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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の六十六 雑談と急造パーティーと不憫な男

 セバスによって普段の喧騒を取り戻したギルドだが、先ほどまでと打って変わって体を縮こまらせている人もいた。


「うぅ。面目ない。勇者なのに。勇者なのに何も気づかず寝ちゃってごめんなさい」


「俺も、とんでもねぇ酒飲んですまんかった」


 もちろんヴィクトリアとシュリヴァンだ。


「それでいえば、私も普通のお酒飲んで寝ちゃってましたし…」


 これはドーラさん。


「私もなんも気づかないうちに寝てたから・・・」


 これはロゼッタさん。寝る前はヴィクトリアと仲良くしゃべってた人だ。


「みんな意識高いねぇ~?私は起きてたけどふつーになんもしなかったのに。ねぇ?」


「そうだなー。俺らは普通に話してたもんな」


「ねぇ?寝てた人たちにこうも反省されたら私たちはどうすりゃいいのって感じ」


「ホントにな、見ろよあいつらさっきまで寝てたこと覚えてねぇんじゃね?」


「マジかよ。あいつらマジで冒険者してるわ」


 みればさっき酔いつぶれたばっかだってのにガンガン酒飲んでるやつらばかり。何ならすでに酔い始めてるのか騒動が起き始めて宴会の様相だ。


「そういわれると、なんか気にしなくていい気がしてきたわ」


「ですねぇー」


「だねー。だからヴィクトリアちゃんもそんな気にしなくていいと思うよ?そこの元凶も気にしてないんだしさ!」


 確かに。もっと反省しろ?いやでもあんな問題のある酒を置いてるギルドも悪いのでは?


「そう、かなぁ?」


「はい、幸い被害を受けた方々も気にしていませんし、姫様もあまりお気になさらない方がいいですよ」


「そう、かな?」


 流石はセバス、といったところか。まあそれはともかくとして、


「ところで、ヴィクトリアは何をそんなに不安がってるの?」


「え?不安がってる?私が?」


「うん」


 どう見ても不安がってるでしょ。どう見ても自信なくしてるし。あれ、もしかしてダンジョン行きたい行きたい言うのもそれが原因?


「気づいてないならそれでもいいけどさ、難しく考えなくていいと思うけど」


「難しく?」


「そ、冒険者なんて自己責任で命かけてる馬鹿しかいないんだから大して気にしないでいいでしょ」


「そんな言い方はさすがに」


「俺はシオンちゃんの言い分にさんせーい!」


「俺も」


「私も~」


「私もそうですね」


 おや。


「別に陰口にもなんないでしょこんなの。実際本人たちも認めてんだし」


「ええ?そうなの、セバス?」


「・・・そうですね。そういった側面があることはできないかと」


「そうなんだ」


 納得したか。やっぱヴィクトリアにはセバスが特攻かなぁ。それかそもそもセバス以外の攻撃通らないか。


「にしてもセバスに言われちゃもう終わりだよねー」


「そうだな」


「・・・否定、したいところですが、先ほどのあれを見た後ではなんとも…」


 あ、あれね。そりゃそうだ。


「あれはどうしようもない」


「だって目覚めて状況理解してから開口一番」


「「やったぜ、これでただ酒飲みなおせる」」


 だったもんなぁ。それもほとんどの奴が。


「いくら昼から飲んでる奴らしかいねぇって言ってもここまでアホ共だったかって肝冷やしたぜ俺は」


「ま、それもいいんじゃない?」


「そうだそうだ!冒険者なんていつ死ぬかわかんねぇんだから飲めるときに飲めるだけ飲むのが正解よ!」


「お前はもっと反省しとけ!」


「もっかい背骨いっとく?」


「はい・・・すんません」


 可哀想に。


「あー、ジラルドが泣かしたぁ」


「はぁ!?どう考えてもお前の脅しのせいだろ!?背骨折るぞってなんだよ!?」


「いやぁ?ヴィクトリアはどう思う?」


「えっと、さすがにシオンちゃん、かな?」


「そんな馬鹿な!?」


 お、おかしい。あの私に対して甘々なヴィクトリアがこんなこと言うなんて!


「はっ!ほかのみんなは!?」


「シオンちゃん」

「シオンちゃん、かな」


「セバスは?」


「・・・シオン様かと」


 嘘だろ。


「うわぁ!こうなりゃやけ酒じゃあ!」


「それはダメです!シオンちゃんにお酒はまだ早いです!もし頼んだら私が飲みます!」


「そんな…」


「代わりにご飯ならいくらでも頼んでいいですよ?」


「やったぁ!そうだよね!私にはお酒はまだ早いよね!あと十年くらいは!」


「はい!何頼みますか?」


「えっとね…」


 さっき食べたメニューがここからここまでだから…


「こっからここまで!」


「いいですよ。でも残さず食べましょうね?」


「ふふん!それはもちろん!」


 胃袋の大きさには自信あります!龍ですから!ちなみに排便とかしないから食べたものがどうなってるかは知らない。たぶん魔力の補給にでも使ってんじゃない?


