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転生魔王の私はいずれ勇者に殺される  作者: 神星海月
第一章:魔王誕生

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其の四十四 茨の道

 予期せぬ乱入者の存在に驚きつつ、傷ついた身体を修復する。

 ………飛び退いた拍子に臓器がこぼれ落ちたためそこそこ魔力を使う。


「ゴホッ、はぁ。フィリス、君等、なんの真似だ?」


 返事はない。

 状況が変わったことで冷戦状態となる。


 重くなった体のせいか、テンションまで落ちてきた。


『大丈夫?』

「一応は。ただそろそろ魔力がきつい」


 別に今すぐ枯渇するほどじゃない。けどコイツラの相手をするとなるとちょいと、……だいぶ不安。


『補充する?』

「いや、まだいい」


 補充するのはありがたいがそれで向こうの精霊との撃ち合いに負けるほうがつらい。


「君たちはかなり有望な冒険者であったはずだ。なのに何故このようなことを? もしや先日の白光亭の破壊活動も関係しているのか?」


 ・・・騎士団長が騎士団長してる。


「返答は無しか。言い方を変えよう。君たちは、この国に仇なす反逆者か?」


「・・・そうだな。俺等はもう戻れねぇ。ここまで来ちまった以上、死に物狂いで戦うさ」


 レックス。あのハーレム野郎。酔ってないとこ初めてみた。


「……それはつまり、」


「そこまでにしよう。必要なことは聞けた、理由なんて聞かなくていいでしょ?」


「そういうわけにもいかないさ。もし彼らが誰かの命でこんなことをしているなら倒すべき敵が増えることになる」


「ふふ、ここで死ぬんだからそれに意味はない。そうでしょう?」


「そうならないために聞くのさ。騎士は護るためにこそ本気を出せる」


 冗談じゃない。そんな事言われて大人しくしてられるわけないだろ。


「そう。なら、そうね。フィリス、あなた、死んでくれる?」


 踏み込み、突撃。突然の動きに狼狽えながらも盾を構えるフィリス。だが、


「遅い」


 アダルウィンの動きを見た後だとひどく遅く見える。

 背後に回って背中を蹴り、倒れ込んだところで背中を足で押さえつける。


「ガッ!?」


 空気を吐き出し、肺を押し潰されたことで苦しむフィリス。一応死なない程度に加減しつつうめき声を上げさせる。


「それで、君等は何で私たちを襲ったの?」


「言って、どうなる?」


「そうだなぁ。選ばせてあげる、この娘と一緒に私と戦うか、逃げるか。まぁ、彼がそれを許すかは別だけどね?」


「……、わかった。言おう」


 ふ〜ん? ちゃんと愛されてんだ。フィリスも。


「俺達が来たのは、それしか道がなかったから。戦わなきゃ死ぬだけだからだ」


「つまり、誰かの命ってわけだ?」


「ああ」


「それは誰だい?」


「……言えない」


 えい。


「ガッ!?あっあああえあああぁぁぁ!!!」


「だ〜れ?」


(ウード、一応回復させといて。あっ、妖力でね?)

『はーい。あんまり余裕ないんだけどなぁ』


「っ! 人は言えない!だが目的は言う!だから、もうやめてくれ」


 まぁ、いっか? にしても、死ぬ覚悟で来たんじゃないのかな?


「あいつの目的は、神の復活! この国で信仰されてきた太陽神の顕現だ!」


 太陽神?

 なにそれ?どっかで聞いたような気がしないでもないけど、気のせいか?

 それはそれとして神の顕現とはまた、なんかすごいことしてんなぁ。 

 さすが異世界?


「顕現?それはいったい?」


「神の顕現は、……」


 言い淀むなぁ。もっかいいっとこうかな?


『太陽神ソルラース。この国では数十年前まで信仰されてた上位存在ね』


「ヴィルナ、教えてくれるか?」


『ええ。太陽神、彼女はこの国が始まった理由でもあるわ。とはいえ、あなたが生まれた頃にはすでにこの国は精霊信仰に変わっていたから知らないのも仕方ないことかもしれないわね。一応、この街にも数か所分神殿があるのだけれど』


「いや、最低限は知ってるから、聞きたいのは神の顕現についてだ」


 私知らないんだけど。教えて?


