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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の四十九 魔王の契約

 〈レックス視点〉


「一分でいい。時間をくれ」


 さて、どうするか。時間はない。悩んでる時間も惜しい。だが、落ち着こう。


 つい先程の光景を思い出す。

 騎士団長との全力のぶつかり合い。正直、俺程度じゃ余波だけで死ねるレベルの戦いだった。

 だからこそわかる。アイツラは殺そうと思えばいつでも殺せた。だがそれをしなかったのは興味がなかったから。

 互いの戦いに全霊を注いでいたからだ。

 だが今は違う。楽しみの限りを尽くし、満足のいく結果を得た今、俺たちに意識を向けない理由はないのだ。

 実際そう言ってるし。


「選べ! 私と戦って死ぬか! 私に忠誠を誓い生きるか! もし挑むと言うなら、私は全力で、お前たちを殺す!」


 すげえよなぁ。アレで6歳程度のガキなんだろ?

 意味わかんねぇ。

 ハッタリと思いたいが、そう言えるだけの根拠がない。むしろそれができるんじゃないかと思わせる圧がある。


「忠誠を誓え! 今なら私を襲ったことを全て不問にし、一人残らず救ってやろう!」


 だったら大人しく受け入れるべきだろうか。

 忠誠を誓ってどうなるかは分からん。まぁ確実に言えるのは人類の敵になることだけ、か。

 この魔王は珍しく? 他がおかしいのかもしれんが明確に人類の敵になろうとしている。

 かつては夢見た勇者にはもう慣れないだろう。多分。いや、魔王兼勇者みたいな奴がいたら別だが。


 まぁ正直それはどうでもいい。もう何があっても愛すると誓った女が三人もいるのだ。

 いまさら勇者になれなくても構わない。

 だから問題は、信用しきれるかどうかってところ。だったんだが。


「・・・信用して、いいのか?」


「知らね。それはお前が決めろ」


 無責任な。いやまぁ俺の人生何だから俺が決めるのが普通なんだけども。

 それにいくら奴が信用しろと言っても結局は信用できんし。


 はぁ。こんな時は仲間の意見でも、と思ったんだがなぁ?


 全くもって、愛されてんねぇ俺は。

 眼を見りゃわかる。アルマは雰囲気で言ってる。

『どんな選択でも貴方がそう言うならついていくだけです』って。

 困った。責任感で潰されそうよ。本当に。


 自分と自分の愛する女。両方の命がかかってんだ。当然だな。


 だから、もう考えない。思うままに。流れのままに決めよう。


「フィリス、アルマ、ケーラ」


「あぁ」「うん」「はい」


 ああ、本当に。


「愛してる」


「「「え、っ……!?」」」


 叩かれた。理不尽な。


「何だあれ」

『僕もシオンのこと愛してるよ?』

「知ってる」

『えへへ~』


 後ろと対応が違いすぎない?

 まぁ、俺だし。そんなもんか。


「っし! お前たちに聞こう!」


「いいぞ」「ついていく」「従いますよ」


「え〜…? まだ何も言ってないんですが?」


「幼馴染を舐めるな」「以心伝心」「長い付き合いですから」


「そっか〜」


 カッコつかねぇ〜!!!


「んっんっ! まぁ、良し! 決めた!」


 いろいろ考えたような気はする。

 けどまぁ結局最後はいつものだ。

 俺は未来を見始めてからい何時だって、心のままに動いてきた。

 だから今回もそう。


「魔王シオン。俺たちを、貴女の傘下に入れてください。俺たち金級冒険者パーティー"栄光の騎士"は、貴女に忠誠を誓いましょう」


 世界の敵。そんなのも、悪くない。

 



