其の六十四 冒険者登録・再
冒険者ギルド、併設された酒場にて。
「すいませーん、コレおかわり3つ!ついでに水お願いします!」
やっぱ寿司もいいけどこういうジャンクと言うかザ・大衆向けって感じの濃い味付けで量食べるのもいいよなぁ。
「・・・今度は奢んねぇぞ」
「別にヴィクトリアに奢ってもらうから良いですー」
「ハァ…それだよ!なんでまたそんな見るからに厄介事引き連れてんだよお前は?」
「もぐもぐ、んぐっ!厄介事とは何だ!僕ぁそこの姫さんと遊んでるだけじゃい!」
はぁ~やだやだ、これだからこいつは。
「そんなだからモテないんだよ」
「はぁ!?モテてますけどぉ!?俺のこと気になってる娘とか数え切れないくらいいますけどぉ!?」
「な〜に言ってんだ、僕この2日でジラルドが人気なとこ見た記憶無いぞ」
「んぐっ!?それはっ!あれだ!たまたまだたまたま!」
「ほんとかねぇ?」
「ほんとだっての!そろそろお前普段の俺の姿見てねぇだろ!?」
それは確かに。初めて会ったときくらいか?まともにプライベートしてたの。
「でも初めからなぁー、知らん若造虐めてたしなぁー」
「ちげぇよ!?虐めてねぇよ!?お前だろ殺しかけたの!?」
「いーや?記憶にないけどぉ?」
「ざっけんな!?そもそもあいつはパーティーメンバーだっての!」
「えっ、パワハラ?」
「なんだそれは?限りなく不名誉に近いことなのは分かる」
あっ、この世界パワハラ伝わんないんだ。まぁ確かに文明レベルに差があるからね。パワハラとかありふれすぎてパワハラになんないのかも知れない。
「上の立場であることを盾に下のものに無理難題とか面倒事押し付けること。パワハラばっかする上司をパワハラ上司っていって犯罪者レベルで嫌われてる」
「・・・なんか不安になってきた、俺は大丈夫だよな…?」
「・・・えっと…セバス?なんか嫌なこととかあったらいってね?本当に嫌だったら断ってもいいからね?」
「そうですね…突然いなくなるのは辞めていただきたいですね姫様。あと気持ちのままに放浪するのも」
「…はい。善処します…」
あっ、違うとこ飛び火した。
「あっ、そうだ!シオンちゃん、そろそろ彼を紹介してほしいのだけれど…」
「あぁ、こっちも頼む。一応知っているが…な?」
ああたしかに。こういうときって私が間に入って取り持たないとだもんね!
この感じも久しぶりだなぁ。なんていうか、面倒くさい人付き合いって感じ!
「おい、なんかろくでもないこと考えてねぇか?」
「イヤ、ソンナコトナイヨ?」
「お前…いや、なんでもねぇ早くしてくれ」
なぜバレたんだ。いや、ろくでもないわけじゃないよ?
こういう人付き合いも大事ってのは知ってるし。でもこういうのは前世では他のやつに任せてた記憶。
「っと、話を戻してこっちのでっかい見るからに新人いびりしてそうなおっさん風冒険者がジラルド。私とは…一昨日襲われて戦って叱られて戦った相手。なかなか強いよ?」
「おい!変なこと言うな!めっちゃ怖いんだけど!?」
「シオンちゃんを襲った?殺…?」
「姫様、落ち着いてください。和解済みです」
「・・・そう」
「あと俺はおっさんじゃねぇ!まだ五十だ!」
五十…なら見た目若めか。
「てめっ!五十はおっさんじゃねぇからな!」
「いやっ、あ?そっか。寿命違うもんね」
人族的には50はもうおっさんってか人によっては初老に差し掛かるころだけども。魚人的にはまだまだ若輩だったりするのかね?
「寿命違うって…やっぱお前魚人じゃねえよなぁ?」
「まあそうだねー」
「性別も変えられるしそのくせ水中でも平然と過ごしてるっなるともうお前のことなんもわかんねぇや!」
「たーしかにー」
そこらの冒険者に僕は何族ですかって聞いたら少なくとも人族じゃありませんって返って来そうだよね。
「性別が変えられる?てことは、シオンちゃんはシオンちゃんじゃない?」
おっと。これはまずいかもしれない。
「それってつまり妹と弟が同時にできたってこと!?やったぁ!」
「「うっわまじか」」
む。
「かぶせんなよ」
「そっちこそお姫様侮辱罪で死にたい?」
「っ!まだ紹介されてないからセーフですぅ!」
むむむ!
「はぁーこれだから冒険者は…」
「はぁ?そっちも冒険者だろうが?」
「残念でしたぁ!実は僕まだこの国で冒険者登録してません!」
「はぁ!?ンなことあるかよ!?お前その強さと思考回路で冒険者以外慣れる訳ねぇだろ!?」
「何を言ってるのか僕にはわかりませんけどねぇ?その喧嘩買ってやんよああ!?」
ふざけたこと抜かしよって!僕は本来もっと理性的ですぅ!ただちょっと最近男子ノリというか男心取り戻してるだけで。
・・・女子のが精神的成長早いってのは本当だった?
