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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第二章:天落星壊

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其の六十二 亡国の秘密

 周囲を海に囲まれた堅牢な城。『海の国』、レイグラーフ王国のその王城である。


「さて、と…頼もーーー!!」


 途端、城内が慌ただしくなり、一つの存在がとてつもない速度で迫ってきた。


「お久しぶりですね。シオン様…とお呼びしてよろしいのでしょうか?」


「うん、それでいい。こっちもセバスでいい?」


「失礼しました。私はセバスティアン=エルワン・タルデュ、セバスとお呼びください」


 セバスティアン…ね。惜しい。ニアピンか。そもそもセバスチャンがどこ由来なのかも何も知らないけど。


「じゃ、セバス。案内よろしく」


「承りました」


「ん」


 門をくぐり、城内にある庭をのんびりと歩きながら辺りを見渡す。海中ではあるけれど、ここら辺はもう水抜きされてるからか草木だったり、花だったりが咲き誇っている。


「意外ときれいね、この前壊したからボロボロかと思ったけど」


「・・・そうですね。一度枯れかけていたのですが、もともと塩分に強い種だったおかげもあり無事姿を取り戻したそうです」


 へぇー、抜け出すとき結界壊したのやっぱ結構被害だしたんだなぁ。でも、すぐ直ってるしもともとそうなる予定ではあったってことよね?


「庭師の人も頑張ったんだろうねー。いくら妖術あっても一日二日で直せるようなもんじゃないでしょ?」


「・・・はい。しかし城の周囲を海で囲っている以上、ここに咲く花はもちろん王宮外部が全て海に飲み込まれることは皆覚悟していますから。それでもショックを受けるものはいたようですが…」


「ごめんね?ただあの時はダンジョン見てテンション上がっちゃったから」


 ほんと、反省してないわけじゃないのよ?でもま、過去は戻らないし、気にしすぎない方がいいかなぁって思います。


「ダンジョン…ですか?」


「そそ、昨日もいろいろあってダンジョン行ってきたけど、なかなか楽しかったよ?あの温泉は最高だった」


 ぐでぐでにとけたもん。あれダメだよ。思考力ゼロになる。馬鹿になる。そういや温泉入ったのってあれ除いても転生直後にあるしやっぱりあの温泉だけがダメなんだろうね。効能的に。


「温泉、ですか…?あそこにそのようなものはなかったと記憶しているのですが…?」


「あー、あれね。隠されてたから。それにあれ一般人にとっては温泉にならないもん。私でも素の状態じゃ無理だし」


「そうでしたか。教えていただき、ありがとうございます」


「いや、見つけたの私じゃないから感謝されてもなぁ~。あ、そうだ。昨日騎士に追われたんだけどあれってやっぱり連れ戻すためだったの?殺す気は感じなかったし捕らえるとか言ってたけど」


 あとあいつらなんか一般兵とは思えないくらい強かったんだけどなんなん?


「捕縛、ですか?そのような指示はして…なるほど。申し訳ございませんこちらで伝達の不備があったようです。ご迷惑をおかけしました」


 伝達不備?あれか、いきなり逃げ出したから追いかけたけど、あとから方針変わって、でも一部には伝わり切らずにいたって感じ?


「別にいいけど、あいつらなんか強すぎない?平然と私についてこれてたんだけど」


「こういっては何ですが、龍であるシオン様にそういっていただけると嬉しいものがありますね。彼らはこの国の近衛隊、いわばこの国でも有数の矛になりうる人材ですので」


 近衛ねぇ?それってつまり王様に最も近い兵なわけよね?


