろん上層から深層までだが?」


「今から?」


「ああ、今からだ」


「いやぁ、結構疲れてるっていいますか、だから今からは厳しいと言いますか…」


 おいやめろ。これ以上被害デカくすんじゃねぇ!


「ほうほう。なるほど。なら、明日でもいいぞ?」


「マジすか!?さっすがギルマス!話が分かる!」


 あ、やったなアイツ。


「ギルマス。私は今からでいいです!」


「そうか?」


 悪いな、ジラルド。被害はお前だけで負ってくれ。


「いや、しかしな。ジラルドが疲れているわけだし、シオンもきっと疲れていることだろう」


「えっ」


「だから、お前も明日からで構わないぞ?」


「えっ、いやっ!私大丈夫です!全然やれます!全然元気有り余ってるのでっ!」


「そうか?ふむ。なら尚更明日からでいいぞ?まだできる。そう思ってるときほど危険だしな」


 おい待てやめてくれ。頼むからやめろ。私だけでも逃してくれ!


「そ、それは一般人の場合です!私は問題ありません!龍ですから!」


「・・・ふむ。確かに。種族が違えば常識も変わるもの、か。いいだろう、今から行ってもいいぞ?」


「ありがとございますっ!!」


 よかった!生き延びた。私だけでも逃げる━━!?


「だが、そうか…」


 ━━━おい待て。もういいだろ。コレで終わらせてくれ。私の勝ち逃げで許してくれ、ください!


「備品を壊してしまうほど元気が有り余っているならちょうどよかった。本来は冒険者成り立ての者向けの依頼なのだがな? 狩場を失えば暇になるだろうということで高位冒険者も受けられるようにしてある物があるんだ」


 あ、終わった。


「まだまだ人手が足りないんだ。そのあり余る体力をぜひとも活かしてくれ給え。あぁ、依頼票は戻ってくるころには用意しておこう。安心してくれ。それじゃあ、行っていいぞ」 


 サヨウナラ、私の狩猟生活。コンニチワ、社畜生活。




 ━━━━━━━━



「うわぁぁぁぉーーーー!!!!」


「どうしてっ!どうしてこんなことになるんだぁ!?」


「私が!私が何をしたっていうんだぁーーーー!?」


「はぁ、はぁ、はぁ。うぅ、ごめんよモンスター。私だってこんなことしたくないんだ。お前たちを、全滅させたくはないんだ!」


 だって!


「リポップが遅くなるんだもん!」


「うわぁあああーーー!!!」 


 ダンジョンのモンスターは、全滅しても何処からかリポップする。しかし、しかしだ。全滅状態より、一部生存状態のほうがリポップ間隔が短いのだ!


 生存状態なら一日でフル回復するところを、全滅状態なら一週間後に回復を始める、位には遅くなるのだ!  


「しばらくお別れだよ、我が獲物ぉぉ!」


 暇な時に来ては殲滅して、一部残して遊ぶを繰り返して私の努力は、一体何だったのだろうか。


「つうか!どうして!全滅させるんだよぉ!?」


 一番最初の時にロゼッタさんと一緒に考えたけど!まだ何もわかっていない。ただ、あれから二月の間全滅状態をダンジョン全体で維持してたことくらいしかわからない!


「ダンジョン素材で武器防具も色々作ってるみたいだし、戦争でもする気かっての!?」


 にしたって、作り過ぎだろうがよぉ!


「兵隊ぜんぶ深層モンスター産装備にする気かっての!」


 要らんだろ!そんなの!金に対して見合ってない!そんなの無くてもそこらの戦争なら余裕で勝てるだろうが!


「どうして!どうしてなんだぁ!」


 ━━━上層、中層、殲滅完了。


「はぁ、次、行こう」


 これ終わったら、野良ダンジョンにでも行こうかな?

