其の七十一 宴も竹縄
紅穹響く絶なる咆哮
それが、今出せる私の最強技である。その威力は凄まじく、かつての指輪使用時の火力に近いものを出せる。まあ、あくまで近い、であって及ぶことは全くないのだが。それでも前に核爆発を真似しようとして使ったやつと同等以上の火力が出ているのだから良しとしよう。
とはいえ、だ。それだけの火力が出るということは当然対価も大きく、早々使えるものではないのも事実。具体的にはあの偽龍を作るのがめちゃくちゃ難しい。いや、当たり前なんだけどね?
そもそもが消耗品じゃないどころか一生もんの装備アイテムなんだから。
「はあ、疲れた。めちゃ疲れた。・・・次!ロマン砲打ちたいやつは手を挙げろ!私は休む!」
「お、おぉ!俺が行く!昔作ったはいいけど溜め長すぎて使えなかったやつあるんだよ!」
「俺も!ずっと馬鹿にされ続けてきたこの宴会芸を活躍させてやる!!」」
「馬鹿ね!今の見てたらわかるでしょ!やっぱり時代はビームよビーム!ドラゴンブレスも目じゃない火力出してやるわ!」
おお~、わちゃわちゃしてきた。良きかな良きかな。
「別に全員同時でもいいぞ~、FFは無くしてやるから。あと、ドラゴンブレス超えるならさっきの位は超えて見せろ~」
「んっ!?そ、それはちょっとぉ…」
「くはは!正論言われてやんの!」
「うっさいわね!そっちこそただの宴会芸で何ができるってのよ!」
「んだとぉ!?なら見せてやんよ俺の宴会芸!必殺ぅ!爆炎剣!」
「ちょっ!?あっぶないわねぇ!?というか!密室で火なんて使ってんじゃないわよ!死ぬわよ!?」
「んな!?そ、それは確かに」
「いちゃついてるとこ悪いけど、酸素とかもいい感じに調整しとくから問題ないぞ~」
「「いちゃついて!?」」
まあ、やるのは私じゃないんだけど。いやぁ、便利だよね。ウードって。私ができなくてもあいつができるならできるんだから。これも存在同化のおかげかな。
さて、そんなこんなで私が置物に徹してる間に周りはずいぶんとひどいことになっている様子。
もともと私の攻撃で抉れて大量出血してたのはもちろん何だけど、燃やされたり、切り刻まれたり、斬り開かれたり、孔を空けられたり。お祭り騒ぎなんだよね。
「フハハハハ!久しぶりのサンドバックだぜぇ!」
と、素手で暴れる者もいるので派手な技だけというわけでもないのも余計に祭り感あるよね。わかる?わからないかも。
まあ、そんな風にしてれば当然受けるほうは堪らないわけで。
「─────!!!??」
馬鹿みたいにうるさい雄叫びを上げて暴れまわることとなり。
「うおぉおお!?」
「踏んばれお前らぁ!そんで攻撃だぁ!」
「食われた恨みィ!」
「晴らさで置くべきかぁ!!」
狂気すら感じる感じでやってる彼らなので。
「─────!!??」
「はっはぁいっちばんのりィ!!」
「うっそだろおめぇ!?俺が開通したかった!」
「いいなぁ!クッソやっぱ地道が一番かよ!」
「おい!お前らそんなこと言ってねぇで受け身とれよ!?」
「「「ジラルド!?」」」
「おっし、執刀医俺で解剖します!」
「「「シュリヴァン!」」」
「いっくぜぇ~!あらヨット!」
乱打で内から開通した穴から声が聞こえ、途端に世界が広がり、明るくなった。
「「「うおぁあああ!?」」」
切り開かれた腹から臓物とともにフリーフォール。だがしかし。
「ラストスパート!行くぞ!!」
「「「オウッ!!」」」
士気は十分。なら!外の連中と合わせて全員生存大団円と行こうか!
「主役は譲ってやるから、ありったけのバフをもってけ!〈英雄賛歌〉!!」
全員が加速する。強くなり、存在強度を増していく。
「─────!!!」
クジラの咆哮。聴くものすべてを威圧し、硬直させるそれだが。
「効かねぇなぁ!ぼろぼろのお前なんか、怖くねえ!!」
今のあいつらは畏れない。そして、
「露払いは任せな!たまには良いとこ譲ってやらぁ!」
シュリヴァンが道を作り。
「────ォォォォ!!!」
咆哮とはまた違う風鳴音。何か、来る。
「うっせぇんだよ!!!これ以上、明かり消されてたまるか!!」
クジラの開いた大口そこに光りが集まって、ビームが…!?
