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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の五十二 神託の時

 空が軋みだした。限界が来たらしい。

 眼の前には殺意を漲らせた魔王もいる。

 かなりの絶体絶命。背水の陣どころじゃない。


 気づけば目が見えなくなっていた。


「次」


 音が消えた。


「次」


 感覚が闇に包まれた。


「ちっ」


 噴き出した血液で陣を描き、聖域を作る。

 眼球を再生させ、耳を生やす。

 酷く冷たい、孤独と恐怖を与える闇の中、息を吐く。


「〈其は我が強敵。新たな難敵を打ち倒すべく、力を貸し給え。死靈術(ネクロマンス)〉」


 聖域が砕けると同時、どこからか風切り音が届く。


「何?」


 反応したところをしっかりと腰を落とした深い一撃を当てる。


「これは、何をした?」


死靈術(ネクロマンス)。ありふれた魔王の技だろう?」


 話しながらも、攻撃は止めない。

 未だ感覚を失ったまま。しかしそちらの方が良い。

 今はそのほうが頭がスッキリする。

 世界を診れば情報は伝わる。だから今はただ、殺すことだけを考える。


「ネクロマンス? アイツをか?」


 武具を生成しては許容限界を超えて振るう。

 鬱陶しげに対処されるが、絶え間なく続ける。


「ずっと昔に死んだはずだが…あぁ、この国はあいつの故郷だったか」


 腕を尻尾で掴み、齧りつく。


「貴様、何をしようとした」


 尾を千切られ、喉を突かれる。


「邪魔だ」


 迫る鞭を長剣で切り捨てる。しかし切り落とされた鞭が伸び、アムルの体に当たった。


「くっ、あぁ!お前はいつも、面倒くさい!」


 その一撃は確かに効果があるようだ。


 距離を取りソラの近くで休む。

 正直、この戦いに割り込めそうもない。


 イカれた挙動で迫る鞭を、同じくイカれた動きで回避し、かすり傷に抑えるアムル。


 連続で転移し、数メートルごとに天候を変え、障害物を生むアムルと、そんなギミックのことごとくを無視し、複数方向から同時攻撃すらかます亡霊。


「あいつも最初に戦う相手じゃねぇ」



 そんなことを考えていると、隣で気配がした。


「んぅ、私…は?」


「起きた?」


「シオ、ン? どうして、いったい何が…?」


 困惑中のソラの手を握る。

 触れたところから熱が伝播するように感覚を取り戻していく。


「ごめん、失敗しちゃった」


「えっ? でも生きて、……?」


「ソラは頭を撃ち抜かれて、降臨のためのエネルギーが不足したらしい。だから、失敗。でも、今から逃げればもしかしたら一緒に外に出れるかもしれない。だから、ついてきてよ」


 しかと両眼を視て伝える。


「・・・、もし、逃げたら」


 言葉を詰まらせながらも、ゆっくりと言葉を吐き出すソラ。


 正直こうしている時間もないのだが、これを有耶無耶にして逃げるのはダメだ。

 一生残る後悔はさせたくない。後悔するにしても、自分で決めたことであるべきだ。


「一緒に遊んで、一緒に笑って、一緒に…やったことないこと、でき…ますか?」


「うん。絶対。約束する」


 神であることが、神の依代であったことが彼女を縛ってきたのなら、私は傲岸不遜にも、神を捨てよう。

 それでもなお足りないのなら、その時は━━━


「じゃあ、いつか、また、皆で暮らしてたあの頃に。あの頃みたいに、皆と、一緒にいられるかな…。あの世界に、帰れるのかな」 


「できる。何があっても、私が連れて行く」


 あの世界というのが何かはわからない。でも多分神の暮らす世界とか、そんな感じだと思う。

 なら、叶えてみせる。たとえ神でも、見た目は少女なのだ。

 少し目を瞑って、故郷に帰りたいと願う少女のために働くことくらい何でも無い。


「・・・本当に?」


「本当に」


「信じていいの?」


「信じてほしい。既に守りきれなかった私だけど、それでもいいなら」


「・・・そっか。じゃあ、お願いします。私を連れ出してください」  


「承知した」


 さぁ、急ごう。

 空が墜ちる前に。

 亡霊が消される前に。

 手を引いて、駆け出す。


「えっ?」


 眼の前に、一枚の紙切れが横切った。

 何かの本の切れ端のように見えたそれ。

 幸か、不幸か、その内容を読めてしまった。


『絶望が足りない、底の底から這い上がれ』


「うぅっ!? 苦、し、シオ、ン、助、け 」


 なんで、なんでなんでなんでなんでなんで、なんで?


 なんで、いま?