 踏破済みの大して難易度も高くないダンジョンだけど。


「にしても、最近インフレ凄くて飯に困る」


 後で代わりにジラルドにたかるか。


「あれ?そういやアイツずるくね?」


 明日からってことは…


「深層しか戦わねぇじゃねぇか!?」


 絶対ぶん殴る。あっ、そういや今日の勝敗ついてないし…


「殺しに行くか」


 ハハハ。イイじゃん。


「元気出てきた!」


 ━━━下層、及び深層、殲滅完了


「ハハハ!早く、来いやぁ!」




 ━━━━━━━━━


 ━━━━━━━━━




 全てのマグマが涸れ果て、地面が砂地と化したその場所で。


「よぉ、待ってたぜい?」


「・・・どういう状態だぁ?お前」


 眼前に立つのは少女の姿をした片腕の無い龍人。


「どういう?さあ?よくわかんねぇな?」


「・・・あー、わかったわかった。俺が悪かったよ。あれは俺の負け、そんで此処の清掃も任せて悪かった。代わりと言っちゃなんだが、この後の分は全部俺がやる。それじゃダメか?」


 身にまとう装備を確認しながら、淡々と謝罪し、償いを訴える男。だが、その表情は硬く、思ってもないことは確かであった。


「わかってんだろ?答えなんて」


「ああ、そうだろうな。わかってるさ、だが、できればやりたくなんてないんだよ。俺は」


「そうかい。でも、私はそうじゃない。戦おうぜ?」


 全身に漲る殺気。放たれる圧も、佇まいも、何もかもが言っている。これは、殺し合いだと。生存競争であると。


「ルールは」


「ない」


「馬鹿が、そんなもん戦いじゃなくて殺し合いだろうが」


「そうだな?じゃあ、殺し合おう」


 その紅き瞳に陰りはなく、爛漫と輝き、笑みが浮かぶ。


「これだから、上位存在は嫌なんだ。生きてる世界が、違うのかねぇ?」


 突如として起こったソレ。


 しかし、その男は何一つ驚きを見せず、淡々と剣を振る。


「あーあ、失敗した。もっと休養とってくりゃよかった」


 迫る猛攻に軽口すら述べながら。


「ハハハハハ!ハハ!どんどん行くぞォ!もっと!もっと楽しませろよォ!?」


「バーカ、まともに誰がお前の相手なんてするか。大人しく眠っとけ」


「ガ、ァ?」


 ただひと振り。


 感情のままに振るわれ、粗さを増したその剣を避け、柄で以て打ったその一撃で彼女は昏倒した。


「ギルマスもこんな戦闘狂だとは思ってなかったんだろうな。それはそれとして、危険手当はもらうが」


 緊急だし、何時もの倍…いや、今回は向こうの不手際だし桁一つ分くらいなら足せるか? などと呟きながら、彼は少女を担いで来た道を戻る。


「あー、無駄に疲れた。つうか、魔人化でもきついのに魔龍化とかもっと無理だろ。早めに処理できてよかったわー」



 ━━━━━━━━



 その後、ギルド、冒険者だけでなく国からもダンジョンに行くことを規制される彼女の姿はとても哀愁漂うものだったとか。


「いい気味だわー」


「んだとごらー!やってやろうか!?」


「無理だろ。また負けだ」


「む~~~!!!まってやがれ!調子取り戻したら殺しに来る!」


「は、マジでやめろ。死ぬ」


「むふーー!!」


 なんて姿も、目撃されたとか。ちなみにこの後、めちゃくちゃ可愛がられた。


・理解不能?

・脈略がない?


わかります。その気持ち!ということで。


『知恵の国』大書館所蔵【ダンジョン及びそれに類する事象について】より一部抜粋。


ダンジョンとは、迷宮である。

ダンジョンとは、牢獄である。

魔を閉じ込め、秩序を維持するものである。

魔を集め、圧縮し、個として形作るものである。

故に内部は魔に満ち、侵されている。

我らは狩らなければならない。

魔のモノを祓い、秩序を保たなくてはならない。


されど忘れてはならない。魔とは、我らに害なすものであると。

小量ならば、次第に肉体に融け行き、力となる。しかし許容を超えれば、それは毒として体を蝕み、思考を蝕み、その魂は穢れ、魔に落ちるだろう。

則ち、魔人であり、魔堕ちである。

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