 ☆☆☆☆☆

 〈シオン視点〉


 さぁて。

 こんなの魅せられて、おちおち寝てるわけにもいかんよ。


「いいだろう。お前たちの忠誠を受け入れよう。では、忠誠の証に杯を交わそうではないか」


 眷属化、龍族ならば行うことが可能。眷属になったものは、龍人となり、その肉体性能の何もかもが劇的に上昇する。


 そのやり方は簡単。龍の生き血を啜ること。 


 失った右腕に力を込め、血管を破裂させる。

 血がダラダラとこぼれ落ちるのを六つの盃で受け入れ、止血し直す。

 杯を回し、音頭を取る。


「誓いをここに、その名に相応しき栄光を」


「「「「栄光を」」」」

『栄光を』


 うん。鉄。

 やっぱ血は飲むもんじゃないわ。

 龍の血ならちょっとくらい美味しかったりしないかなとか思ってたんたけどなぁ…。


 さて。

 魔力はともかく、気力は戻った。未だ隻腕とは言え、その程度でこの愛すべき眷属共を裏切るわけにもいかん。


「お前たち、最初の命だ。全力でダンジョンまで走れ」


「は? 待ってくれよ、ダンジョンに行ったところで何になるってんだよ」


 言い返すのは推定リーダー。やはり責任者としての自覚があるのだろうか?

 それは素直に感心する。けど、パーティーのリーダーである以前に私の眷属なのだ。


「従え」


「・・・だけど!」


「そう心配しなくとも約束は守る」


『僕らを大船に乗ったつもりで信頼しなさい! 王を待つのも、臣下の務め!』


「・・・わかった」


「それでいい…」


 なんか、ウードの言葉のほうが信用されてる気がする。


「あっ」


『どうかした?』


 何だ? 何か、違和感。


「ウード、眷属を持ったことによる変化は?」


『う〜ん? 存在力が増すのと、配下から多少の力を受け取れる……くらい?』


 存在力が増す?

 ・・・だからか。


「ハーレム野郎、死にたくなきゃ全力で走れ」


「ハーレム野郎って、俺はレックスだ!」


 レックスね。憶えた。


「そうか。飲んだくれ、時間はないぞ。惚れた女くらい守ってみせろ」


「チッ! わぁっ〜たよ! その代わり! お前も生き残れよ?」


「ハッ! 生意気言いやがって。当然だろ」


 臣下に心配されるほど落ちぶれちゃいないっての。


「お前ら! 行くぞ!」


「ああ!」「うん!」「はい!」


 それでいい。だが、間に合うかは五分ってとこか?


「ははっ、ウード、先輩の意地見せてやれ」


『ええ? っ! そういうことね!?』


 頭上。上を見上げれば、浮かぶ魔法陣が見える。この世界で言えば妖術陣?

 まぁ、どっちでもいい。大事なのはアレがロクでもないことをするってことだけだ。


「うだうだしてっとナルシに負けんぞ?」


『それは困る! 威厳は示さないとね!』


 あいつが動くかはわからない。けど、ナルシストとか言う目立ちたがり屋が、この窮地で現れないわけがない。


『ええい!出血大サービスよ!』


 空が歪んだ。そう思った。直後、陣の一部が消失した。


「何したの?」


『へへっ、【空にあんなものなかった】そういうことにしたの』


 事象の改変か。

 なるほど、そりゃあすごい。


「けどまぁ、残念」


『え?』


 欠けた円が形を取り戻していく。数分もすれば完全に元に戻るだろう。


『嘘でしょ〜?』


「ふふっ。シャ〜ナイシャ〜ナイ。切り替えてこ?」


『う〜〜〜〜ぅ?』


 突然、再生が止まった。どころか、再生した分の陣が消されていく。まるで、時が戻るかの如く。


「あ〜りゃりゃ」


『良いとこ持ってかれた!?』


「いやぁ? あれ以上消さないだけ温情じゃん?」


 少なくとも、認めてはいるんでしょ。

 じゃなきゃ完全に消して全部自分の功績にするだろうし。


『敗北感!』


「これから頑張りなさい」


『当然!』


 ふふ。落ち込んでる様子はなし、か。元気でいいねぇ。


「じゃあ、奪りに行こうか!」


『うん!』


 ウードが憑依する。浸透。心地よいほどの安心感。

 テンションMax、体力十分、パフォーマンスは完璧!


