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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の六十九 即席レイド VS クジラ(サーヴィシュナ)

 シュリヴァンがクジラを狩り、ジラルドが冒険者を集め、私がクラゲたちを守ってイソギンチャクを仕留める。


 うーんなんとも。悪くはない、悪くはないけども。


「面白みにかけるよなぁ?」


 現状あのクジラはできる限り早く殺すべき。だけども。あのクソッタレな神ならば。一個人の感情で私を苦しめたアイツなら、面白さを優先するだろう。


「眼には眼を、歯には歯を。神を殺すなら神になれ。それが五割。もう半分は、私がやりたい」


 左手で剣を握り、空振り。同時、多地点で斬撃が生じる。斬撃の複製からの出力。やってることとしては離れた場所に武器を生み出すのと大して変わらない。


 ただ、それが目に見えず、実体を持たないと言うだけで。


「さぁて、久方ぶりの指揮役だ。盛り上げていこうか!」


 周囲のイソギンチャクは斬った。だから私がすることはクラゲを守るだけ。なら、余裕。


 ━━━〈反響〉〈拡声〉


 まずは声を届ける。演説だ。


「総員傾聴!こんな場所でわざわざ命をかける大馬鹿者どもよく聞きやがれ!」


 反応は薄い。何処か呆気にとられている様子。しかして、転瞬。


 空間が湧き上がる。この場にいるのは冒険者。人類の最高峰たる銀級。故にこそ、自身に対する自負が、誇りは強い。


「結構結構。威勢がいいのは嫌いじゃない。が、相手は選んで騒げ?」


 久方ぶりに圧を発し、冒険者どもに向けてやる。

 したらば面白いように震える大馬鹿者ども。

 銀級、人類の最高峰。それは言い換えれば、その先との違いを誰よりも知っている者たちである。


「さて、皆が納得したところで、一つ、問おう!


 お前らは、()()()()()


 今、お前たちは選ぶ立場だ。

 このまま我らに守られるか。

 自分を信じ、難敵から逃げるか。


 或いは…共に並び立ち、かの難敵を打ち倒すか。


 しかして我らはその全てを許容しよう。

 貴様らがどう選択しようと、あのデカブツか我らが殺す。何も気にする必要はない。お前たちは巻き込まれただけ、事後処理は我らで全て行おう」


 ━━━〈酔狂〉


 空間に広がる()が理性を蝕む。


「サァ、()()()がいい。()()()()がいい。()()()()()、ただ、()()()()良い。全て、我らがどうにかしよう」


 銀級。どんな状況下でも冷静に、正しい判断をする者たち。だがしかし、酔が、理性を侵蝕する。


 ━━━〈高揚〉


 気分が、上がる。


「アァ、素晴らしき哉。ただ一人!何一つ引けを取らず、正面から対峙し打ち破る!彼の者の何と勇敢なことか!なんと、強きことか!」


 視線が、クジラと対する一人の男へと集中する。攻撃を見切り、着実にダメージを与え、笑みすら浮かべて踊り舞う。


 その姿はかつて夢見たもの。彼ら()が目指した理想の体現。憧れが、身を焦がす。


 ━━━〈熱狂〉


 体が熱くなる。熱に浮かされ、自然と心が弾み、世界がシンプルになる。


「再度問おう!

 お前たちは、何を目指す?

 何を追い、何を成し、何に成る?

 未来はわからぬ。故に変わる。ならばどうする。


 ()()()か、()()か。


 世界は簡単だ。複雑に考えることなど何もない」


 ━━━〈勇壮〉


「三度、問おう!


 挑むか、挑まぬか。


 我らは受け入れよう。その勇気を認めよう。


 武器を取れ、己を信じ、友を信じろ。今、この瞬間より我らは皆、友である。共に、奴を討つ!」


 洞を駆け巡る熱狂。士気は絶頂。全員参加。準備は、整った。


「さぁ!我が灯りを灯す!何も気にせず、暴れるがいいっ!」


 最高の滑り出し、総勢およそ五十のレイドの開戦である。





 〈side 銀〉


 駆けて、駆けて、駆ける。最低二人一組になって、あのサーヴィシュナ(クジラ)に殴り込む。


 のだけども!


「うぉあぁあ〜〜!?死ぬっ!死ぬ死ぬ死ぬる!?」


 今は!逃げるために走る!


 相方は死んだ!さっきアルノルト(クラゲ)に掴まれて、サーヴィシュナ(クジラ)に喰われた。俺が生き残ったのはアイツが逃がしてくれたから。


 だから、


「名もわからんアイツのためにも死ぬわけにゃいかねぇなぁ!?」


「━━━━━━!!!」


 雄叫び!?


「騒ぐなクジラッ!!」


 罵声が聞こえて、体が解き放たれる。転んだ体を立て直し、前に前にと走り出す。目指す先は一人になった奴らの集会所。見えるだけで五人はいる。


 ハハ、銀級がこんだけいてこれかよ。この短時間で何人死んでんだ。


「こっち来い!一人になったら終わりだぞ!」


 あと少し。イケる。合流、できっ!?