「確かに強さは納得いったけど…逆になんで伝達不備起こったのさ?」


「恥ずかしながら、私含む近衛騎士と、彼ら近衛隊は別物でして…」


「あー、管理系統が違うから伝達が遅れたってこと?」


 それなら納得…か?でもあいつらが今日も大穴で張ってたのは何だ?それにセバスは何も知らなかったらしいし…


「もしかして、政治的な足の引っ張り合いだったりする?」


「いえ、国王様が王位についてからは派閥争いはありません。ただ、なんといいますか…」


「言いにくいなら言わなくてもいいよ?ちょっと気になっただけだし」


 この位でなんかするほど今は機嫌悪くないし。私自身悪いことしたとは思ってるしね。


「いえ、大したことではありませんので。まず先ほどお伝えしたように我ら近衛騎士と彼ら近衛隊は別物なのですが、それを区別するのはいたって単純でして…」


 ごくり。


「素行になります」


「そこう」


「はい、近衛騎士にたる実力を持ちながら、騎士として王侯貴族と対するにはいささか以上に素行が悪いものが近衛騎士になります」


「はぁ」


「今回の件で体験しているとは思いますが…いわゆる命令無視であるとか、独断専行といったようなことをしてしまうものが近衛隊に配属されます…」


 絶句した。だってさ、実力だけある野蛮人とか怖くない?そんなの近衛として近く置いとくとか王様何考えてんの?


「あれ、近衛隊も名前的に王様直属的な立場だったりするよね?」


「そうなりますね」


「大丈夫なの?」


「今のところは…いや、今回はアウトですね…」


 確かに。私の機嫌がいいから許してるけどこれが強制転移直後とかなら全然敵対ルートは言ってたもん。ヴィクトリアには悪いけどさ。


「改めて、申し訳ございません」


「いや、セバスが頭下げなくていいよ。にしても、普段どうしてんの?」


 今回みたいなのが平常なら何しでかすか怖くて好きに動かせないもん。


「普段は…周辺の魔物狩りですね。最近は異様に数が増えてきていますので、魔物を狩れとだけ命令しています。実力はあるので…」


「なるほど。じゃあ運が悪かった感じか」


「いえ、太陽の国の件で一時的に招集をかけていたので結局は何かしらの形で会うことになっていたかと」


 へぇ。そっか。


「問題児の相手って大変だね」


「はい」



 ☆☆☆☆☆☆



 さて、そんなこんな話しながら歩いていたらようやく一つの部屋にたどり着いた。


「こちらになります」


「お、ついた?この中に王様とかいる感じ?」


「はい。では、空けてよろしいですか?」


「ちょっと待って!」


 服は…初期服にしてと。そんで改めて尻尾を展開。右腕は…うん。まだ無理。代償にしたとはいえ生やすのはもちろん右腕の形を作ろうとすることもできないんだから恐ろしい。今のところは左手だけでなんとかなってるけど義手とか用意した方がいいのかな?


「シオン様…?」


「うん、大丈夫。それじゃ、いこっか」


「・・・承知しました。陛下、シオン様をお連れしました」


 セバスがノックすると、ややあって声が返ってきた。


「では、こちらへ」


 ふ~。よし!準備完了!いざ!入室!


「来たか」


 見れば、目の前には王冠をかぶり堂々とした”王”の姿。ただの執務椅子で玉座に座っているわけでもないのに、圧倒的に”王”を感じる。


「はじめまして、王様。私はシオン、『精霊龍』」


「ああ、私は第53代国王、リルクヴィスト・レイグラーフ。今日はよろしく頼む」


「ええ、といっても、私に話せることはあまりないのだけど」


「それでも、我らにとってはありがたい話だ」


 思わずこちらから挨拶をしてしまった。まずは処刑しようとしたこと謝らせる気だったのに。


「シオン様、こちらへ」


「ありがとう」


 セバスが差し出す椅子に座り、改めて話を始めるとしよう。


「さて、と。王様。私、面倒だからもう崩させてもらっていい?私こういう気の張るやつ嫌いなのよ」


「・・・ああ、構わない。それと、ここらでほかの者の紹介を───」


「いらないわ」


「───しよう、と思ったが…そうか」


「私、人の名前覚えるの苦手なのよ。だからいらない。そもそも私的には話すこと話して帰るつもりだし」


 実際のところは龍としての記憶力的に覚えられはするのだけど、まあ面倒だし…。下手に知ると今後挨拶回りとかしなきゃいけないときに嫌じゃん?