「そういやさ、お前って何歳なの?」


「・・・ジラルド。女子に年齢聞くのは自殺行為だよ?」


「いや、お前はいいだろ。ちょくちょく男になってるし、龍だし」


「確かに。っていっても私も正確な年齢知らないよ?たぶん六歳とかそこらって感じ」


「はぁ?お前マジかよ」


「なにが?」


「たった六年でそこまで強くなったのかよ」


 いや、実際は知らないし。ただこれが正しいとするなら生まれた時から三歳だから修業期間は三年になる。しかも魔力の存在に気づくまで結構かかったから本格的に修行始めてからならもっと短い。


「まあ龍ですし」


「いや、龍にしたってだろ。龍ってのは素のスペックもたけぇけど何千何万年と生きてるからこその強さだろうが」


「そうなんだ」


「そだぞ」


 あきれられてる気がする。まあ仕方ないよね!結局のとこ私って異世界人でこの世界のことほとんど知らないんだし!ウードの記憶はほら、カンニングみたいな感じしてみてないから…あとあいつの記憶って大半が虚無だから見る気にならないんだよね。ずっと昔に遡れば面白いこともあるんだけど。


「シオンちゃん?」


「どしたのヴィクトリア」


「みんなに龍だって話してよかったの?いろんなとこに広まって大変なことになるかもしれないけど」


「知ってどうこうなることなの?」


「だって襲われちゃうかもしれないよ?」


 あー、ジラルドがさっき言ってたやつか。


「大丈夫でしょ。冒険者なら私に喧嘩売るよりダンジョンで稼ぐだろうし」


 そもそも強い奴に歯向かうようなことはしない。誰だって命は惜しいもの。馬鹿いるだろうけどさ。


「でも…」


「なんかあってもヴィクトリアが守ってくれるでしょ?だから大丈夫」


 ふ、決まったな。クリーンヒット。会心の一撃。致命傷でしょ。


「あ、あわぁ。うんっ!お姉ちゃんに任せなさいっ!ふへぇ」


 あらら、だらしない顔しちゃって。


「何?」


「お前、ほんと容赦ないっつーか」


「あざといよね。ドーラも堕ちてるし。あーあ、俺もそのうち堕とされるのかなぁ?」


「それはないでしょ。私に男を堕とす趣味は無い」


 有効利用できそうだったり必要なら考えるけど。基本無い。


「え~?本当に?」


「だから堕ちるとすれば、それはそっちが勝手に堕ちてるだけ」


「うわぁ無責任!」


「実際私に責任は一切無いし」


「それもそっか。ところでさ、聞きたいことあんだけど、いい?」


 ん?珍しい。といっても私はシュリヴァンのことほとんど知らないから何とも言えないけども。


「いいけど、今動けないよ?」


 ドーラさんに抱き着かれて背中に顔押し付けられてるから。猫吸い的な?


「それはそう。でも大丈夫、聞きたいのはこの前俺が気絶した後の事だから」


「気絶?」


「古い方ね。俺が死にかけたやつ」


 ああ、あれか。


「いいけど、なんかあったっけ?」


「あったろうが」


「あったらしい」


 なにあったっけ?


「あはは、あの後から昨日まで?ジラルドがいなかった間の事を聞きたいんだよね」


「いいけど、本人に聞けば?」


「やっぱりこういうのはいろんな視点で楽しみたいじゃん?どうせ面白いことになってんだろうしさ」


「そういうもん?」


「そういうもんです」


 そっか。ならいいか。


「っていっても、なにあった?」


「順に追ってはなしてきゃいい」


「順に?だったらまずは…仇討ち?」


「何それ聞きたい」


 おー、面白い事なんて言われたから探しちゃったけどこのくらいでいいのね。


「・・・お前は自分が十分非常識なこと自覚しろ」


「え?どゆ意味?」


「・・・」


 ええ、無言は困るんですけど。


「あはは!シオンちゃんは普通に生活してるだけで面白いってことだよ」


「そういうこと?いや、うーん。否定できない」


 よくよく考えてみたら濃すぎる龍生送ってた。


「んじゃ、順に話してくよー」



 ☆☆☆☆☆☆



「ブハハハハハハハッッ!!!ハハッ!ハハハっ!何それ!最高っ!ハハハハハ!」


 絶賛過呼吸で死にかけているシュリヴァンなのだが。


「ねぇ、これ笑いやすすぎない?」


「いや、そんなことねぇ。単純に話の内容が狂ってるせいだ」


 えぇ?