『・・・太陽神の役割は大きく二つ。昼に輝く星として世界を照らすこと。そして、この国にある大罪ダンジョンを管理することね』


「ヴィルナ?」


『もし、もし仮に彼女がいなくなれば世界は闇に包まれ、あのダンジョンに封印された奴らがでてくることになる。そしてその代わりが務まる存在は現状いない。とんだデタラメな話だけど、私たち(精霊)をも超える上位存在だから納得するしかないわ。まぁ、いなくなることなんてまずありえないのだけれど』


 うん。こ〜れあれだ。阻止しないとヤバイ奴。ゲームで言うラスボスか裏ボスか。エンドコンテンツだ。 


『しかし、そんな彼女は遥か、遥か遠い昔に力を失い、零落神として消えかけた彼女は神殿に祀られこの国と共存する形で生き残ることとなった。そうしてこの国は彼女の恩恵を受け、彼女は国に生きる人々からの信仰によって力を取り戻していった。さっきも言ったけど、この国は数十年前から精霊信仰に変わった。正義を冠した勇者、ロビー・ピーターソンによってね』


 神が消えかけるほどの何か。すごい胸が躍る。でもそれより気になるのは勇者について。魔王を自称する私としては勇者に関する情報は知りたいところだ。


『まぁ、彼はすでに死んでいるから省くけど、つまるところこの国は神を裏切ったのよ。信者からすれば許されることではないけど、今までは他ならぬ勇者や、アダルウィンの存在によってどうすることもできなかったわけね』


「なるほど。つまり神の復活とは太陽神の権威の向上、そのために精霊騎士である僕を殺す必要があり、今がその絶好のタイミングだった、というわけだ」


(・・・ウード、教えて?)

『ええ? といってもそんなに知らないよ。僕が知ってるのは彼が精霊を連れていたこと、魔王との戦いで相打ちになって死んだこと、あとほかの国の勇者たちと仲が良かったことくらいかなぁ?』


 なるほどね。つまりその勇者はこいつの上位互換って訳だ。やっぱりまだ勇者に挑む、というか魔王名乗るのは早かったかなぁ?


「依頼主の動機はわかった。けどいったいどうして君らはそいつに従っているんだい? 武力で従えられるような君たちじゃないはずだ」


「・・・動機はあってるわ。でも、あいつの目的は神威の向上なんて生ぬるいものじゃないわよ」


 えっと。あの怒ると怖いお母さんは確か、………あ! ケーラだ!