 だから名も知らぬ推定大臣たちよ。すまんな。


「相分かった。では、本題に入る…前にだな」


「ん?」


「一つ謝らせてほしいことがある。シオン嬢、私は、あなたを殺そうとした」


「・・・・・」


「私は貴女が怖かった。だから傷つき、眠っている間に殺そうとした。本当に、すまなかった!」


 王が頭を下げる。それがどういうことか、私にだって多少はわかるつもりだ。

 王の頭は安くない。それは、王が国を背負っているからだ。王が頭を下げるとは、国が頭を下げること。だから王は堂々としていなくちゃならない。たとえ悪くても、それを認めても、頭を下げることはあまりない。そう、私は考える。


 だから、目の前の男が”王”なのか、不安になった。さっきまで”王”だったのに、それが失われるのが怖かった。


「なんで、謝った?」


「あれは私の怖れによる独断だ。だから、私一人の命で済ませたかった」


 ああ、そうか。


「それは、私が龍だからか?」


「ああ、そうだ」


「・・・そうか」


『龍』だから。なるほど。私の勘違いか。この世界における『龍』には、それだけの価値があるって訳だ。


「わかった。許そう。ただし、今後も、”王”でいろよ?」


「・・・相、分かった」


 少し、前世を思い出した。

 自分が認める人が、突然いなくなるのは、怖い。自分はそっちにはいかないとは思うけど、でも、もしかしたら…そんな時、誰かがささえてくれた気がする。相棒みたいな人がいた気がする。

 ・・・あれは、誰だったか。


「はい!そんな空気やめて本題いこう!」


 あ、ヴィクトリア。


「ね。シオンちゃん!」


「ま、そうね。それじゃあ、話そうか。あの国が滅んだ、そのあらましを」


 といっても、私のことはぼかすけど。まだ魔王ってばらすには早いから。



 ☆☆☆☆☆☆



「───ってのが、大体の説明かな?」


「・・・神に、魔王に、精霊…なんか、すごいね?」


「わかる!おかしいよね!あいつら!」


 っと、せっかく威厳ある感じ保ってたのに外れてきちゃった。でも仕方なくない?だって改めて話すと内容濃すぎじゃん!?


 精霊と出会って、やらかして、騎士団と戦って、狂信者と戦って、魔王と戦って、神と出会った。簡単に言ってるけど頭おかしいでしょ!?これ一か月にも満たない時間で行われてんだよ!?


 まあ説明はちょっと改変して神の復活をたくらむ狂信者によって復活しそうな神と、それを阻止しようとした魔王と、両方どうにかしようとした私で対立した結果神が復活して国が消し飛んだってことになった。


 あんまり変わらないっしょ?一応騎士団長は()()相手に頑張ったとは言っといた。()()相手に、ね。


「それで、何か質問はある?」


「あ。シオンちゃんも結局最期どうなったかはわからないんだよね?」


「知らない。最期残ってたのは【幻星】と【太陽神】と【傲慢】のダンジョンだけなのは見たけど」


「・・・なら、私はないかな?」


 ま、そうだよね。私もほぼ全部話したし。内容は一部改変したけど結果は変わってないし。


「一つ、いいか?」


「王様?いいけど」


「ああ、一つ気になったのだが、正直に言ってほしい。その神は、【幻星】に討たれたと思うか?」


「ないね」


 それはない。絶対に。


「あいつは強い、私だって何度も殺されかけてる。というか一回殺されたまである。でも、あいつでもソラには勝てない。神ってのは、伊達じゃない」


 今の私が魔力を使えるようになって、万全の状態ならあのナルシスト相手でもそこそこ食らいつける。感覚的にはその程度の強さ。だから、神を相手にするには不足してる。


 ま、でも実際たぶんあいつこの世界でも最強格よ?相手が悪いだけで。


「て言っても、あいつが私相手に舐めプしてたら話は変わるかもだけど」


「それは、どっちがいいのだろうな?」


「さぁ?でもま、ソラが、【太陽神】が勝ってれば別に気にしなくていいと思うよ?あの娘は世界危険にさらそうとか思ってないし」


 ただの故郷に帰りたがってる女の子だし。


「・・・そうか。では、以上になる。今日は本当に助かった。ああ、何か欲しいものはあるか?できる限りの礼はしよう」


「ん~?いや、ないかなぁ?・・・あ!」


 いや、ちょうどよかった。


「人を貸してくれない?私、ダンジョン攻略したいからさ!」


「「「はっ!?」」」


 え、私またなんかやった!?

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