「どいつもこいつも!芸がねぇんだよ!!」
ジラルドの持つ大盾が発射されたそれを逸らして、こっちに来た。
「はぁ!?なんでこっち!?まぁ、何とかするけど!」
今夜のおごりはジラルドからだな。あと、叱られるときにはあいつに押し付ける。
「そんくらいで手打ちにしよう。〈受け止めるは大盾〉」
逸らされ、謎に威力を増したそれを、緑大盾が受け止め、全てを飲み干す。
「ふぅ、ちょっとは回復したかな?それはそれとして夜は財布から全て消してやる」
こっちは終わり。向こうも…元気だなぁ。
「ハッハァ!討伐禁止指定モンスター《サーヴィシュナ》、撃破だぁ!!」
「「「おっしゃぁぁぁああ!!!」」」
地に落ち、血だまりに臥すクジラ。その上に立ち勝鬨を挙げる冒険者。
「うんうん。まさに異世界。正に冒険者だね!」
「何がだよ」
「お、ジラルドじゃん。よく顔出せたね?」
「おい、やめろめんどくさい。こんな暗いとこで戦えるか」
「え?暗い?」
「あれ、気づいてなかったのシオンちゃん? そっか、龍だと夜目とか聞くもんね」
「それはあんたら高位冒険者も一緒…て、クラゲがいない?」
私が一生懸命に守って、うざいくらいに絡んできたあいつらが、いない?
「ジラルド?そういやあんた、なんで最後前衛に」
「・・・いや、な?」
「アハハ、守り切れなかったんだよ。ジラルドは」
「なんで?私が頑張ってたのに?あんたはそんな楽してたの?」
「いや、楽はしてねぇぞ。ただ、お前があいつの体内で大暴れしたせいでずっと雄叫び上げ続けて守り切るなんて不可能だったんだよ」
なるほど。一理ある。一理は。納得もある。けど、それはそれとして。
「そう、タンクなのに」
「確かに。タンクなのに」
「うっせぇ!あんな量守り切れるか!?つうかシュリヴァンお前も手伝えよ!暇してたろ!」
「ほう?それはいったいどういうことかな?」
「い、いやぁ?俺はあれだよ。みんなやる気に溢れてるから殺しちゃまずいよなぁ、って手加減して遊んでただけで。ちゃんと動きやすいようにサポートも入れてたし、ちょくちょく死にかけのやつ拾ってたし。それに俺倒す以外に守る方法持ってないし」
「なるほど、一理ある。許す」
「ははぁ、慈悲に感謝いたします」
「うむ。それじゃ、ジラルドが今日の宴の費用全持ちな」
「はぁっ!?ザッケンナ!?なんでだよ!?」
なんでって言ったら、最後こっちに押し付けたビームが理由の六割だけども。残りは奢らせたいだけ。
「お~い!全員傾聴!ジラルドのおごりで宴やるから早く剝ぎ取ってギルド戻んぞ!!」
「「「おっしゃあ!!」」」
「ジラルド、ごちになります」
「んな!?お前は自分で払えよ!?」
「あ、お前は水龍酒飲むなよ?」
「嘘、だろ」
「そんじゃ、素材取って帰るかぁ」
ちなみに、この後の剥ぎ取りはめちゃくちゃ早く終わった。やっぱ人数と士気の高さって大事だね。
あち、最後帰るときにみんなしてジラルドの背中たたいて感謝してくのがめちゃ面白かった。特にその時のジラルドの顔。外堀埋められすぎてどうしようもなくなった時の顔だよ、あれ。
──────────
「全員飲み物持ったなぁ!」
「「「おう!」」」
「そんじゃ行くぞォ!新たな未来に!乾杯っ!!」
「「「かんぱーい!!」」」
適当に用意してもらった台を降りて、手に持つジュースを飲む。
「うん。うまい」
ほんとは酒でもいいんだけどね。過保護な連中が多いのだ。
「お疲れ様ぁ、料理はもう来てるかあら食べなぁ!」
呂律が回ってない。テンションがフラフラしてる。
「なんかもう酔ってね?」
「ああ、シュリヴァンは酒に弱いんだ」
「そんな奴があんな酒頼むな!」
「え~?俺あ弱くない!今日は飲むぞォ!」
うっそだろお前。前回から何も学んでないのかよ。
「え!水龍酒ないの!?なんで!?金はあるよ!?」
「す、すいません!それが、前回の提供時ひどいことになってしまったらしく、提供するな、と」
「えぇ~!?ダメなの!?」
「はい。前回も本当はだめだったらしくて、前回提供した人は、その、無賃労働中でして…す、すいません!私はこれで!」
なるほど。
「かわいそうに」
「な、酔っ払いの相手は嫌だろうな」