「邪魔だアルノルトォォォ!!!」


 虹の壁を切り捨て、滑り込むように合流する。


「っ〜〜〜!助かっったぁ〜!?」


「おう、よく生きたな」


「ああ、俺はな」


「死んだか」


「ああ、デカブツに食われた」


「俺もだ。なら、弔いか?」


「いや、()()だ」


「ふっ、そうだな」


 空中に立つ少女が剣を一振りすれば、同時に大量のモンスターが消え去る。

 こっちは、雑魚処理で苦労してるってのに、なんとも非情なこった。


「はっ、相変わらず意味わかんねぇ強さしてやがる」


「だな。まあ、それは他の二人も同じだが」


 ああ、ジラルドの奴は()()()を集めてそこそこの数になるまで守ってるし、シュリヴァンの奴なんてほぼ一人であのサーヴィシュナ(クジラ)を相手取ってやがる。


「ホント、何がどうしてこんなになってんのかね?」


「そりゃあお前、酔っちまったからだろ?」


「ハハ、そうだな。そうだった」


 あの時、何か思考に干渉されてるのには気づいていた。それはたぶんほかの奴も同じ。

 でも、敢えて何もしなかった。それが、俺らには必要だったから。


「さて、準備はいいか?」


「ああ、覚悟はできてる」


「そうだな。じゃ、もっかい臨時パーティーと行こうか!」


「「「おう!」」」


 熱が灯る。熱が、体を軽くする。


 知り合いが何人も死んでるっつーのに、ホント、どうしようもないな?


「だが、それでいい」


「お、どうした、独り言か?」


「おいおい、言ってやんなよ。そういう年ごろなんだよ」


「っ!あとで覚えてろ!」


「ハハ、ヤなこった!・・・んじゃ、あと頼むぜ?」


「おう、任せとけ!」


「・・・やってやんよ」


「おう!ガンバレヨ!」


 男が一人、列を離れる。この場で孤立するというのは、死を意味する。だが、それでも彼が行くのは。


「次!誰が行く!?」


「俺!」


「いや俺だ!」


「じゃあ、俺!」


「「「どうぞどうぞ」」」


「なんでだよ!?・・・まぁ行くけども!」


 再び一人、人が減る。


「次は俺だな」


 一人、


「私が行くわ」


 また一人。


「最後、俺が行こう。お前に託すぞ?」


 最後に消えるのは、最初に俺を迎え入れたあいつ。


「なんでだよ。お前がリーダーじゃねぇのかよ」


 なんて、少し、笑みが浮かぶ。


「ああ、いいぜ。やってやらぁ!」


 敵は目の前に。それを阻むのは、ブリ(海蛇)が一匹。


 集中しろ。考えろ。どうする?どう動く。

 独りで勝てる相手か?いや、無理だな。ならどうする?


 ここまで来るのに何人も消えた。アイツラはそれぞれがモンスターの群れを引き受けていった。

 だからこそ、あと一人いれば。なんて思考に至りつつ。


「違うなぁ?俺がやんだよ。俺が、あいつを殺してあのデカブツをぶん殴る」


 もっと、欲望のままに動け。自分を曝け出せ。アイツラ(金級)のように。


「あと一人いれば? ハッ!昔はもっと傲慢に生きてたろうが!!」


 酔え。酔っぱらえ。空気に、自分に、憧れに酔え。そうじゃなきゃ、俺らはもう、


「カッコつけれねぇだろうが!」


 理想を求めて、現実に挫けて。人類のその先を諦めた。だが、それでも、今この瞬間くらい、


「あああ~~!悔っしぃ~~!!!」


 悔しがっても、いいだろう?



 視界が黒に染まる。口が閉じられ、光が消える。奥に奥にと進み、その先で。


「よっ、お疲れさん!」


「なんだよ、まぁた哀れな子供が来ちまったか?」


「あ~!せっかく私が犠牲になったのに!どうして来ちゃうのさぁ!?」


 やけに賑やかにしている集団を見て、なんとも言えない気持ちになりつつ。


「いや、うん。わりぃ!俺も食われちまった!」




 ───────


 男が一人、胃袋へ。残されたのは片目を潰されたブリ(海蛇)と、その頬に傷をつけられたサーヴィシュナ(クジラ)


「おぉ~!あいつも頑張ったなぁ!」


「な~、こりゃあとで一杯奢ってやるかぁ?」


「そだな!」


「何言ってんのよ、一杯じゃ足りないわよ」


「え?なにザナちゃんってああいう男がタイプ?」


「マジかよ!もっかい行こうぜ!次俺が特攻役な!」


「いやいや俺だろ!」


「バッきゃろ~!おっさん共は黙ってろ!俺が行く!」


「なんだと若造、お前じゃあのブリにも勝てんだろ!」


「なんだとォ!?」


「ハイハイ。馬鹿ねあんたたち。今回の奢りは全部ジラルドなんだからいくらでも飲んで飲ませりゃいいのよ」


「「「確かに」」」


 なんて、ボロボロになりながらも引き付けた全てを殺して再集結した彼らは話すのだ。


 その心は皆浮足立ち、生き生きと、若々しくなっていた。憧れを夢見て、謎の自信に酔って。


「お前ら!もっかい行くぞォ!」


「「「シャア!!!」」」


 再び無謀かもしれない、勇気ある突撃をかますのだ。


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