「お二人とも、少し落ち着いてください。姫様もそろそろ戻ってきてください」
仕方ない。また怒られるのも嫌だし───
「シオンちゃん!ちょうどいいわ!私と一緒に冒険者になりましょう!」
「───ちょいまてジラルド。ヴィクトリアが錯乱してるみたいだ」
「ああそうだな。姫さんがトチ狂ったらしい」
少し考える。ヴィクトリアが冒険者になって起こること。
「まず姫が冒険者になるって時点でなかなかまずいよな」
「そうだな。冒険者なんて力だけが自慢の馬鹿か行き場がなくなった奴らがなる職業だからな。姫はもちろん貴族だってなるべきじゃないだろ。つーかなろうとしても身内に邪魔されんだろ」
「そうですね。冒険者になるとなれば反対意見は相当数出ます。いくら姫様が勇者を兼任していたとしても許されるかどうか…そもそもなってどうするのですか?」
「なってどうする?そんなの決まってるじゃない!冒険よ冒険!頼れる仲間たちとハラハラドキドキの大冒険!生と死の境で踊る中で育む友情愛情恋情激情!最高じゃない!」
あっれぇ?ヴィクトリアってこんな頭お花畑な少女だっけぇ?もっと凛々しい知的な姫だった・・・ことはあんまりないけど…いやそういや最初会った時はこんな感じだったわ。うん、納得。
「いや、そんな甘い世界じゃないんだが…つかそのくらい知ってるはずだろ、どうなってんだ執事さんよ?」
「・・・知ってますが…知ってますが、姫様ですから…」
「ヴィクトリアだもんなぁ」
「どういうことだよ」
魔王も魔王なら勇者も勇者、か。
「どうしてこうも上位存在は思考回路狂ってんだか…」
「お前が言うかよ」
「ん?セバスも何か言いたげだねぇ?」
「いえ、そのようなことは」
ハハハ、今回のとこは見逃してやる。
「もう!ほらシオンちゃん!冒険者登録しに行くよ!さぁ早く!」
「えっ、いや、ダメなんじゃないの!?」
「ちゃんとお父様にも許可取ってるから大丈夫!勇者的にもすでに冒険者出身勇者がいるから問題ないよ!」
やっぱりいるんだ。あ、ネタバレに気を付けて、と。あとは・・・あ、
「セバス!カモン!あ、ジラルドはさっき頼んだ料理食べてて!」
「承知しました。では、失礼します」
「・・・おう。お前も大変だな。変なの二人の子守りとか」
「・・・聞こえますよ?」
「あ?」
「えい」
「うぉぉぉ!?あっぶねぇなぁ!?」
ふっ、極小消費型迷彩射出剣。小さく、見えず、遠隔で、何も残らない。これぞ完全犯罪!避けられたけど。
「シオンちゃん?暴れすぎないでね?」
「はい」
怒られた。けどやり返せたから良し!
☆☆☆☆☆☆
場所は変わってギルマス部屋。
「一応は、よくやったと言っておこうか」
そんなことを言うのは書類の溜まった執務机で頭を痛めているギルマスだ。
「でしょ?感謝の気持ちは今後の対応で表してくれればいいよ」
「そうだな、できればこんな状況になる前に何とかしてほしかったがな」
「申し訳ない」
「いや、貴殿が謝る必要はないさ。むしろこの二人をよくここまで抑えてくれた」
「抑え…られましたか?」
「ああ。少なくとも、そこの馬鹿が暴れてないだけ抑えられてるといっていいだろう。場合によっては勢いそのまま経った二人でダンジョンに突撃していてもおかしくないのだから」
えぇ、私の評価低すぎぃ。自分でも納得できるけど。というか。
「あれぇ?私さっき褒められたはずなんだけどなんでこんな下げられてんの?」
機転を利かせて受付行かずにこの部屋連れてきたの私だよ?ねぇなんで?
「それはさておき、三人分の冒険者証の発行だったな。すぐに用意させよう」
なんてこった。態度に向上がまるで見られないじゃないか。
「ありがとうございます」
「ありがとう!」
「よろしくねー」
「それで、だが…念のため言っておくが、冒険者は自己責任だ。ダンジョンや狩場で何が起ころうと、我々ギルドは責任は取らない。それを肝に銘じてくれ」
んあ?あ、そっか。万が一にもヴィクトリアが死んだ責任擦り付けられたら困るもんね。
「はい。わかっております」
「もちろんです!ギルドに迷惑はかけません!」
「ま、大丈夫でしょ?死なないし」
「・・・では、そちらの…」
なんだその眼は。馬鹿を見る眼だぞそれは。
「セバスティアン=エルワン・タルデュです。どうぞセバスとお呼び下さい」
「承知した。私はミリアル・ツニア、挨拶が遅れて申し訳ない」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
わぁ、大人な会話。大変だね。
「では、セバス殿。貴殿には少々残っていただいて…二人には先に出ていてもらいたいのだが…」
「それはいいけど…なんか僕達問題児扱いされてない?」
「気のせいでしょう。姫様、私は少々残りますので、お二人で遊んでお待ちください。くれぐれも、羽目を外しすぎないようにお願いします。貴女はお姉ちゃんですから」
「ええっ!任せて!さ、シオンちゃん!遊びに行こ!」
「え…わかった」
・・・これ、僕がしっかりしなきゃいけない奴じゃん。覚えてろよセバス!この恨みは忘れんぞ!
☆☆☆☆☆☆
「・・・行ったか」
「はい。問題なく…とはいかないそうですが」
「仕方あるまい。あの二人が相手では妥協も必要だ。まあ、できるだけ早く話を済ませるとしよう」
龍と勇者の去った部屋で、男女が二人話し合う。
「それで、私を残したのはどのような理由で?」
「単刀直入に言おう、私は───」
告げられるのは、誰もが考え、諦めてきた───
「───ダンジョンを攻略したい」
───未攻略ダンジョン【怠惰】『フォールシグニ』、その完全攻略である。
<クエスト>
神造迷宮【怠惰】のフォールシグニを攻略せよ!