「っていうか、水龍酒の処理どうするんだろ?高いでしょ、あれ」
「まあ、そうだな。だいぶ赤字だろうな。でも、今回俺らが持って帰ってきた素材で持ち直すだろ」
「そんな高いの?あれ」
確かに強かったけど、そこまで価値あるかといわれると…ボロボロだったし。
「ま、希少価値だな。あいつは本来討伐禁止指定、つまり、戦うなって言われてるやつの素材だからなぁ。出回ることもないうえに強い。そのうえ、討伐禁止判定だから買取金額は適正価格の一割ってとこか?」
「うぇ、赤字じゃん」
「そうだが?しかも罰則金まで俺が払わされてるんだが?」
「ま、まあそっちは死者いなかったから安かったじゃん」
「・・・・はぁ、無駄か。せめてお前が自分の食費を自分で払ってくれればよかったんだがな?」
「それは、ヴィクトリアに言って?多分私の食費はあっちに言えば建て替えってことで返ってくるから」
「お前、なかなかにクソガキだよな」
「い~え?そんなことありません」
私はいい子。あまり迷惑にはなってません。ジラルドは罰も兼ねてるのでノーカンです。ヴィクトリアのほうもこの前騎士に追い立てられたり王に殺されかけたからノーカンです。
「そういや、ほかのメンツはどうしたの?」
「他?ああ、女子連中なら王女と買い物行ってるよ」
「・・・あっち行かなくて正解だった」
「だな」
本当に。もう二度と着せ替え人形になんてなりたくない。少なくとも一年は。
「おうジラルド!嬢ちゃんも!二人だけで楽しんでないでもっとこっち来いよ!」
「うえぇ、俺はあんま騒がしいの嫌いなんだよ。何のために何時も端に座ってると思ってる」
「私は、如何しようかな?」
「やめとけやめとけ、玩具になるぞ」
「馬鹿言うな、これはれっきとした決闘だ。男と男が拳を突き合わせてどっちが強いかを競う遊、決闘だぞ!」
遊びって言ったな?
「お前も遊びだってわかってんじゃねぇか」
「そんなわけあるか!?れっきとした男と男の戦いだぞ!」
「今勝ってんの女だけどな」
「冒険者と冒険者の決闘だからな!」
言い換えやがった。
「じゃあ、私も行くかな」
「マジか!オラオラお前ら!飛び入り参加者のお出ましだ!!」
「マジかよ!」
「ふ。ふふふ。いいじゃない。受けて立つわ!子供だからって手加減しないわよ!」
「私も手加減し─」
「お前はしろ」
「強化なしでやってあげる」
「ふ、ふふふ。いいじゃない、その自信、粉々に打ち砕いてあげる!」
同だろ。強化なしで勝てるかな?あと、樽壊れないで済むかな?
「ジラルド、強化頼む」
「はぁ、樽と、ついでに床にもかけはした。壊すなよ?」
「「・・・・??」」
「オーケーオーケー。私は学ぶ女だから」
「お前男でもあるだろ」
それは言葉の綾ってやつだ。それより、集中していこう。
「では、両者準備はいいな?レディー!ファイッ!」
「ぐっあぁあ!?」
「あれ、やっちゃった?」
「勝者!ええと、嬢ちゃん!」
「「「うおぉおお!!」」」
なんか勝っちゃった。いや、勝つ気ではあったけど一瞬過ぎない?
「そりゃそうだろ、お前龍だぞ?フィジカルで負けるわけねぇだろ、この程度の相手に」
「なるほど」
そういやそうか。普通の人間は簡単に地形変えるフィジカルなんて持ってないわな。
「く、っくそぉ、敵を、頼む。ジラ、ルド…」
あ、遺言。
「いや、結構だ。そういうのはシュリヴァンにでも頼め」
「あいつ酔いつぶれてるから…」
「くっそ肝心な時に使えねぇ」
「おいおい、なんだぁ?怖いのか?負けるのが。いやあ、そうかそうか、あのジラルドさんも勝てない相手何だなぁ!こりゃ挑んだだけザナちゃんのが上かぁ?」
「ああ?いいぜ、うけてやろうじゃねぇか!」
「うぉぉ!それでこそジラルドだ!」
「「「うぉおお!!!」」」
沸き立ってるとこ悪いけどさ。私の意思ってどうなってるんですか?まあ、いいんだけどさ。
「それじゃ、準備はいいな?」
「本気で勝つか」
「途中から強化入れるわ」
「レディー!ファイ!」
そんな感じで過ごした宴はなかなかに楽しかったです。決着?そんなものはない。強いて言うなら、
「またお前らか、反省として自分で直しとけ」
ギルマスが怖かったです。