「さぁて!」


 投げられた短剣を弾き、振り向く。


「貸し借りなしだ、手加減はしねぇぞ? ウィスケ!」


「ええ。構いません。不意打ちした時点でそんなものは期待しておりませんので」


「ハッ! いい性格してるよ、ホント」


 毒塗りの短剣。それも、()に通すほどのもの。いつから用意してたんかねぇ? こんなもの。


「では、失礼」


 どこからか現れる武器の数々。その全てがイカれた存在感を放っている。


「ハハハ。出し惜しみはなしか?」


「どんな宝具も、死ねば全て無価値なのですよ」


 確かに。


「一世一代の大勝負ってわけだ」


「ええ、ですから。私のために死んでください」


 何っ!?


「ゴボッ! っっぁあああ!? いきなり心臓潰すんじゃねぇよ!?」


「心臓ないのに動かないでくださいよ」


「御生憎様! 龍なもんで」


 あ〜、しんど。   


『ま〜たそんな虚勢張って! 僕も大変なんですけど!?』


 助かってるよ。ホントに。

 ウードが魔力操作全部担当してくれなきゃもう何回死んでるかわからんもん。


『ならいいけど! ほらっ、頑張って!』


 はいはい。わかりましたよ。


「じゃ、今度は私の番ね」


 踏み込み一閃、手刀が首を狙う。

 だがしかし。


「危ない、っですね!」


 刎ねようとした手が地面から伸びてきた鎖に止められ、全身を押さえつけるように広がっていくのを、地面を砕き、拘束が緩んだところで距離を取る。


「どんだけ持ってんだよ」


「歴史の重みを知ってください」


「歴史〜? なにそれ」


 先祖代々受け継いできたとかそういう意味?


「古いもんは新しいものに壊される。盛者必衰よ」


 目の前に忽然と現れた蛙を蹴り飛ばしつつ、大地を割り身を隠しながら迫る。


「オートかよ」


「壊さないでもらいたい!」


 死角からの一撃、対応不可能なそれが鎖によって阻まれるが、役目を果たした鎖は砕け散る。

 直後目の前にいたはずのウィスケが消えた。


「お前もか?」


 ハハハッ。いいだろう。転移の意味もないくらいの地形攻撃してやる。


「〈インパクト〉!!」


 拳を地に叩きつけたとき、周囲は一瞬にして砂埃に包まれ、数十メートルにわたって大穴があく。

 しかし。


「チッ!」


 砂埃の中、宙を蹴って現れたのは無傷のウィスケ。その手には数枚の札が握られていた。


「落ちろ!」


 上段から腕を全力で振り下ろす。風が吹き荒れ、衝撃で下に落ちると見えたウィスケはしかし、


「封」


 ソニックブームを意に介さず、札を私に貼り付けた。

 途端、体の動きが鈍くなる。視力が失われ、音が聞こえなくなる。


 さしづめ感覚の封印ってとこか。

 そう納得すると同時、迫るトンカチを頭突きで迎え撃とうとし、


『ダメッ!』


 脱力。背後に倒れ込むようにして回避。

 そのまま左手に元右手用の爪を装備し、無理矢理反転。

 魔力で射程を伸ばして首を切り裂く。


 しかし、見えない何かに阻まれるように宙で受け止められる。

 嫌な予感がし宙を蹴って距離を取る。


「『解』」


 封印の効果を解除して見れば先ほどまでいた空間がねじれていた。

 怖っわ。


 ───カーン!


 甲高い音がなったと思うと、ウィスケは天秤を抱えていた。


「魔王シオン、判決」


 天秤に虹の輝きとドロドロとした闇が載せられる。そして、一瞬にして闇に振り切れた天秤は判決を下した。


「有罪、死刑」


「カハッ!」


 せっかく直した心臓が再び潰され、内臓がねじれる。視界の端でウィスケが血を吐いて倒れていくのを捉えた。

 私は何もしていない。なぜ?

 そう思ったとき、


 ───シャララン


 鈴の音のような音がした。


「まだ、生きますか」


 気づけば奴は何事もなかったかのように平然としていた。

 時間操作かよ!?


「負けねぇよ」


 魔力によって生命維持活動のすべてを代替する。

 迫る槍をわざと腹に受け、衝撃とともに貫通。腹に大穴が開く。

 それを再生させつつ、()()


 背後から奴の胸を貫いた。

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