 違う。


 今だから、こうなったのだ。


 あぁ。そうだよな。忘れてた。


「お前はいつも、そうだった」


 神は、いつもヒトのことを考えない。自分がどう思うか、それだけが判断基準。

 天上天下唯我独尊。それを地で行くのが神だ。


「観とけよ、いつか、倍にして返してやる」


「ぁァァぁぁぁぁああああああ!!」


 つんざくような悲鳴。


「っ! 待ってて、いつか、どれだけ時間がかかっても、絶対に、また、会いに来るから!」 


 全力で逃げる。

 とにかく距離をとる。

 亡霊が敗れ顔を引き攣らせたアムルの姿を横目に走り去る。


「〈ああ、世界よ。間違った世界よ。もしも、私の願いを叶えるというのなら、願おう〉」


 神なんて、嫌いだ。


「〈クソッタレな神に、小さな命を嘲笑うあの神に、顔が歪む屈辱をよこせ〉」


 だが、世界が神の箱庭なら、この願いすら玩具に過ぎないのなら、


「〈お前は、私を救えるか?〉」


 私じゃ足りない。私は、あの神を超えられない。だから、託そう。


「〈不滅の愛盾(ウードクラルヴァイン)〉」


 振り返りながら突き出した右腕の先で、花が開く。


 瞬間、世界が白に包まれた。

 熱すら感じぬ間に、一瞬で世界が燃え尽きていく。

 大地が融解し、気化し、液体になる。

 不滅の花が散る。


 護られていたのに、全身が焼けた。

 右腕を消費し、再度不滅の花を咲かせる。


 遅れてきたソニックブームが体を浮かし、空を舞う。

 全身が痛むし、身動きが取れない。そんな状態でいること少し。

 視界が戻ると、昼が訪れていた。


 墜ちていた夜空が弾き返され、夜空を昼が侵食している。雲一つない快晴。

 だが、下を見ればそこにあるのは天変地異の痕跡。

 白昼夢を見ているかのようだ。


 超高エネルギーにより大地が消失し、そこに融けた山が流れ込む。かつてあった溶けない氷も姿を消した。

 まるで巨大な隕石が局所的に落ちたかのような有様。


 もはや生命の住める環境ではなくなった太陽の国は、かつて王都があった場所に焦げ跡のついた一つの塔と二人の人影のみが残った。




「約束は、守るよ」





 ☆☆☆☆☆


 どれだけの時間が過ぎたか、私は空を舞い続け、海にたどり着いた。


 この世界では二度目の海。かつては自然の深さに感嘆し、心を新たにしたものだが、やはり海にはすべてを包み込む包容力があるのかもしれない。


 なんてことを思いながら、ドゴンッ! と大きな音を立てて海に不時着する。


「痛ったぁぁあ!?」


 全身火傷に海水がよく染みる。

 異常なほどに熱を帯びた体が急速に冷まされていく。

 代わりに海水が大量に気化し、爆発する。


 バッ!ゴッーン!


 そんな音が鳴ると、視界が目まぐるしく変化する。

 海水が動き、水流にのまれているのだ。  


「痛い痛い痛い!やだっ!体!動いて!?」


 くそっ!力が入らない!神経焼けた!?

 魔力は使い切ったし!右腕無いし!

 腹はまだ塞がってるけどいい加減直さなきゃだし!


「あぁ、こりゃ今回も、ヤバいことになりそうだ」






 ☆☆☆☆☆


 太陽神の復活の影響は甚大だった。


 世界に名だたる大国であった太陽の国の消滅。

 隣接する樹の国の大火事。

 世界全土で日中時間が増加し、平均気温の著しい上昇。

 諸々の問題による飢饉などの二次被害。


 各国はその結果運営に大きな問題を抱えることになった。


 しかし、これは唯一人を除き、未だ誰も知らないことではあるが、この一件は人類にとどまらず、世界は確かにその終末に近づいたのだ。


 太陽の国より海を挟んだ海洋。氷の国と呼ばれる国家の存在する、領土のほぼ全てを氷に包まれた大陸。

 その奥深く、誰も知らないその場所で、人知れず、カウントが進められた。



 ☆☆☆☆☆


 人々がこの非常事態に狼狽え、慄いている頃、彼ら生物の住む世界とは異なる世界に一人の女がいた。

 闇に包まれているその空間で、蝋燭の仄かな明かりに照らされたその顔は、憎らしい笑みを浮かべている。


「あ〜あ、早く会いたいなぁ。真実を知ったら、どんな顔するんだろう。ふふっ。早く来ないかなぁ? きっといい顔するんだろうなぁ。だから、途中で死なないでね、シオンちゃん?」


 神とはやはり、どこまでも愉悦に生きているのだ。

あけましておめでとうございます。

この作品は切りがいいのでしばらく投稿はお休みです。また溜まったら放出します。

それでは今年も1年良い年をお迎えください。

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