「そんな狂ってた?」


「ああ。改めて聞くとふざけてる」


 そうかなぁ?


「そりゃ笑うだろ!温泉行って融けんのはともかく、その帰り道競争って!ああだめだ笑っちゃう!」


「融けんのはいいのかよ…」


「いいでしょ。というか融けるのが普通だから」


「あはっ、そうだぞ!あそこは入ると融けるぞ、体も思考も、ふっふふっ」


「えぇ…」


 いつまで笑ってんだこいつ。


「ジラルドもはいりゃわかる」


「そうだそうだ!お前だけだぞ入ってねぇの!」


「いや、お前らが見張りやんねぇからだろうが」


「それはそう」


 あ、なおった。


「いやぁ、笑った笑った。よし、なんか気分いいしこのまま温泉行こうぜ!」


「はぁ!?もう夜だぞ?酒も飲んでんだろうが!」


「いやぁ、大丈夫だろ。俺らだけでも十分だし、シオンちゃんいるならむしろ過剰戦力だろ」


「え、私も行くの?」


「え、行かねぇの?」


「いや行くけど」


 当たり前じゃないか、温泉だぞ?


「シオンちゃんが行くなら私も行きます!」


「うおっ、お前起きてたのかよ」


「当たり前です!こんな酒場で眠るわけないじゃないですか!何されるかわかったもんじゃないです!」


「「それはそう」」


 うわぁ。いやな同意。


「じゃ、ドーラも行くわけだけど、ロゼッタは行くか?」


「えー、今からぁ?この後ヴィクトリアちゃんと洋服見に行こうかと思ってたのにー!」


 いつの間にそんな仲良くなってたのか。さすが女子。


「じゃ、行かないのか?」


「もちろん行く!シオンちゃんも行くんでしょ?」


「え、うん」


「じゃあ行くに決まってるじゃん。あ、ヴィクトリアちゃんはどうする?せっかくなら一緒に行かない?」


「「「えっ」」」


 あ、やばい。この流れはまずい。絶対的にまずい。


「それもそうですねー。女の子同士一緒に洗いっこしましょー!」


 始まった。もうおしまいだ。私たちにできるのは見守るだけ、主導権を握られた。


「えっ!いいの!?」


「もちろんだよー」


「むしろ一緒に来てほしー!お洋服選びの代わりに温泉ね!どーお?」


「もちろん行きたい!けど…セバス、いーい?」


 はっ!セバスならもしかして!?


「いいでしょう。ですが、私もついていってもよろしいですか?」


 噓だ。って思ったけどなんやかんやセバスってヴィクトリアに甘かったわ。


「私はいいけど、皆は?」


「もちろんいいよー!」


「私もです!」


「あー、うん。俺らも問題ない!」


「そうですか。では、御一緒させていただきます」


「やったぁ!」


 ああ。決まったか。


「女子って、強い」

「ああ、ほんとにな」

「いつもはこんなじゃないのにね」

「そうか?意外といつもこんなもんじゃね?」

「確かに。酒の量制限されるし」

「それはお前が飲み過ぎなだけ」

「まじかよ」


 やっぱり女子って権力高いんだなぁー。私もあと数年もすればあっち側にいるのかな?


「んじゃ、人数増えたけどダンジョン行くかー。全員装備はあるな?」


「あります!」

「あるよー」

「持ってます」

「問題ありません」

「だいじょぶよー」

「行けるぞ」


 って言ったけど急いでご飯食べきらなきゃ。


「んじゃ、リーダー出発の号令よろしくー!」


「え、この流れでお前がやんねぇのかよ!?」


「だってリーダーじゃないし。ほら早くしろー、皆待ってんぞ!」


「はぁ?お前ら行動速すぎんだろ」


「ほら早く!温泉が待ってんだぞ!」


 もぐもぐ。んぐっ!あれ?そういやお金って…あ、セバスが払ってくれてる。さすがだ。


「あーもうまじでお前らのその熱意は何なんだよ!? つーわけで、ダンジョン探索始めてくから気合い入れてけお前ら!ちゃんと酔い醒ましたな?忘れもんないな?体調は万全か?全部問題ないな?それじゃお前ら───」


「今日も元気にダンジョン行きましょう!レッツラゴー!」


「「「「ゴー!」」」」


「───え、最後だけ盗られることあんのかよ…つうかなんでそんな息ぴったり?」


 ふ、ジラルドよ、お前は弱い。もう少し早く演説を終えていれば盗られることもなかったものを。


「・・・なんかむかつくんだけど。なぁセバスさん、これ一発くらい許されねぇ?」


「非常に残念ですが諦めた方がよろしいかと。おそらく全員が彼方に味方します」


「あぁ…うん。そうだわ。くそっ、なんでこんな目にあわされてんだ俺は…」


 あらあら、かわいそー。まっ、私のせいなんだけどね。

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