「さっき言ったでしょう?あいつの目的は神の顕現。ひいては裏切者への天誅よ」


『顕現。それが本当に可能だとでも思ってるならとんだ大馬鹿者ね。そんなこと不可能よ。それを成すのに一体どれだけの生贄が必要かわかってるの?』


「できるわ。後はもう時間の問題。だからこそ、邪魔をさせるわけにはいかないの」


『仮にできたとして、あなた、死ぬわよ? ううん、みんな死ぬ。全部消える。何一つ、塵一つ残らない。なんで従うのかわからないわ』


「死にたくないからでしょ」


『ならなおさら手を貸す理由がないわ』


「精霊にはわからないかもだけどさ。人って死ぬのが確定しても受け入れられないもんなんだよ。自分に自信のあるならなおさら」


 だからあがくし、そのために全力を出す。私はその命を圧縮した結果生まれる花火みたいな輝きが好きなんだけども。それはそれとして。


『何が言いたいの?』


「なめられてんだよ、私たち」


『は?』


 まあ実際はなめてるわけじゃないだろうし、比較対象が悪いだけなんだけどさ。


「敗北必至の戦いより、私たちと戦う方がマシだ。そんな風に思ってんでしょ」


「「!?」」


「待ってくれ、その場合彼らが武力で負けたことに!」


「そうなんでしょ」


「な!? だが彼らは!」


「この国最強の冒険者パーティー、だっけ? でもさ、現状を視なよ。私たちは簡単に制圧できる。ほかにそんな奴がいないと言い切れる? 少なくとも、私は一人知ってる」


 あいつがそんなことするとは思えないけど、少なくともいないわけではない。


『奇遇ね。私も知ってるわ。まぁ、この件に彼は関係ないでしょうけど』


「・・・わかった。だが、それなら僕たち騎士を頼って、……!」


「そ。この国の騎士は私の相手で手一杯。そもそも彼らより弱いのが大半なのに頼る意味はない」


 可愛そうに。死にたくないけど、生き残るには難易度が高すぎる。生き残ったとしてもすぐに死ぬ。もし奇跡的に生き残ったとしてもそれは何万人の屍の上の生。苦しいだろうな。迷うだろうな。揺らぐだろうな。


 あれ?


 いいかも。ほしいかも。元国一番の冒険者が魔王の手下になるの。最高に王道の闇堕ちじゃない?


「ねぇ、取引しない?」


「「「「『『え?』』」」」」


「フィリスを返すからさ、私に従ってよ。そしたら私は邪魔しないで上げる。なんなら多少協力したっていい」


「何を言って!」


 一つ、心当たりがある。本当に一つ。妄想とすら言えるもの。


『シオン。わかってると思うけど、神の顕現は止めないとおしまいだよ? どんなにあがいたところで死んじゃう』


 それが正しければ、私はどうしようもない。その場合、今度は私も彼らと同じになる。だったら、私は自分好きを優先したい。


「あのさ、あんたらの依頼主って、ウィスケだよね」


「「「「!?」」」」


 足元のフィリスも含め、彼らの全員が反応した。

 ああ、わかってしまった。当たってしまった。


「ああ、そうか」


 私には太陽神の復活を止められない。

 私は、顕現を手伝わなければならない。


 心当たりは三つ。


 一つ、生贄の準備ができていること。


 神の復活をするにはそれこそ、万単位の人間の命が必要になる。知る限りこの国でそんなことが起きている様子はない。しかしその準備ができているらしい。


 一つ、彼らの行動が強者への恐怖からくるものだということ。


 彼らは強い。おっちゃん、警備隊長レベルの力は全員持っている。そんな彼らをあしらえる強者は一人、ナルシストだけ、ではない。

 私がこの町に来てから恐怖した相手はもう一人いる。


 一つ、彼らはこの一週間宿で働いていたこと。


 彼らは宿から外に出ていなかった。となれば彼らがこうなった原因は宿の中に存在する。


 穴なんていくらでもある妄想。でも、当たってしまった。


「生贄は、問題ないだろうな」


「何を言って、」


『無駄よ。独り言だもの』


 つい最近、宿に代替品を渡したから。そういや、なんか泣いてたっけ。すごい量の金もくれたし。


「仮に戦えば、私も無事じゃすまない」


 あの時は敵意がなかったからよかった。敵意があれば何もできずに死んでいたかもしれない。


「ああ、やっぱり」


 つらいなぁ?

 選択を強制されるというのは。


「決めた」


 フィリスから足を下ろし、回復させる。


「お前ら、離れとけ」


「「「「「!?」」」」」


『シオン? 太陽神には勝てない!顕現を阻止しなくちゃ!?』


 ああ、そういえばウードはあってないのか。まぁ、あとでいいや。


「用ができた。精霊騎士、片を付けよう」


「何を言って、今は彼らを…!」


 一歩で懐に忍び寄り、掌をあて、その巨体をかちあげる。


「悪いけど、元々国を亡ぼす気で来てるんだ」


 右手に魔力を集め、槍を形造り突き刺す。


『本気?死ぬわよ?』


 土盾を貫くが、鎧に傷をつけるだけで終わる。


「推しのために死ぬのがファンってもんだろ?」


 迫る大剣を口で咥え、噛み砕く。


『狂信者ね』


 破片が鏃に変わり迫る。


「魔王だ」


 言葉に魔力を載せるイメージで放つと、礫が再度砕かれる。


『魔王って馬鹿しかいないのかしら』


 土塊が鎖になって私を縛り付ける。

 金属盾を押し付けられ、そのまま地面に墜ちる。


「仕方ない。まずは君から殺そう」


「やってみろ」

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